政府、尖閣漁船に「水面下」で自粛要請 高市首相「台湾有事」発言でトランプ氏介入も

尖閣諸島(台湾名:釣魚台列島)。(写真/AP通信)
尖閣諸島(台湾名:釣魚台列島)。(写真/AP通信)

沖縄県・石垣島の漁師、仲間均氏(76)は長年、尖閣諸島(台湾名:釣魚台)周辺海域での漁を続け、実効支配の守護者として活動してきた。中国海警局の船に取り囲まれながらも操業を続ける彼の行動は、これまで日本政府によって黙認されてきた。しかし、2025年末からその風向きが変わり始めた。政府当局が中国を刺激し、日中間の緊張をさらに激化させることを避けるため、当該海域への出漁を控えるよう水面下で「指導」し始めたという。

ロイター通信によると、日本政府は長年、尖閣諸島での主権を誇示し、実効支配を強化する手段として、自国漁民の活動を事実上黙認してきた。しかし、2025年10月に就任した高市早苗首相が対中強硬姿勢を打ち出し、「台湾有事」に関する踏み込んだ発言を行ったことで、中国側が強く反発。両国関係は氷点下まで冷え込んでいる。

方針転換:黙認から「自粛要請」へのジレンマ

​石垣市の中山義隆市長は、漁民が強行して出漁した場合、中国当局による拿捕や強制立ち入り検査のリスクがあり、収拾のつかない国際問題に発展しかねないと懸念を示す。「日本政府は今、これ以上の衝突拡大を避けたいと考えている」と吐露した。

この外交的な駆け引きの背景には、米国の影も見え隠れする。情報筋がロイターに語ったところによると、ドナルド・トランプ米大統領は2025年11月、高市首相に対し「これ以上緊張を高めないように」と水面下で要請したという。外務省は米側からの指示の有無について回答を避けているが、時期の一致は憶測を呼んでいる。

2012年9月16日,在上海街頭發生的反日示威,起因是中國不滿日本意圖將釣魚台國有化。(美聯社)
日本政府による尖閣諸島国有化に抗議し、上海の街頭で行われた反日デモ(2012年9月16日)。(写真/AP通信)

前述の仲間氏は、2025年12月に東京で片山さつき財務相と面会したことを明かした。かつて尖閣防衛関連組織の顧問を務め、本来なら漁民を支持する立場だったはずの片山氏だが、20分間の面会で「小さな事故が大きな戦争に発展する可能性がある」と直言。尖閣周辺での操業自粛を暗に求めたという。

別の漁師、金城和嗣氏(53)も同様の圧力を感じている。2025年11月末の出港直前、複数の政府関係者から電話があり、尖閣周辺海域を避けるよう求められた。「これまでは一度もそんなことを言われたことはなかった」と金城氏は驚きを隠さない。

中国海警局の接続水域入域、過去最多の357日

​公的データによると、中国による尖閣諸島への圧力はかつてないレベルに達している。2025年、中国海警局の船が同海域で確認された日数は357日に上り、ほぼ「年中無休」の状態だ。対照的に、日本漁船の同海域への出漁回数は2024年の18回から、2025年にはわずか8回へと激減している。

日本海上自衛隊的P-3C偵察機飛越尖閣列島(釣魚台列嶼)上空。(美聯社)
尖閣諸島上空を飛行する海上自衛隊のP-3C哨戒機。(写真/AP通信)

現在、日本政府と沖縄は「進退窮まる」状況にある。漁民の活動を放置すれば、中国海警局との偶発的な軍事衝突を招く恐れがある一方、民間活動を完全に撤退・禁止すれば弱腰と受け取られ、中国側にさらなる埋め立てや軍事展開の口実を与えかねない。

英国際戦略研究所(IISS)のロバート・ウォードは、「今の日本にとって、その水域にまだ(日本の施政権の)『脈動』があることを示すことが、主権維持の鍵となる」と指摘する。

中國海警船2016年8月隨漁船同時進入釣魚台海域。(AP)
2016年8月、漁船団とともに尖閣諸島周辺海域に進入した中国海警局の船。(写真/AP通信)

