【アルバート・リュウの視点】台湾はもはや「善意」で世界を解釈してはならない 半導体流出とグリーンランド騒動の点と線

2026-01-29 12:48
トランプ米大統領が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した、グリーンランドに旗を立てるAI合成画像。(画像/@realDonaldTrumpより)
トランプ米大統領が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した、グリーンランドに旗を立てるAI合成画像。(画像/@realDonaldTrumpより)

近年、台湾社会ではある問題に対して、圧倒的なコンセンサスが形成されている。それは、「関税や地政学的圧力の下で、半導体のサプライチェーンが米国へ投資することは、やむを得ない選択であり、正しい選択である」というものだ。これに疑義を呈する者は、即座に「国際政治を理解していない」「反米」「危機を煽っている」といったレッテルを貼られるのが常である。

その中で最も頻繁に見られる反論は、一見もっともらしく聞こえるが、本質を混同した次のような言葉だ。「かつて産業が中国へ移転したときは誰も批判しなかったのに、なぜ今、米国へ移転するとこれほど多くの批判が出るのか?」

この言葉が流布する理由は、決定的な違いを意図的に無視しているからだ。それは「階層の差異」と「時間の差異」である。

「28ナノ」と「2ナノ」の混同こそ、最も危険なミスリード

20年前、台湾の製造業や一部の半導体生産能力が中国へ移転した際、何が移転したのか。それは労働集約型であり、付加価値が限定的で、技術的な成熟期を過ぎた生産ラインだった。

現在の言葉で言えば、それは「28ナノメートル世代」に近いものであり、台湾本土の最先端プロセスとは6年から7年以上の世代間格差が存在していた。それは「制御可能な移転」であり、技術主権、開発のリズム、そして重要なノウハウ(Know-how)は、依然として台湾島内に強固に保持されていたのだ。

しかし、現在は全く状況が異なる。

TSMC(台湾積体電路製造)の米国工場建設において移転されるのは、周回遅れの技術ではない。台湾本土とわずか1年、あるいは半年しか差のない「最先端プロセス」である。これは産業の分業ではなく、中核能力(コア・ケイパビリティ)の同時流出に他ならない。

さらに重要なのは、米国側がその戦略的目標を隠そうとしていないことだ。『フィナンシャル・タイムズ』『ブルームバーグ』『ウォール・ストリート・ジャーナル』など複数の国際メディアの報道によれば、米政府高官は公的・私的に以下の希望を繰り返し表明している。

  • TSMCの将来的な生産能力の30〜40%を米国内に置くこと。
  • 米国内の製造プロセスを、台湾の最先端ノードと同期させ、世代遅れにしないこと。
  • 「重要ノードの量産能力」を米国の国家安全保障体系の一部として組み込むこと。

これらの重大な事実は、台湾の主流メディアでは驚くほど完全に伝えられていない。

台湾が真に失うもの、それは「代替不可能性」

台湾にとって長年の最大の戦略的資産は、軍事力ではなく「代替不可能性(Irreplaceability)」であった。

世界で最も重要かつ精密で、複製困難な半導体製造能力が台湾に高度に集中しているからこそ、台湾有事は世界秩序への全面的な激震を意味した。これこそが台湾の最強の「見えざる抑止力(シリコンシールド)」だったのである。 (関連記事: もはや習近平氏の台湾侵攻を止める者はいないのか?張又侠氏ら軍トップ失脚の衝撃 研究者が読み解く中国軍の「次の一手」 関連記事をもっと読む

しかし、問題はここにある。半導体サプライチェーンが段階的に「脱中国化(デカップリング)」を完了し、それと同時に「脱台湾化」をも完了させた後、世界にとって、コストを度外視してまで台湾を守る理由はどれほど残るだろうか?

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