【単独インタビュー】パン店の息子からノーベル賞へ コビルカ氏が語る「父の哲学」と新薬開発の原点

2026-05-21 16:59
ノーベル化学賞受賞者のブライアン・コビルカ氏が、台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の単独インタビューに応じた。(蔡親傑撮影)
ノーベル化学賞受賞者のブライアン・コビルカ氏が、台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の単独インタビューに応じた。(蔡親傑撮影)

2012年にノーベル化学賞を受賞した米スタンフォード大学のブライアン・コビルカ教授は、パン店を営む家庭に生まれ、若い頃は医師を志していた。研修医として集中治療室(ICU)で勤務する中で、患者の命を救う医薬品の力を実感し、次第に基礎研究の道へと進んだ。

コビルカ氏は、人体の主要な情報伝達システムの一つであるGタンパク質共役受容体(GPCRs)の働きの仕組みを解明し、新薬開発に重要な基盤をもたらした。57歳だった2012年、ロバート・レフコウィッツ氏とともにノーベル化学賞を受賞した。

台湾メディア『風傳媒』の単独インタビューに応じたコビルカ氏は、人生で最も大きな影響を受けた人物として父親を挙げた。父のマネジメント哲学について、「一人ひとりの長所と限界を理解し、その人が能力を発揮し、楽しく働けるようにする。思いやりを持ち、簡単には人を解雇しない」と語る。コビルカ氏はこの考え方を自身の研究室運営にも取り入れ、大きな恩恵を受けてきたという。

コビルカ氏は「台湾ブリッジプロジェクト」の招きで台湾を訪問し、4月21日に国立清華大学で「薬物開発新時代」をテーマに特別講演を行った。同計画は、中央研究院、台湾大学、清華大学など台湾の学術研究機関が国際平和財団International Peace Foundation)と共同で進めるもので、台湾と世界の第一線で活躍する研究者との交流を深めることを目的としている。

コビルカ氏の研究、「世紀の謎」を解き明かし新薬開発の基盤に

​コーヒーの香りは、多くの人の日常に欠かせないものだ。人がその香りを感じ取るのは、主に細胞に備わるセンサーの働きによる。19世紀末、科学者らはアドレナリンが心拍数を上げ、血圧を高め、瞳孔を広げることを発見した。当時、細胞には何らかの化学物質を感知する「受容体」があると考えられていたが、その受容体がどのように働くのかは長く謎のままだった。

コビルカ氏とレフコウィッツ氏の研究は、この謎を解き明かすものだった。両氏は、ホルモンや神経伝達物質に対する身体の反応を担うGタンパク質共役受容体(GPCRs)の働きの仕組みを解明した。GPCRsは、細胞が外部からのシグナルを感知するうえで中心的な役割を果たしている。

この発見は、新薬開発にとって極めて重要な基盤となった。現在、医薬品の約半数はGPCRsの仕組みを通じて作用しているとされる。コビルカ氏とレフコウィッツ氏は、この功績により2012年のノーベル化学賞を共同受賞した。

ノーベル化学賞受賞者のブライアン・コビルカ氏(蔡親傑撮影)
ノーベル化学賞受賞者のブライアン・コビルカ氏。(蔡親傑撮影)

若き日の志望は医師 ICUでの経験が研究への関心に

​現在71歳のコビルカ氏は、若い頃は医師になることを目指していた。その後、科学研究の道へ進み、医師科学者としてノーベル賞を受けるに至った歩みは、まさに異色の経歴と言える。
(関連記事: 【単独取材】五輪の夢からノーベル賞へ 世界的科学者が語る人生の可能性 関連記事をもっと読む

コビルカ氏は、米ミネソタ州の人口約7000人の小さな町、リトルフォールズで生まれた。同地は、史上初めて単独無着陸で大西洋横断飛行に成功した米飛行家チャールズ・リンドバーグが幼少期を過ごした町でもある。

