中国共産党内の権力中枢で激震が走っている。中国国防部が1月24日に発表したところによると、中央軍事委員会の副主席を務める張又侠(ちょう・ゆうきょう)氏と、同委員兼連合参謀部参謀長の劉振立氏が、「重大な規律違反および法律違反」の疑いで立案調査を受けていることが明らかになった。
これにより、20期中央軍事委員会のメンバー7名のうち、現職に留まっているのは主席である習近平氏と、副主席の張升民氏のわずか2名のみとなった。台湾大学政治系の名誉教授である明居正(めい・きょせい)氏は台湾メディア『風傳媒』の番組「下班瀚你聊」に出演し、この大規模な粛清の背景に、習氏と張又侠氏の間で長年繰り広げられてきた熾烈な権力闘争があると分析する。
中国軍最高機関を襲う連鎖的粛清の構図
中国の統治体制は「党が軍を指導する」原則に基づき、中央軍事委員会が人民解放軍および武警を統括する最高意思決定機関である。通常、主席1名、副主席2名、委員4名で構成されるが、現在その過半数が失脚するという異常事態に陥っている。
明氏によれば、事の発端は装備発展部部長だった李尚福氏の失脚にある。李氏は贈収賄の容疑で逮捕されたが、明氏は「誰に賄賂を贈ったのか」という点に着目する。李氏を引き上げたのは、苗華氏、何衛東氏、あるいは張又侠氏、さらには習近平氏本人である可能性も排除できない。苗華氏と何衛東氏が失脚した際の容疑も収賄であったことから、軍内部での利権構造が複雑に絡み合っていることが伺える。
しかし、明氏は「収賄はあくまで表面的な理由に過ぎない」と指摘する。仮に収賄が真の理由であれば、軍事委員全員が標的になってもおかしくないからだ。
調査の遡及と「羽翼」を巡る攻防
焦点は2020年から2021年にかけて始まった装備発展部の調達に関する調査にある。この調査は2017年まで遡って行われたが、2017年は李尚福氏が部長に就任した年である。しかし、李氏の前任者こそが張又侠氏であった。
調査範囲が2017年以前にまで及んだことで、張又侠氏は自身の身に危険が及ぶことを察知し、習氏との間で疑心暗鬼が深まったとされる。明氏の分析によれば、習氏が信頼を寄せていた苗華氏や何衛東氏が失脚したのは、習氏自身の意思ではなく、張又侠氏が先手を打って習氏の「羽翼(側近)」を切り崩した結果である可能性が高い。

重大な規律・法律違反の疑いで立件・調査が行われていると中国当局が発表した、中国共産党中央軍事委員会の張又侠副主席。(資料写真、AP通信)
決定的となった「サリバン会談」と軍権の逆転
張又侠氏にかけられた罪状の中で最も注目すべきは、以下の2点である。
- 「軍事委員会主席責任制」の深刻な蹂躙と破壊
- 核兵器に関する機密情報の米国への漏洩
特に後者について、明氏は「軍のトップに登り詰めた張氏が、今さら米国に情報を売るメリットが乏しい」と疑問を呈す。
むしろ、決定的な溝となったのは2024年8月のサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の訪中だった。サリバン氏は異例にも張又侠氏との会談を指名。会談に応じた張氏は、まるで軍主席や総書記であるかのような振る舞いを見せ、対外的に強い影響力を誇示した。
「三中全会(第20期中央委員会第3回全体会議)前後、習近平氏の健康不安説が流れる中で、軍権を掌握した張又侠氏の勢力は習氏を圧倒していた。しかし、習氏が健康を回復し権力を再掌握したことで、一転して張氏への報復的な逮捕に至ったのではないか」
明氏はこのように締めくくった。
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編輯:丁勤紜


















































