呉典蓉コラム:「自由はタダではない」が単なるスローガンと化す時、支払わされる真の代償は「民主主義」だ

2026-01-31 17:17
頼清徳政権による1兆2500億台湾ドルの武器調達案を後押しすべく、「自由はタダではない」と高らかに訴えるAIT(米国在台協会)のレイモンド・グリーン所長。(写真/劉偉宏撮影)
頼清徳政権による1兆2500億台湾ドルの武器調達案を後押しすべく、「自由はタダではない」と高らかに訴えるAIT(米国在台協会)のレイモンド・グリーン所長。(写真/劉偉宏撮影)

格言が単なるプロパガンダ(宣伝)に堕した時、それは危険な兆候だ。

米国在台協会(AIT)のレイモンド・グリーン所長は先日の演説で、「自由はタダではない(Freedom isn't Free)」という有名な言葉を引用した。もし彼が、人々が自由のためにあらゆる犠牲を払う覚悟を説いたのであれば、それは確かに気高い精神である。

しかし、もしこの言葉が、1.25兆台湾ドル(約5.8兆円)にも上る巨額の国防特別予算という「白紙の小切手」を通過させるための口実として使われたのであれば、それは安っぽい宣伝であるばかりか、台湾の民主主義と自由を傷つける行為に他ならない。頼清徳政権が、国内の政治対争に米国が公然と介入することを歓迎している姿は、現政権の無能さと怠慢を映し出しているに過ぎない。

自由は無料ではないが、台湾の「支払い」は逆効果を生んでいる

グリーン所長の発言に続き、頼清徳総統もまた「自由はタダではない」という言葉を繰り返し引用し、野党に対して国防予算案への支持を迫っている。

確かに自由は無料ではない。だが、自由の価値を金銭で測ることができるだろうか? 自由と等価交換できるのは、勇気と犠牲の決心だけであるはずだ。あえて金銭的価値に換算するなら、一体いくら払えば台湾の自由は買えるのか。

台湾は関税交渉において、5,000億米ドルの対米投資を約束した。ハワード・ルトニック米商務長官はこれを「台湾による米国投資の頭金」だと嬉々として捉えた。しかし、ルトニック氏は同時のインタビューで、「米国は4,000マイルも離れた台湾で製造されるハイテク半導体を守ることはできない」と正直に告白している。

この発言は残酷な真実を証明している。台湾は巨額の「代金」を支払ったにもかかわらず、その見返りは「米国は台湾防衛を約束しない」という結果だったのだ。つまり、「自由はタダではない」というが、台湾の支払いはむしろ逆効果を招いている可能性がある。

「シリコンの盾」の流出と米国の分断統治

トランプ政権による世界的な関税戦争において、米国が必ずしも利益を得ているとは限らないが、確実なのは「TSMC(台湾積体電路製造)が大挙して米国へ投資する」という事実だ。半導体の王者であるTSMCが米国に拠点を置くこと自体は理解できる。しかし、台湾の安全保障上の切り札であった「シリコンの盾」が流出しても、米国の安全保障確約は得られず、逆に米高官から「自由はタダではない」と上から目線で説教される始末だ。

これは、台湾の関税交渉が大敗北とは言わないまでも、圧倒的弱者の立場にあることを証明している。トランプ政権の「ビジネスと軍事を切り離す(分断統治)」戦略により、シリコンの盾はもはや重要な交渉カードではなくなりつつある。
(関連記事: 「習近平が私を捕らえるなら公開を」張又俠氏の「密書」拡散 軍事クーデター説と台湾侵攻反対の真相 関連記事をもっと読む

シリコンの盾の大部分が米国へ移転したその日、米国にとって台湾を防衛する圧力は消滅する。「台湾人は自らの防衛任務を負うべきだ」というのが、今回の武器売却の真の意味である。しかし、台湾側は金を払った後、その武器の内容や納期、引き渡し方法について口を挟む権利を持っているだろうか? 頼政権には価格交渉をする能力も意思もなく、すべては米国の言い値で決まっているのが現状だ。

