【舞台裏】台湾外交を支える「食卓外交」 ワインが切り開く意外な突破口とは

ワインは重要な外交の武器であり、その選択は国の文化の深みを示すだけでなく、しばしば外交上の「暗号」が込められることもある。写真は中米独立197周年記念レセプションで、各国の大使と乾杯する蔡英文(さい・えいぶん)総統(当時、左から2人目)。(写真/甘岱民撮影)
ワインは重要な外交の武器であり、その選択は国の文化の深みを示すだけでなく、しばしば外交上の「暗号」が込められることもある。写真は中米独立197周年記念レセプションで、各国の大使と乾杯する蔡英文(さい・えいぶん)総統(当時、左から2人目)。(写真/甘岱民撮影)

現代の外交体系の確立において、フランスは極めて重要な役割を果たしてきた。英語の「diplomacy(外交)」はフランス語の「diplomatie」に由来し、さらにその語源は「折り畳まれたもの」を意味するギリシャ語の「diploum」に遡る。これは外交特使が携える委任状を指し、後に「diploma(証書)」を経て現在の意味へと発展した。興味深いことに、中世から近代、そして現代に至るまで、外交は単に交渉のテーブルで理を説くだけの場ではない。「食卓」もまた極めて重要な地位を占めており、その中でも「ワイン」はしばしば最も決定的な言語となる。

現代外交がかつての「宮廷外交」の時代ではなくなった今も、ワインは依然として外交の食卓において不可欠な要素である。現在の中華民国(台湾)は、国連での代表権を保持していた時期とは大きく状況が異なり、国交樹立国はピーク時の70カ国から現在は12カ国にまで減少した。しかし、あまり知られていない事実がある。台湾の外交における突破口の多くは、実は杯を交わす中で切り開かれてきたということだ。厳しい外交状況に置かれた台湾において、ワインはどのような役割を果たしているのか。台湾の外交官はワインに精通しているのか。そして、ワインは台湾にどのような外交的進展をもたらしてきたのか。

2024年4月10日,美國總統拜登在白宮舉行國宴歡迎來訪的日本首相岸田文雄。(美聯社)
現代の外交がかつての「宮廷外交」の時代ではなくなった今も、ワインは外交の食卓において不可欠な要素である。写真は2024年、ホワイトハウスでの公式晩餐会にて、来訪した岸田文雄首相(左)を歓迎するバイデン米大統領(当時、右)。(写真/共同・AP)

中世から現代へ ワインは外交の「鍵となる暗号」

台湾​外交部(外務省に相当)から車で約10分の距離、台北市大安区の敦化南路に位置する「外交及国際事務学院」は、外交特考(外交官採用試験)に合格した新人研修生たちが職前訓練を受ける場所である。ここでは食事のマナーやワインの選定といった「外交儀礼(エチケット)」が、新人外交官にとって必須のカリキュラムとなっている。実のところ、ヨーロッパで中世の外交が盛んになり始めた当初、食卓の作法は極めて重要な「暗号」であった。

駐フランス代表や駐アイルランド代表、外交部政務次長を歴任した楊子葆(よう・しほう)氏は、自著の中でフランス人外交官の言葉を引用し、次のように記している。宮廷外交とは、王侯貴族が自らの利益を守るために行った合従連衡であり、その利益は「身内」によって守られるのが最善であった。そのため、当時の外交官の多くは宮廷出身者であった。当時の外交任務は極めてリスクが高く、ヨーロッパ内の地理的隔絶も深刻で、国同士の連絡も脆弱であった。例えば、スペインの王子が命を受けてフランスへ向かう途中で殺害され、委任状を奪った者が特使に成り済ます可能性もあった。その際、ナイフとフォークの使い方や多種多様なワイングラスの用途に精通しているかどうかが、その特使が宮廷出身の「身内」であるかを見分ける最も強力な傍証となったのである。
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さらに重要なのは、外交が「権力の言語」である以上、食卓には常にさまざまなメッセージが隠されており、供されるワインは特に重い意味を持つという点だ。一例として、1994年に当時の江沢民・中国国家主席がフランスを訪問した際、当時のミッテラン大統領(François Mitterrand)が国宴(晩餐会)で選んだワインには絶妙なメッセージが込められていた。楊氏がフランスの知人から聞いた話によれば、ミッテラン氏はメインディッシュのローストしたラムチョップに合わせ、1987年ヴィンテージのボルドー「シャトー・ラ・ルーヴィエール(Château La Louvière)」を選んだ。これは相性的には完璧であったが、「玄人好みの選択」であった。このシャトーの国際的な知名度は決して高くなく、国宴の場で「無名ながら良質なワイン」を出すことは、江沢民氏に対するミッテラン氏の態度を暗に示したものだといわれている。

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