【独占】なぜ台湾からノーベル賞は生まれにくいのか 中央研究院・廖俊智院長が語る「短期主義」の壁

2026-03-10 13:35
『風傳媒(ストーム・メディア)』の取材に応じる中央研究院の廖俊智(りょう・しゅんち)院長。(写真/蔡親傑撮影)
『風傳媒(ストーム・メディア)』の取材に応じる中央研究院の廖俊智(りょう・しゅんち)院長。(写真/蔡親傑撮影)

台湾の最高学術研究機関である中央研究院(中研院)が推進する「台湾ブリッジ・プロジェクト」により、多くのノーベル賞受賞者が相次いで訪台している。果たして「ノーベル賞の精神」とは何なのか。中研院の廖俊智(りょう・しゅんち)院長は『風傳媒(ストーム・メディア)』の取材に対し、「受賞者たちは最も根本的かつ重要な問題を見出し、長い時間をかけてその解決に打ち込んでいる。既存の知識の権威に挑み、新たな理論を提示する勇気こそがノーベル賞の精神であり、我々が学ぶべき点だ」と指摘した。

「台湾ブリッジ・プロジェクト」は、中研院と台湾大学が国内の多くの学術研究機関と提携し、世界平和基金会(IPF)と共同で推進している取り組みだ。昨年11月から、平和、物理学、化学、生理学・医学、経済学、文学など多岐にわたる分野のノーベル賞受賞者を招請し、国内の学者や若手研究者との深い交流を続けている。

重大な問いを発掘し、根本的な問題を見極める

​ノーベル賞の精神とは、具体的に何を指すのか。廖院長は次のように述べる。

「華々しい研究成果だけに目を向けるのではなく、彼らがいかにして重大な課題を発掘し、根本的な問題を見極め、解決のために長い歳月を費やしたかを知ることが重要だ。これは一朝一夕に学べるものではない。一連の講演を通じ、台湾の学生や教師たちが、受賞者たちがかつてどのように問題を発見し、解決していったのか、その精神を肌で感じることを期待している」

また、廖院長は「彼らを招く目的は、既存の知識を学ぶためではない。既存の知識の権威に立ち向かう精神を学ぶことこそが、最大の収穫だ」と強調した。

さらに廖氏はこう指摘する「科学や社会における重大な問題をいかに勇気を持って見出すか。なぜその問題が現在の理解と異なるのか、なぜ実験が失敗するのか。一般的には挫折しそうな場面でも、彼らは失敗の原因を追及し続け、既存の知識の不足を突き止めて新理論を打ち立てる。これこそが真の精神だ。また、彼らの重大な発見が社会に多大な貢献をもたらしていることも、ノーベル賞のもう一つの精神である」

『風傳媒』のインタビューに応じる中研院院長・廖俊智氏。(撮影:蔡親傑)
中央研究院の「台湾ブリッジ・プロジェクト」により、多くのノーベル賞受賞者が相次いで訪台。ノーベル生理学・医学賞受賞者のポール・ナース(右)と、中研院の廖俊智院長(左)。(写真/蔡親傑撮影)

挑戦を促し、失敗を許容する環境づくりを

​科学政策のあり方について、廖院長は次のように提言する。

「台湾は、研究者が果敢に挑戦し、深く研究に打ち込める環境を作る必要がある。失敗を許容しつつ、同時にアカウンタビリティ(説明責任)を果たす体制が求められる。尊重された環境の中で、適切な競争と審査メカニズム、そして説明責任が両立されるべきだ」

その鍵となるのが、評価指標の見直しだ。

「科学研究において短期的な成果指標(KPI)を追求すべきではない。常に短期的な指標を問われれば、深い研究は不可能になる。そこには大きなグレーゾーンが存在するが、短期的なKPIに縛られるのを避け、長期的な研究を可能にする『知的なシステム』を設計しなければならない」

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