冬の荒天のため、現在は出漁が制限されているが、仲間氏と金城氏は春になれば再び尖閣海域に戻る計画だ。そこは高級魚・アカマチ(ハマダイ)の宝庫だからだ。

日中間の火種がくすぶる2026年、石垣島の漁師たちが次に錨を上げた時、それが地域紛争の導火線となる懸念は拭えない。

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp

最新ニュース
【春節】中国人の旅行先トップは日本から「あの国」へ 日本は60%減の衝撃予測、外交摩擦がインバウンド直撃
「高給清掃員」契約のはずが戦場の最前線へ ロシア軍の「捨て駒」にされたバングラデシュ人男性の告白
関西初!「GREEN×EXPO 2027」常設公式店が神戸・三宮に1月30日オープン マスコット撮影会も
張又俠氏の失脚は「台湾海峡の危険信号」か?米在住の翁履中氏が指摘「中国は“滑走路”を整備中」、台湾が最も恐れる「一点」とは
もはや習近平氏の台湾侵攻を止める者はいないのか?張又侠氏ら軍トップ失脚の衝撃 研究者が読み解く中国軍の「次の一手」
台湾元総統・陳水扁一家の「3億ドル着服」疑惑、渦中の人物・余金宝氏の正体 国民党マネーを動かす「政商」の闇
「韓国国会はなぜ批准しないのか」トランプ氏、米韓協定を破棄、25%の報復関税を即時適用へ
【舞台裏】「自由はタダではない」米国の圧力に揺れる台湾野党 1.25兆台湾ドルの巨額軍事予算、国民党の苦悩と決断
中国共産党、1年で約100万人を処分 軍トップ張又俠氏も標的か 習近平氏が抱える「権力の焦り」と統治のジレンマ
高市首相、与党過半数割れなら「即刻辞任」を明言 衆院選へ背水の陣
ヤマザキビスケット、映画ドラえもん『新・のび太の海底鬼岩城』コラボ商品を2月から順次発売!「どらやき風ノアール」も登場
台北101を「命綱なし」で制覇 米オノルド氏の偉業とNetflix生中継が問う「死のリスク」と報道倫理
台湾華語教育、世界100カ所体制へ 徐佳青・僑務委員長が仙台の学習センター開所式に出席
米主導の「対中包囲網」に風穴 EU・カナダが中国と相次ぎ和解、揺らぐEVデカップリング
「日台友情の象徴」李琴峰氏や東山彰良氏の作品など3万冊 日台交流協会が寄贈、2026年開館の台南新国家図書館分館に収蔵へ
【舞台裏】台湾軍「サイバー部隊」に戦力空白の危機?中国の指名手配が示す実力と、組織再編の真実
トランプ氏、ペンギン画像で「グリーンランド執着」示す?英米研究者が指摘する「資源開発」の不都合な真実
2026年こそ「運命の分岐点」?習近平の焦燥とトランプ外交の空白が招く、台湾有事「3つの引き金」
中国、日本渡航制限の次は「台湾旅行解禁」か 憶測呼ぶ契約更新、台湾当局は「定例事務」と一蹴
【特別寄稿】映画『国宝』の狂気と高市早苗の覚悟 映画と政治が共振する「日台運命共同体」の行方
命綱なしで台北101の頂へ アレックス・オノルドはいかにして「恐怖」を飼いならしたか?王者が語る極限の心理と死生観
わずか1時間半!アレックス・オノルド、台北101の「完全フリーソロ」に成功 命綱なしで史上初の快挙
日本の帰化条件が大幅厳格化へ 自民党が提言案、居住要件「10年」に延長 離島の国有化も明記
婚姻減が少子化の主因、現金給付より住宅支援や同棲普及が有効 八代尚宏氏らが経済学的分析で提言
「関税交渉は台湾の主権を確立させた」日韓超えの好条件に韓国は焦燥、TSMC米国進出は「競争力の拡張」
「狙いはレアアースだけではない?」トランプ氏、2019年にグリーンランドと覚書締結済み 中国の支配網を脅かす「北極の宝庫」の全貌
NVIDIA「H200」ついに中国解禁か 中国「条件付き」で容認、アリババ・テンセントが40万個規模の争奪戦へ
独占インタビュー》「家がなくても歌えば生きられる」理系教師から路上の歌姫へ 古川愛理、セクハラ・ホームレス生活を越え 台湾人との絆で世界へ
2026年世界経済は緩やかな減速へ 日銀は「極めて緩慢な正常化」維持で年末金利1.25%・ドル円145〜150円を予測
「AI公務員」誕生へ?OpenAIが政府向け新戦略を積極展開、英韓など11カ国が既に署名
羽田でも仁川でもない!2025年「アジア最強ハブ空港」トップ10 1位はあの「LCC天国」、シンガポールも敗北
【演説全文】ゼレンスキー氏、NATOは「張り子の虎」欧州は「二枚舌」と痛烈批判 台湾の「プーチン支援」に不満
独占インタビュー》「離婚裁判」という人生最大の逆境を力に 元看護師の書道家・優、魂を揺さぶる筆致で世界へ
長渕剛「7 NIGHTS」最終公演、U-NEXTで2月23日独占配信へ
政府、外国人政策で新方針決定 「共生」に加え「秩序」を重視 税・保険料未納の審査反映や永住許可厳格化へ
「台湾人は鹿に優しい」へずまりゅう市議、中国人の暴行問題巡りマナーを称賛 「ルール守る外国人は大歓迎」
「トランプ氏の言葉は字面でなく『ビジネスロジック』で読め」林佳龍外相が語る、台湾防衛と対米交渉の核心
「金は払わない、欲しいのは支配権だ」トランプ氏がNATOと合意宣言、激怒するグリーンランド首相
Japan DX Week分析、名古屋展のリード獲得効率が東京を大幅に上回る 1小間平均649件
駅の食品廃棄物が「肥料」に進化 JR藤沢駅・リエール藤沢で循環型野菜を味わう「地のものフェア」2月5日より開催
政府、外国人共生策を加速 自治体の「アウトリーチ支援」制度化と空港業務の規制緩和を推進
「税・保険料未納はビザ更新せず」高市首相へ申し入れへ、自民が「不法滞在ゼロ」厳格化提言 土地取得規制や難民審査の短縮盛り込む
台湾奪取は「最も困難な軍事作戦」になる トランプ流の現実的戦略へ「日韓・比豪」と連携し台湾を守る、米国が第一列島線に最先端防衛力を配備
GINZA SIX、2026年春のリニューアル詳細を発表 「赤坂おぎ乃」新業態や「ミキモト」スキンケア旗艦店など注目5店舗が開業へ
【ダボス演説・完全要約】トランプ大統領、ダボスで70分の熱弁 グリーンランド問題や対中戦略など重要15項目まとめ