【独占】「2027年の台湾海峡」を待つ二重の悪夢とは?張又侠失脚で消えた理性のブレーキ、元海将補が警告する「偶発的戦争」と台湾の勝機

習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。(写真/黃信維撮影)
習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。(写真/黃信維撮影)

「習近平国家主席が武力統一を決断すれば、もはや誰も止められない。だがそれ以上に恐ろしいのは、習主席にその意思がなくとも、現場の暴走があっという間に戦争を引き起こすシナリオだ」。中国人民解放軍(PLA)で続く異例の粛清劇と台湾海峡の危機について、元駐中国防衛駐在官であり中国軍の深層を知り尽くす笹川平和財団「日米・安全保障研究ユニット」戦略・抑止グループ長兼主任研究員・元海将補の山本勝也氏は、『風傳媒』の独占インタビューに対し、2027年に向けた深刻な警告を発した。

習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。黃信維
習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。(写真/黃信維撮影)

山本氏は、統制を失った中国軍との衝突を避けるため、台湾は物理的なエスカレーションを抑制しつつ、中国側のフェリーやUUV(無人潜水機)を含むあらゆるグレーゾーン活動を監視し、日本語・英語・フランス語・タガログ語など多言語で全世界へ即座に発信する「情報戦」で対抗すべきだと提言する。軍のブレーキ役であった実戦派将軍の粛清、「動くだけ」で機能不全に陥った指揮系統、そして「英雄」になろうとする現場兵士の暴走。山本氏が、台湾海峡が直面する「制御不能な危機」の全貌を解き明かす。

習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。黃信維
習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。(写真/黃信維撮影)

張又侠の失脚と「理性のブレーキ」の消失

山本氏はまず、今回の危機の根源にある習主席と張又侠・中央軍事委員会副主席の関係性について、極めて個人的な背景から分析した。二人は「親の代からの幼馴染」であり、習主席が権力を掌握する過程で軍をコントロールするために最も必要とした人物であった。ここ30年以上実戦経験のない「平和ボケ」した人民解放軍において、張又侠氏と劉振立氏(前連合参謀部参謀長)は、中越戦争で実際に血を流した経験を持つ数少ない「プロフェッショナルな軍人」であり、米軍の実力を肌感覚で理解し、リスペクトすらしていたという。

10月8日,前日本海上自衛隊海將補(相當於少將)、現任笹川和平財團高級研究員山本勝也接受《風傳媒》專訪,解析日本自民黨黨魁高市早苗未來政策走向。(王秋燕攝)
10月8日、元海上自衛隊海将補(少将相当)で、現在は笹川平和財団上席研究員を務める山本勝也氏が『風傳媒』の単独インタビューに応じ、自民党総裁の高市早苗氏の今後の政策の方向性について分析した。(写真/王秋燕撮影)

しかし、山本氏は毛沢東が林彪を粛清した歴史を例に挙げ、この「米軍を知りすぎている」という点こそが、絶対的忠誠を求める習主席に「自分を裏切るのではないか」という疑念を抱かせたと指摘する。最も信頼していた友だからこそ、その存在が最大のリスクと見なされ、排除された。これが張又侠失脚の真相であり、中国軍から「理性のブレーキ」が消滅した瞬間でもあった。

20240219解放軍研究專家、前日本海上自衛隊少將山本勝也出席捷克智庫「歐洲價值安全政策中心」(EVC)舉行的座談「日本在台灣保衛方面的角色」。(蔡娪嫣攝)中国人民解放軍の研究者で、元海上自衛隊少将の山本勝也氏が、チェコのシンクタンク「欧州価値安全保障政策センター(EVC)」が主催する座談会「台湾防衛における日本の役割」に出席した。(写真/蔡娪嫣撮影)

イエスマンばかりの指揮系統と構造的欠陥

実戦を知る重鎮たちが去った後の指揮系統について、山本氏は「命令系統は動いているが、組織としての健全性は失われている」と鋭く指摘する。現在の指導部は習主席に異を唱えられない若い将軍(イエスマン)ばかりとなり、かつてのように「訓練が不十分だから1ヶ月待ってください」「相手が強いので今は待ちましょう」といった、現場の実情に基づいた進言や調整を行う者は誰もいない。 (関連記事: 中国はなぜイランを救わないのか 習近平氏が「静観」する計算 関連記事をもっと読む

習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。黃信維
習近平主席が唯一の「直言できる友」であった張又俠氏を排除したことで、軍のブレーキ役は消滅し、現場の「英雄的暴走」が台湾海峡を制御不能な戦火へと引きずり込む最悪の条件が整ってしまった。(写真/黃信維撮影)

習主席が「行け」と言えば、現場は何も考えずに「イエス」と答えて突撃するしかない。山本氏はこれを「リーダーシップ(指導力)に対するフォロワーシップ(補佐力)の欠如」と表現した。指揮系統が形式的に動いていたとしても、それが習主席の戦略的意図に合致している保証はなく、誰も現実を見ないまま破滅的な作戦が強行される構造的欠陥を抱えているという。

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