中国半導体は米国に追いつけるのか?元TSMC幹部・楊光磊氏「決定的技術が欠落、片足で戦っている状態」

『風傳媒』の番組『下班国際線』で中国半導体の発展状況について解説する台湾TSMCの元研究開発処長の楊光磊氏。(撮影:柯承惠)
『風傳媒』の番組『下班国際線』で中国半導体の発展状況について解説する台湾TSMCの元研究開発処長の楊光磊氏。(撮影:柯承惠)

米国の技術封鎖により発展が制限されている中国半導体産業だが、一方で中国テック企業による技術的ブレイクスルーの報道も後を絶たない。この現状について、世界最大のファウンドリである台湾TSMCの元研究開発処長(ディレクター)、楊光磊(ヤン・グァンレイ)氏が台湾メディア『風傳媒』の番組に出演し、専門家の視点から分析を行った。

楊氏は「中国にはある重要な技術が欠けている」と指摘し、現在の中国半導体産業を「片足を失い、片手を縛られた状態で健常者と戦争をしているようなものだ」と形容した。

「米のない炊飯」:ASMLのEUV露光装置という壁

​楊氏は番組内で、中国が直面する最大の問題は米国による包囲網であり、多くのリソースが遮断されている点だと指摘した。「巧婦難為無米之炊(どんなに料理上手な主婦でも、米がなければ飯は炊けない)」という諺を引用し、現在の中国の状況を解説した。

「現在の中国には多くの先進的な製造装置がない。基本的に、今の中国はこの戦争において、片足を失い、片手を縛られた状態で健常者(欧米諸国)と戦っているようなものだ。どれほど能力があろうとも、困難は極めて多い」。楊氏は、中国が確実に米国の封鎖による深刻な影響を受けていることを強調した。

中国政府は国産化率50%超えを謳い、ファーウェイ(Huawei)の自主開発能力やサプライチェーン構築の速さも注目されている。これに対し楊氏は、自身が述べているのはTSMCとSMIC(中芯国際)のような一対一の競争における現状だと説明する。

楊氏は中国の現状を、中国の古典小説『水滸伝』になぞらえて表現した。「中国の半導体産業は米国によって『梁山泊(逃げ場のない場所)』に追い込まれ、そこで独自の事業を興すことを余儀なくされている」。

独自のエコシステム構築には時間がかかると楊氏は見ている。「特にASML社のEUV(極端紫外線)露光装置の不在は決定的だ。他の装置や技術は比較的代替が容易かもしれないが、EUVに関しては開発にかなりの時間を要するだろう」。楊氏は中国の成功の可能性を完全に否定はしなかったものの、米国の包囲網が依然として高い壁であることを示唆した。

20260114- 元TSMC研究開発処長の楊光磊氏(右)は14日、『風傳媒』の番組「下班国際線」に出演し、司会の路怡珍氏(左)と対談した。(撮影:柯承恵)
楊光磊氏(右)は、中国が独自の半導体エコシステムを構築するものの、それには時間を要すると指摘した。左は『下班国際線』司会の路怡珍氏。(撮影:柯承恵)

中国の科学技術は米国を超えるか?「G2」市場の形成

​世界市場の今後について、楊氏は「中国市場」と「非中国市場」の二極化が進んでいると分析する。非中国市場とはすなわちグローバル市場であり、その生産能力、生産量、生産額のすべてにおいて中国市場を上回っている。TSMCが米国と連携するのは、この巨大なグローバル市場を重視しているためだ。

「中国は自国の巨大な市場を頼りに、半導体産業を育成できる世界で唯一の国だ。しかし、グローバル市場と比較すれば、その規模はまだ2〜3倍の開きがある」と楊氏は指摘する。

中国市場と世界市場が交差(逆転)する可能性について、楊氏は厳しい見方を示した。「中国が米国よりも先進的なものを開発し、米国をリードし、それを14億人の人口から世界へと広め、米国の封鎖を無効化できた時に初めて可能性が生まれる。しかし、これには過去の教育や歴史的背景が関わっており、近い将来に実現するのは容易ではない」。

楊氏は、中国はこれまで「強力なフォロワー(追随者)」としての役割を果たしてきたと語る。EV(電気自動車)のように、米国が生み出したものを内需市場で育成することは得意だ。しかし、「無から有を生み出す」、つまり過去に存在しなかったものを創造した例は、現時点ではまだ多くない。

「中国の強みは、米国で新しい事例が生まれた後、それを自国市場で適用し、固定客化することにある。米国が防波堤を築かない限り、中国は脅威となり得るが、現状では米国は防衛策を講じている」。

楊氏は結論として、米中関係は今後も「G2(Group of Two)」の状態、つまり中国を中心とした市場と、米国を中心とした市場の2つが並立する形が続くだろうと予測した。

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