トップ ニュース 中国・張又侠氏の失脚に「3つの異常点」 軍内部に広がる動揺、専門家「台湾は危険な段階に入った」
中国・張又侠氏の失脚に「3つの異常点」 軍内部に広がる動揺、専門家「台湾は危険な段階に入った」 2022年、軍委統合作戦指揮センターを視察する習近平主席(左から3人目)と中央軍事委員会トップ7人。張又侠(右から2人目)、何衛東(左端)、苗華(右端)、李尚福(右3)、張昇民(右4)、劉振立(左2)が同行したが、現在も在任しているのは習氏と張昇民氏のみとなった。(写真/新華社より)
中国共産党中央軍事委員会の張又侠(チョウ・ユウキョウ)・第一副主席と、劉振立(リュウ・シンリツ)・連合参謀部参謀長が「重大な規律・法律違反」で立件・調査されていることが明らかになり、各界に衝撃が走っている。 これに対し、台湾・国防大学中国軍事事務研究所の馬振坤教授は、今回の粛清劇にはこれまでにない「3つの異例な点」があると分析した。
スピード決着: 当局が事実確認を極めて急いだこと。習氏の威光: 習近平国家主席自らの決断であることを強調し、異論を封じ込めたこと。言論統制: 『解放軍報』の批判社説を官製メディアがこぞって転載し、引き締めを図っていること。馬氏は、中国軍制服組トップである張氏の失脚により、中国の対台湾軍事路線が不透明になったと指摘。「台湾の安全保障は危険な段階(Dangerous Phase)に入った」と警鐘を鳴らした。また、軍内部で習氏への不満がくすぶっていることは間違いないとしつつも、「軍人によるクーデター(造反)が起きる可能性は低い」との見方を示した。
政治大学国際関係研究センターが1月30日に開催した「中国人民解放軍高層の人事動揺と両岸関係への影響」座談会。左から掲仲氏、丁樹範氏、王信賢氏、寇健文氏、馬振坤氏。(楊騰凱撮影)
専門家集結、台湾で緊急座談会 政治大学国際関係研究センターは1月30日、「中国解放軍高官の人事動揺と中台関係への影響」と題する座談会を開催した。 司会は同センター主任の王信賢氏が務め、パネリストとして寇健文氏(政治大学政治学部特任教授)、丁樹範氏(政治大学東亜研究所名誉教授)、馬振坤氏(国防大学教授)、掲仲氏(国防安全研究院委任研究員)ら、台湾を代表する中国研究のエキスパートが登壇した。
馬振坤氏は、今回の事件における第一の「異例」として、当局の反応の速さを挙げた。 張又侠氏がある重要会議を欠席したことで「拘束説」が囁かれ始めると、中国国防省は即座に(24日)、張氏と劉氏の「重大な規律・法律違反」による調査決定を公式に認める声明を発表した。
「党中央」の名のもとに 習近平氏による直接介入の示唆 馬振坤氏は、前述した何衛東氏(前副主席)のケースでは公式発表まで半年を要したのに対し、今回はネット上の噂からわずか4日で当局が認めた点を「極めて異例」とする。第二の異例点は、国防省が「党中央の決定」として調査を発表したことだ。 「あえて『党中央』という言葉を使ったのは、張又侠氏の逮捕が習近平総書記(国家主席)自身の『親裁(直接の決断)』であることを天下に知らしめるためだ」と馬氏は指摘する。 なぜこれほど急ぐ必要があったのか。そして、なぜ習氏の名前を前面に出して正当化する必要があったのか。
第三の異例点は、メディアの動きだ。25日付の『解放軍報』が張・劉両氏を批判する社説を掲載すると、『人民日報』や『新華社』といった中央直轄メディアだけでなく、『文匯報』や『大公報』といった地方・海外向けメディアまでもが一斉に転載した。
中国軍の最新の失脚上将、張又侠氏(左)と劉振立氏(右)。(Weiboより) 馬氏はこれら3点を統合し、次のように分析する。 「党中央は、張氏の処理を速やかに完遂しなければ『夜長夢多(時間が経てば事態が悪化する)』と考えたのだろう。習氏の威光を借りて異論を封じ、メディアを総動員して噂を消し去ろうとしている。裏を返せば、それほど事態は重大だということだ」
真の動機は「2027年の権力延命」か 「名目は『腐敗』だが、動機は『政治』だ」 馬氏は今回の粛清劇をそう断言する。習氏は確かに汚職撲滅を進めているが、独裁的な権力構造においては、何よりも自身の権力基盤の強化が優先される。「大きな反動(副作用)があると知りながら、あえてこのタイミングで張氏を切り、言論統制を強めた。これは、これ以上先延ばしにすれば、習氏自身の権力基盤が脅かされると判断したからに他ならない」
国防大学中共軍事事務研究所の馬振坤教授は、張又侠氏の失脚により、現在の台湾の安全保障は危険な段階に入ったと分析した。(楊騰凱撮影) さらに馬氏は、次の政治的な節目である2027年の「第21回党大会(二十一大)」に着目する。「今回の粛清は、習氏が2027年以降も権力を維持するための布石である可能性が高い。来年の党大会でさらなる長期政権を目指すにあたり、軍部の最大実力者である張氏は邪魔な存在だったのではないか」
軍内に広がる不満と「求心力の喪失」 軍制服組トップの失脚に対し、解放軍内部で不満が高まっていることは想像に難くない。馬氏は「軍人による組織的な造反(クーデター)が起きる確率は低い」としながらも、深刻なリーダーシップの欠如を指摘する。
「張又侠氏は作戦系統において絶大な影響力を持ち、軍内部を掌握できる数少ない人物だった。何か問題が起きても、彼の一言で現場は収まった。彼が去った今、その代わりを務められる将軍は見当たらない」 張氏という「重し」が取れたことで、軍内部の統制が不安定化するリスクが浮上している。
台湾海峡は「予測不能」な危険領域へ 最後に馬氏は、この激震が台湾の安全保障に与える影響について、最も悲観的な見通しを示した。「張又侠氏の失脚により、中国の対台湾軍事路線は『不確定』な時期に入った」
これまでは張又侠氏という人物を通して、中国軍の思考回路や台湾へのアプローチがある程度予測でき、それに応じた対策を講じることができた。「しかし今、誰が軍事的な意思決定を行っているのか、誰が習氏に助言しているのかが見えなくなってしまった。中国の路線が読めない以上、相手がどのような手段に出るかも予測できない。台湾の安全保障は、極めて危険な段階(Dangerous Phase)に突入したと言わざるを得ない」
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