最新ニュース
エキュート立川で初の地産地消フェア「私の街の、おいしいごちそう。」を開催、多摩エリアの旬の味覚が集結
スタジオツアー東京で夏限定企画 『ハリー・ポッター』映画25周年でトムとジェリー初コラボ
梅雨明け早まり「夏の肌ダメージ」対策前倒しへ 曇りの日も紫外線に注意
【独自】新FRB議長ウォーシュ氏、FRBの存在感縮小へ 米金利・ドル高がアジア資金流動に波及も
C型肝炎治療後も「脂肪肝」に注意 肝がんリスク約2倍、台湾大学病院が長期研究
【論評】「台湾独立」は政治的レトリックに縮小したのか 頼清徳政権が揺るがす民進党の二大理念
トランプ氏、頼清徳総統との直接通話に意欲 47年続く米台外交慣例に波紋
トランプ氏訪中直後にプーチン氏も北京へ 中露首脳会談で「シベリアの力2」が焦点
高さ12メートルの「サウザンド・サニー号」が台湾・淡水に登場 『ONE PIECE』夏イベント開幕
「BLEACH 千年血戦篇」特別展示、アニメ東京ステーションで5月30日開幕 最終クール放送前に名場面を振り返る
ギャラクシー賞4月度月間賞に原爆ドキュメンタリーなど4作品 『魯山人のかまど』も選出
ADK MS、新サービス「ADK SCRUM Dr.」開始 広告クリエイティブをAIで定量診断
「FANATICS FEST NYC 2026」7月にNYで開催へ W杯決勝PVも実施、世界的スター500人超が集結
【全文】頼清徳総統、就任2年談話 台湾海峡の現状維持と対米武器調達継続を強調
台湾外相がWHA期間中にジュネーブ訪問 中国反発、台湾外交部は「事前調整済み」と説明
在留カードとマイナンバーカードが一体化 「特定在留カード」2026年6月運用開始へ
台湾・高雄産「金鑚」パイナップル、八王子の中学校38校で給食に 1万5000人が味わう日台交流
陸上自衛隊、令和8年6月7日に東富士演習場で火力戦闘演習を実施へ
【論評】頼清徳氏の「台湾独立」論に変化か 中国人観光客再開が両岸関係の試金石に
「GREEN×EXPO 2027」公式ストア、大阪・あべのハルカスに常設店オープン トゥンクトゥンク来店イベントも
米台関係に広がる「信頼の赤字」 トランプ氏の半導体・防衛要求に米シンクタンクが警鐘
台湾映画上映会2026、『うなぎ』『小さな町の恋』を上映 朱駿騰監督らが登壇へ
台北・新北の交通網が大きく変わる MRT環状線北環段、空港線など主要4路線を接続 2031年開通へ
ロイヤルホスト・てんやでライフのポイント最大1000pt進呈 LC JCBカード利用キャンペーン開始
シズラーアクアシティお台場、本格炭火BBQテラスを10月31日まで期間限定で開催
【独占】西新宿に次世代リフト機器導入の美容クリニックThe Arte Clinicが5月15日開院
【第39回東京国際映画祭】ユニクロ支援の「難民映画基金」制作による短編5作品、日本初上映が決定
台湾立法院、頼清徳総統の弾劾案は成立せず 憲政史上初の採決、賛成56票にとどまる
【北京観察】中国が外国人向けタックスリファンド制度を拡充 訪中客の「爆買い」再現なるか
TSMC海外工場が収益拡大 アリゾナ純利益36.9倍、熊本工場も初の黒字化
OECD、日本経済の成長鈍化を予測 消費税引き上げと構造改革を提言
台湾のWHA参加、10年連続で見送り 中国が「一つの中国」理由に反対
トランプ氏「台湾半導体の4〜5割を米国へ」 専門家は「不可能」と断言
米中首脳会談後、頼清徳総統が5項目の見解 「台湾独立問題は存在しない」、現状維持を強調
台湾海峡は米中の「共同管理」へ向かうのか 台湾元高官が首脳会談後の危機を警告
サンリオピューロランドで新たな七夕イベント「ピューロウィッシュマツリ」が6月5日より開催 「≒JOY」コラボイベントも
米中首脳会談の成果に温度差 米国は大型合意を強調、中国は詳細語らず
トランプ氏の「台湾独立望まず」発言を中国学者が分析 頼清徳政権の誤読リスクに警鐘
トランプ氏、台湾半導体は「米国から盗んだ」と再主張 企業に「荷物をまとめて米国へ」
輸出5兆円目標の達成へ――日本食の海外展開と物流課題を解決する食の3大展示会が6月24日より東京ビッグサイトで開催
エー・ピーホールディングスが新業態「炭火酒場 おやどりや」を中野にオープン 親鶏の価値を再定義し食の循環を目指す
台湾有事に日本はどう備えるか 防衛戦略の転換と社会的レジリエンスを専門家が議論
東京・築地跡地に5万人収容スタジアムや陸海空のモビリティハブ整備へ、三井不動産などが進める大規模開発計画の全貌が判明
台湾有事に日本はどう備えるべきか 元陸自幹部と専門家が防衛力・発信力強化を提言
『風傳媒日本語版』の記事がソニー「News Suite」で閲覧可能に 台湾発の国際ニュースを手軽に
「風傳媒日本語版」、ソニーのニュースアプリ「News Suite」に掲載開始
【論評】習近平氏の「台湾攻撃」発言が突きつけた現実 米中首脳会談後、台湾はどこへ向かうのか
JR東日本「GATEWAY Tech TAKANAWA 2026」を開催 スマホをかざさない改札や次世代アグリテックなど最新技術を公開
音楽の街・下北沢がアジアの拠点に 「Shimokitazawa SOUND CRUISING 2026」開催へ、台湾から當代電影大師が参戦
サマソニ25周年の集大成へ、追加アーティスト第9弾と各ステージの陣容が明らかに