想定外の宇宙滞在9か月!NASAの伝説的飛行士スニータ・ウィリアムズ氏が引退表明

退役海軍大佐であり、NASAのベテラン宇宙飛行士スニータ・ウィリアムズ氏が引退を表明した。(AP通信)
退役海軍大佐であり、NASAのベテラン宇宙飛行士スニータ・ウィリアムズ氏が引退を表明した。(AP通信)

国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞留により、世界中の注目を集めた米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士、スニータ・ウィリアムズ氏が正式に引退を表明した。

2024年から2025年にかけ、ボーイング社の新型宇宙船「スターライナー(Starliner)」のトラブルにより、当初1週間の予定が286日間に及んだミッションから帰還して約1年。この「予期せぬドラマ」の主役の一人であり、27年間にわたり宇宙開発の最前線に立ち続けたベテランが、その伝説的なキャリアに幕を下ろす。

海軍パイロットから宇宙へ、飛行時間3000時間の精鋭

​オハイオ州出身、現在60歳のウィリアムズ氏は、インド系の父とスロベニア系の母を持つ。海軍兵学校で物理学の学士号を取得後、海軍航空隊へ入隊。CH-46「シーナイト」のパイロットとしてキャリアをスタートさせ、湾岸戦争(砂漠の嵐作戦)などの海外任務に従事した。

彼女は回転翼機のスペシャリストとしても知られ、V-22オスプレイ、CH-53シースタリオン、AH-1Wスーパーコブラなど30機種以上の操縦資格を保有。1998年にNASAの宇宙飛行士候補に選抜される時点で、その飛行時間はすでに3,000時間を超えていた。最終階級は海軍大佐である。

女性最多の船外活動記録、宇宙でトライアスロンも

1998年にジョンソン宇宙センターで訓練を開始して以来、ウィリアムズ氏は計3回のISSミッションに従事した。宇宙滞在日数は通算608日に達し、これは現役最多のペギー・ウィットソン氏(695日)に次ぐNASA歴代2位の記録である。

米国のベテランNASA宇宙飛行士ウィリアムズ氏(左)はSTS-116ミッションに参加し、国際宇宙ステーションに滞在した。(DVIDSシステムより)
米国のベテランNASA宇宙飛行士ウィリアムズ氏(左)はSTS-116ミッションに参加し、国際宇宙ステーションに滞在した。(DVIDSシステムより)

特筆すべきは船外活動(EVA)での功績だ。その累積時間は62時間24分に及び、女性宇宙飛行士としての世界記録を保持している。また、その並外れた身体能力とタフネスでも知られ、2007年には宇宙空間で初めてマラソン(42.195km)を完走。2012年にはエアロバイクやウェイトトレーニング(水泳の代替)、ランニングマシンを組み合わせた「宇宙トライアスロン」を完遂するなど、ユニークな記録も打ち立ててきた。

新任のジャレッド・アイザックマンNASA長官は声明で、「有人宇宙飛行のパイオニア」として彼女を称え、その栄誉ある引退を祝福した。

スターライナーの不具合と「286日間の漂流」

​彼女のキャリアの最後を飾ったのは、皮肉にも世界的なニュースとなった「想定外の長期滞在」だった。2025年時点の話となるが、当時、ウィリアムズ氏はバリー・ウィルモア氏と共にボーイング「スターライナー」の有人飛行試験に参加した。当初はISSに1週間滞在して帰還する計画だったが、ドッキング直後に推進器の故障やヘリウム漏れが発覚。安全な帰還が保証されない状態となり、2人は約9ヶ月(286日)もの間、宇宙での待機を余儀なくされた。

9ヶ月にわたり宇宙ステーションに取り残されたNASA宇宙飛行士のウィリアムズ氏(右)とウィルモア氏。(AP通信)
9ヶ月にわたり宇宙ステーションに取り残されたNASA宇宙飛行士のウィリアムズ氏(右)とウィルモア氏。(AP通信)

最終的にNASAはスターライナーを無人で帰還させる苦渋の決断を下し、2人は2025年3月、救援に向かったスペースXの「クルードラゴン」で地球に帰還した。長期間の微小重力環境への適応から、帰還後は歩行機能の回復などリハビリテーションの課題も懸念されたが、無事に任務を完遂した。なお、共にミッションに参加したウィルモア氏は、一足先の昨年8月に25年のキャリアを終え引退している。

不透明なスターライナーの未来

テストパイロットを務めた2人のレジェンドが去る一方、ボーイング「スターライナー」の先行きは依然として不透明だ。 NASAは、次回のミッションを再び「無人飛行試験」に戻す方針を示している。技術的な懸念が完全に払拭されるまで、新たな宇宙飛行士を危険に晒すことは避ける考えだ。
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編集:佐野華美 

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