婚姻減が少子化の主因、現金給付より住宅支援や同棲普及が有効 八代尚宏氏らが経済学的分析で提言
少子化の主因は未婚化にあり、現金給付よりも住宅支援や同棲の普及が結婚促進に効果的であると経済学者が提言した。(写真/日本記者クラブ提供)
日本記者クラブで21日、「人口減少時代を生きる」シリーズの第6回会見が開かれ、昭和女子大学特命教授の八代尚宏氏と学習院大学教授の鈴木亘氏が「経済学から見た結婚行動の変化」と題して講演した。両氏は内閣府経済社会総合研究所のプロジェクトとして、25歳から49歳の独身・既婚男女計2万人を対象に行ったアンケート調査を基に、少子化の根本原因である「未婚化」の実態と有効な対策について、労働経済学および社会保障論の観点から分析結果を報告した。
八代氏は冒頭、日本の合計特殊出生率が1.15まで低下している現状に対し、夫婦の完結出生児数(夫婦出生率)は依然として1.9前後を維持していると指摘した。少子化の主因は夫婦が子どもを生まないことではなく、結婚しない人が増えていることにあるとし、既婚者への子育て支援だけでは未婚化対策につながらないと強調した。未婚化の要因として、かつて唱えられた「パラサイト・シングル説」を検証した結果、親と同居する男性は女性からの評価が低くなり、結婚確率が低下することがデータ上で確認されたという。また、高学歴女性は高学歴男性を求める傾向が強い一方、高学歴男性は学歴にこだわらず結婚するため、高学歴女性の相手が不足する「マッチングの不整合」が起きている現状も解説した。
鈴木氏は、結婚を希望する男女のマッチング成立の難しさを具体的な数値で示した。調査によると、女性が希望する条件(年収、年齢、学歴など)を満たす男性は全体の約13.3%に過ぎず、双方が条件を満たす「相互マッチング確率」は約3.8%という極めて低い水準にとどまった。この結果を受け、鈴木氏は自治体などが客観的なデータを提供し、自身の市場価値や需給バランスを認識させる情報提供が重要であると述べた。
政策の効果検証については、児童手当の増額や結婚祝い金といった金銭的支援は、結婚の意思決定に対する効果が限定的であるとの分析結果が示された。一方で、家賃補助や空き家の提供といった「住宅支援」は、費用対効果が高く、結婚を後押しする有効な手段であることが明らかになった。また、職場環境の影響に関し、テレワークの推進は出会いの機会を減らし結婚確率を下げる傾向があるものの、育児休業制度やフレックスタイム制が充実している企業に勤める若者は、将来の子育てと就労継続の見通しが立つため、結婚確率が高まることが分かった。
さらに八代氏は、欧州と比較して日本で極端に少ない「結婚前の同棲」に着目した。同棲経験のあるカップルは、ないカップルに比べて夫の家事協力度が高く、結婚に至る確率も上昇する傾向があるとした上で、事実婚や同棲をもっと柔軟に認める社会的土壌が必要だと提言した。また、行動経済学の視点から、現代の若者が結婚を「リスク」と捉える傾向が強まっていることや、かつて職場や地域にあった「おせっかい(ナッジ)」が機能しなくなっている現状が未婚化に拍車をかけていると分析した。
両氏は結論として、少子化対策の本丸は「結婚支援」にあるとし、個人の価値観に踏み込む難しさはあるものの、住宅支援や適切な情報提供、同棲への偏見解消など、結婚を望む層への障壁を取り除く政策への転換が必要だと訴えた。
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