トップ ニュース 【特別寄稿】映画『国宝』の狂気と高市早苗の覚悟 映画と政治が共振する「日台運命共同体」の行方
【特別寄稿】映画『国宝』の狂気と高市早苗の覚悟 映画と政治が共振する「日台運命共同体」の行方 就任後、圧倒的な勢いで長年の外交的曖昧さを打破した高市早苗首相。(資料写真/AP通信)
新年を迎え、2025年の日本を振り返ると、ある奇妙な「共振」の中にいることに気づく。映画界では、吉田修一の小説を原作とする映画『国宝』が、3時間に及ぶ長尺ながら興行収入ランキングの首位を独走し、その残酷なまでに美しい舞台美学で日本人の集団的感性を揺さぶった。一方、政界では「日本の鉄の女」と称される高市早苗氏が首相に就任し、長らく続いた外交的曖昧さを雷のような勢いで打ち破っている。
一見無関係に見えるこの二つの事象は、実は同一の民族的ナラティブ(物語)を共有している。それは「宿命」との対決であり、ある「至高の価値」を守り抜くために、自己を焼き尽くすことも厭わない極限の意志だ。観察者として我々が見るべきは、舞台上の所作だけではない。海を越え、経済と軍事的威圧が交錯する権力のチェス盤を見通さなければならない。
孤独な「国宝」と、高市首相の覚悟 映画『国宝』が日本実写映画の過去20年の記録を塗り替えた鍵は、日本美学の最も神秘的な核心――職人精神における「孤独」を捉えた点にある。極道一家の出身である喜久雄(吉澤亮)と、歌舞伎名門の御曹司である俊介(横浜流星)が、血統と才能の狭間で繰り広げる半世紀の物語。それは単なる愛憎劇を超え、「凡人と天才」の壮絶な賭けである。主人公は伝統の純粋さを守るため、人間性を捨て、平凡な幸福を裏切り、自らを祭壇の犠牲とすることで初めて「国宝」という神の領域に到達する。「極致の成功は、極致の孤独を伴う」。この残酷な美学に、観客は息を呑んだ。
翻って、日本の政界でも今、別の「国宝級」の決断が演じられている。高市早苗首相は就任後、台湾海峡問題というタブーを直撃し、「台湾有事は日本有事」と言い切った。中国にとってこれは越えてはならないレッドラインだが、高市氏にとっては現実主義に基づく生存論理に過ぎない。 彼女がこれほど強硬でいられるのは、宿命を見抜いているからだ。もし台湾が守れなければ、日本の南の玄関口――与那国島や石垣島は脅威に直接晒される。彼女は日本の「自衛権」を再定義し、台湾封鎖を「存立危機事態」と見なす覚悟を決めている。 これは『国宝』の喜久雄が芸術へ執着する姿と重なる。核心的利益を守るため、彼女は戦後政治の禁忌を破り、自衛隊を法と実力の両面で、第一列島線における米軍の最強の後援者へと変貌させているのだ。
台湾にもたらされる「高市旋風」の配当とリスク 日本の南西諸島へのミサイル配備は、物理的な空間において台湾と防衛上の挟撃態勢を形成し、台湾東部防衛線の圧力を軽減する。また、高市氏がTSMCの熊本工場を強力に後押しする核心的な思考は「経済安全保障」にある。半導体技術と日本の国防を固く結びつけることで、日台のサプライチェーンはより緊密になり、日本には台湾海峡の平和を維持する動機が生まれる。この「利益の結束」こそが、どんな熱いスローガンよりも信頼できる保証となる。
しかし、極致の芸術が孤独を伴うように、強硬な政治も代償を伴う。日台関係の蜜月を喜ぶ一方で、その裏にあるリスクも冷静に見極めなければならない。第一に「圧力の転嫁」だ。日本が強硬姿勢を見せれば、中国は日本との全面衝突を避けつつ、その怒りの矛先を台湾へ向けるかもしれない。「隔山打牛(山越しに牛を打つ=間接攻撃)」のように、台湾への軍事ハラスメントや経済的打撃を強化する可能性がある。台湾は地政学的圧力の「放水路」となる覚悟が必要だ。第二に、日本国内の世論の揺らぎだ。高市氏の強硬路線は共感を呼んでいるが、財界の中国市場依存は依然として深い。もし中国の制裁で日本経済が傷ついた時、支持率は彼女の意志を支えきれるのか。これは巨大な未知数である。
「国宝」の教訓:一瞬の熱狂より、永続する仕組みを 映画『国宝』が示す教訓は、「不朽の作品を残してこそ、芸術家は勝利する」ということだ。台湾にとって、高市政権期は千載一遇の「戦略的ウィンドウ・ピリオド(窓が開いている期間)」である。口先だけの「日台友好」に満足せず、この機を逃さずに制度化された協力を勝ち取り、永続的な発展を形成すべきだ。具体的には、CPTPP加入への実質的なプロセスの推進、公式な情報共有メカニズムの確立、さらにはエネルギーや物資の相互融通協定まで踏み込むべきだ。政治家は変わるが、調印された協定、建設された工場、共有されたデジタルデータは簡単には消えない。
映画のラストで、喜久雄は喝采の中で頂点に立つが、同時に極致の孤独へと堕ちていく。一方、高市早苗氏は国際政治の荒波の中で、その鉄腕をもって日本のニューノーマルを定義しようとしている。台湾はこの壮大なドラマの脇役であってはならない。我々は喜久雄のような純粋な追求心を国家安全と産業地位への固執へと転化させ、同時に高市氏の実務的戦略を学び、「安全保障上の利益」と「経済的利益」を同じ金庫にロックすべきだ。国際政治というジャングルにおいて、台湾に最も必要なのは一時的な熱血ではない。『国宝』の役者たちのように、一瞬の輝きのために舞台裏で数十年続く、地味だが確実な修行である。我々自身が代替不可能な存在へと進化した時、北から吹く「高市旋風」は初めて、台湾を長治久安(長期的な安定)へと推し進める真の助力となるだろう。
(筆者は軍法務官、国防戦略研究者、博士候補生、弁護士試験合格者)
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