「台湾有事」の遠因は「二・二八事件」にあり 歴史はいかに政治利用されたか【本田善彦・早田健文】

2026-02-02 14:37
研究者の張若彤氏、「二・二八事件が私たちに残した最大の歴史的教訓は、秩序喪失の状態を二度と起こしてはならない」と指摘する。(写真/顏麟宇撮影)
研究者の張若彤氏、「二・二八事件が私たちに残した最大の歴史的教訓は、秩序喪失の状態を二度と起こしてはならない」と指摘する。(写真/顏麟宇撮影)
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台湾と中国大陸の対立は、近年、日本で「台湾有事」として盛んに議論されている。その対立の遠因の一つが、1947年2月28日に台湾で発生した「二・二八事件」にあると言える。特に台湾の現在の民主進歩党(民進党)政権とそれを支持する人たちにとって、中国大陸に対する嫌悪感の発端となっている。

二・二八事件とは何か。日本ではおそらく聞きなれない事件だろうが、台湾社会にいまだに深い影を落とす重大事件であり、日本植民地統治から第二次世界大戦後に中華民国に接収された台湾にとって、戦後最大の事件だ。

当時、台湾を接収した中華民国の中国国民党(国民党)政権に対して、台湾ではインフレや差別待遇などを原因として、不満が高まっていた。こうした中で、台北市で取締官がタバコ売りの女性を取り調べたことをきっかけに、市民と国民党政権との衝突が発生した。また、そこに中国共産党のスパイも参入したとされている。当時、中国大陸にあった国民党政権は、軍隊を派遣して事態を鎮圧した。

この事件は、「本省人」(戦前からの台湾住民とその子孫)と「外省人」(戦後に台湾に渡ってきた中国大陸出身者とその子孫)の間に亀裂をもたらし、国民党政権は事件について語ることを長年タブーとした(注1)。

この事件がなぜ「台湾有事」の遠因なのか。国民党政権は、中国大陸に生まれ、日中戦争後の中国共産党との内戦(国共内戦)に敗れ、1949年に台湾に撤退してきた。「本省人」の一部は、二・二八事件を契機として、国民党政権を、台湾に圧政をもたらした外来政権だと位置付け、打倒の対象として嫌悪した。中国共産党と対立するのは国民党政権であり、この時代、中国大陸を敵対勢力とは考えていなかった。

しかし、国民党主導の民主化が進み、1988年に台湾生まれの「本省人」である国民党の李登輝氏が1988年に総統に就任すると、国民党を倒す理由が薄れる。この時期、中国大陸で経済発展が進み、各面で国力が強まった。中国は、台湾独立を志向するとみなした李登輝政権に対して、圧力をかけるようなる。こうした中で、国民党を嫌悪していた人たちの嫌悪対象は、中国大陸あるいは中国共産党に移っていく。

二・二八事件は、国民党による権威主義体制、戒厳令の下で、語ることがタブーとされ、真相は明らかにされないままだった。しかし、民主化が進み、二・二八事件を公開で語ることができるようになり、李登輝総統時代から民進党へと政権交代が実現するのに伴って、事件が持つ意義が変化していく。つまり、「移行期正義」(注2)という概念の下に、国民党を指弾する材料になっていてく。それが、中国との関係の変化と絡み合っていく。 (関連記事: 台湾祝日“二二八”とは? 二二八記念日の由来と死者数:80年前の語られざる秘密 関連記事をもっと読む

その過程は、政治的状況、社会的雰囲気が変わり、政権が交代し、タブーとして蓋を閉じられていたものが開放された時、それが新しい権力者によってどのように政治利用されるかを、象徴的に物語っている。歴史において繰り返されて来た状況が、ここでも繰り返されている。そして、それまでタブーだったものが、現在において別の意味でのタブーとなっている。つまり、新しい権力者による解釈に挑戦することは非常に困難であり、実際に挑戦者はほとんどいない。

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