最新ニュース
【猫の日】エキュート日暮里・立川で「猫の日フェア」2月4日開幕!限定スイーツや招き猫グッズなど『猫づくし』の1ヶ月
舞台裏》「プレミア12」優勝の立役者が台湾国会の司令塔に?民進党内紛で浮上した「リリーフ」蔡其昌氏
持久系エナジージェル「WARABEAT!!」が発売3か月で10万本突破、期間限定キャンペーン開始
「米国の言いなり」を拒否したカーニー首相の賭け 中国からの菜種大量受注は「劇薬」か カナダ財界に広がる戦慄
「習近平が私を捕らえるなら公開を」張又俠氏の「密書」拡散 軍事クーデター説と台湾侵攻反対の真相
マドゥロ拘束後のベネズエラ、トランプ政権が選んだ「理念より石油」の冷徹な実利主義
紛争下の性暴力、前年比25%増の4,600件超「氷山の一角に過ぎない」 国連特別代表が都内で警鐘、米トランプ政権の動向に懸念も
王子ネピア「ネピアテンダー」を大幅刷新 皮膚トラブル防止と「世界最小級」のコンパクト化で現場の負担を軽減
元陸自・五ノ井里奈さん、国と和解成立「自らの足で歩むスタート」 性被害訴訟が終結、新団体設立も発表
テスラ、Model S・Xの生産終了を正式表明 マスク氏「車は過渡期」、人型ロボット「Optimus」に社運を賭ける
3兆円の巨額投資、日本が水素エネルギーに「国運」を賭ける理由
台湾の至宝・徐若熙がソフトバンク入団会見 背番号「18」を背負い「毎年10勝」、3年後のメジャー挑戦を宣言
【独占インタビュー】「米国は恩人、中国は身内」国民党・鄭麗文主席の新路線を読み解く 蕭旭岑副主席が語る「鄭・習会談」の行方と孤立する頼政権
【評論】米中対立下で中国貿易が過去最高を記録 米国の「封じ込め政策」は失敗か
【衆院選2026】高市首相が仕掛けた「二者択一」の究極の戦略 台湾学者が読み解く「自民単独過半数」のシナリオ
ベッセント長官「介入否定」で円急落 専門家が警告する「高市リスク」と2026年のインフレ衝撃
保温ボトルにコーヒーや茶は危険?医師が警告、重金属が溶け出す「2つのNG習慣」と正しい買い替え時期
米国、「米中首脳会談」に向け対中軟化へ?新戦略から「台湾」消失の衝撃 「トランプ2.0」新国防戦略が描く米中台の激変シナリオ
【掲仲コラム】張又侠氏「粛清」の深層と衝撃 習近平氏が恐れた「2つのレッドライン」とは
【インタビュー】ドゥ・ジエ監督最新作『椰子の高さ』2月6日公開 世界的撮影監督が足摺岬の自然と「測り得ない意識」を捉えた渾身の一作
【2026 WBC】日本代表新ユニフォームが登場 大谷翔平・村上宗隆ら15選手のグッズ、30日より先行予約開始
韓国大統領が警告する半導体価格「倍増」のシナリオ 「100%関税」の脅しは米AI産業への自爆テロか
張又侠氏失脚は台湾侵攻を遠ざけるのか、近づけるのか?専門家が指摘する「独裁者の暴走」と「判断ミス」の恐怖
「中国も真似する?」ベネズエラ斬首作戦が逆に台湾侵攻を止める理由 ルビオ米国務長官「世界で米国にしかできない」
東京都、「水素がうごかす未来シティ」開催へ ゆうちゃみと学ぶ水素エネルギー、高輪ゲートウェイシティで無料体験
【アルバート・リュウの視点】台湾はもはや「善意」で世界を解釈してはならない 半導体流出とグリーンランド騒動の点と線
政府、尖閣漁船に「水面下」で自粛要請 高市首相「台湾有事」発言でトランプ氏介入も
【春節】中国人の旅行先トップは日本から「あの国」へ 日本は60%減の衝撃予測、外交摩擦がインバウンド直撃
「高給清掃員」契約のはずが戦場の最前線へ ロシア軍の「捨て駒」にされたバングラデシュ人男性の告白
関西初!「GREEN×EXPO 2027」常設公式店が神戸・三宮に1月30日オープン マスコット撮影会も
張又俠氏の失脚は「台湾海峡の危険信号」か?米在住の翁履中氏が指摘「中国は“滑走路”を整備中」、台湾が最も恐れる「一点」とは
もはや習近平氏の台湾侵攻を止める者はいないのか?張又侠氏ら軍トップ失脚の衝撃 研究者が読み解く中国軍の「次の一手」
台湾元総統・陳水扁一家の「3億ドル着服」疑惑、渦中の人物・余金宝氏の正体 国民党マネーを動かす「政商」の闇
「韓国国会はなぜ批准しないのか」トランプ氏、米韓協定を破棄、25%の報復関税を即時適用へ
【舞台裏】「自由はタダではない」米国の圧力に揺れる台湾野党 1.25兆台湾ドルの巨額軍事予算、国民党の苦悩と決断
中国共産党、1年で約100万人を処分 軍トップ張又俠氏も標的か 習近平氏が抱える「権力の焦り」と統治のジレンマ
高市首相、与党過半数割れなら「即刻辞任」を明言 衆院選へ背水の陣
「ヤマザキビスケット、映画ドラえもん『新・のび太の海底鬼岩城』オリジナルパッケージの製品を2月から順次発売!「どらやき風ノアール」も登場
台北101を「命綱なし」で制覇 米オノルド氏の偉業とNetflix生中継が問う「死のリスク」と報道倫理
台湾華語教育、世界100カ所体制へ 徐佳青・僑務委員長が仙台の学習センター開所式に出席
米主導の「対中包囲網」に風穴 EU・カナダが中国と相次ぎ和解、揺らぐEVデカップリング
「日台友情の象徴」李琴峰氏や東山彰良氏の作品など3万冊 日台交流協会が寄贈、2026年開館の台南新国家図書館分館に収蔵へ
【舞台裏】台湾軍「サイバー部隊」に戦力空白の危機?中国の指名手配が示す実力と、組織再編の真実
トランプ氏、ペンギン画像で「グリーンランド執着」示す?英米研究者が指摘する「資源開発」の不都合な真実
2026年こそ「運命の分岐点」?習近平の焦燥とトランプ外交の空白が招く、台湾有事「3つの引き金」
中国、日本渡航制限の次は「台湾旅行解禁」か 憶測呼ぶ契約更新、台湾当局は「定例事務」と一蹴
【特別寄稿】映画『国宝』の狂気と高市早苗の覚悟 映画と政治が共振する「日台運命共同体」の行方
命綱なしで台北101の頂へ アレックス・オノルドはいかにして「恐怖」を飼いならしたか?王者が語る極限の心理と死生観
わずか1時間半!アレックス・オノルド、台北101の「完全フリーソロ」に成功 命綱なしで史上初の快挙
日本の帰化条件が大幅厳格化へ 自民党が提言案、居住要件「10年」に延長 離島の国有化も明記