中国外務省(外交部)は20日、トランプ米大統領が設立準備を進めている「平和委員会(Peace Committee)」への参加招待を受けたことを正式に認めた。ロイター通信によると、米政府はイスラエル・パレスチナ紛争の解決に向けたこの世界的イニシアチブを推進するため、すでに数十カ国へ招待状を送付しているという。つい先日、米国との貿易休戦協定に合意したばかりの中国政府だが、この招待を受け入れるか否かについては明確な態度を示していない。
国連形骸化への懸念と「静観」する各国 いわゆる「平和委員会」は、トランプ氏が掲げる「戦後ガザ」ビジョンの一環である。同氏はすでに各国へ平和理事会への参加を呼びかけており、その対象は英・仏・カナダ・サウジアラビアといった米国の同盟国にとどまらず、ロシアやベラルーシなど、伝統的に西側陣営とは一線を画す国々にも及んでいる。
しかしロイター通信の報道によれば、各国政府の反応は今のところ「静観」が多数派だ。外交筋からは、トランプ氏のこの手法が既存の国連(UN)の権威を削ぎ落とすことになりかねないと懸念する声も上がっている。
この「平和委員会」は、まずガザ紛争の解決を起点とし、将来的には他の国際情勢の処理にも権限を拡大する構想だ。特筆すべきは、その運営形態である。提案されている理事会では、トランプ氏が「終身議長」を務める。加盟国は3年の任期を得るために1億ドル(約150億円)を拠出する必要があり、「永久会員権」を得るには10億ドル(約1500億円)の支払いが求められるという、異例のビジネスモデルが採用されている。
中国外務省の反応「招待は受け取った」 20日の定例記者会見において、中国外務省の郭嘉坤(カク・カコン)報道官は「中国側はすでに米国側からの招待を受け取っている」と認めた。しかし、ロシアのRIAノーボスチ通信の記者から「中国はこのイニシアチブに対してどのような立場をとるのか」と問われると、明確な回答を避けた。
また、日本のNHK記者が「トランプ氏がベネズエラに対して強硬措置をとり、グリーンランド併合をちらつかせていることについて、中国はどう評価するか」と質問した際も、郭報道官はコメントを拒否した。その一方で郭氏は、過去1年間の米中関係が起伏に富んでいたことに触れつつ、「全体的な動的な安定を実現することは、中米両国国民の共通利益であり、国際社会の共通の期待でもある」と強調。「中国側は米国側と共に、中米関係の安定的発展を推進したい。同時に、自身の主権、安全、発展の利益は断固として守る」と、従来の外交的定型句を繰り返すにとどまった。
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トランプ支配下の「3層構造」 平和委員会の全貌 トランプ氏の仲介により2025年10月10日に発効した「ガザ和平計画」は、ハマスとイスラエルの人質交換と停戦を促した。今回組織される「平和委員会」は、同計画の第2段階における核心部分であり、ガザの再建と統治を監督する「新たな国際移行機関」と位置づけられている。その主眼は「統治能力の構築、地域関係、再建、投資誘致、大規模な資金および資本の動員」にあるが、未解決の課題も多い。
判明している委員会の構造は、権力が上から下へと及ぶ厳格な「3層構造」のピラミッド型である。
【第1層:トップ】創設執行委員会(Founding Executive Committee) 意思決定を主導し、財政権を掌握し、戦略的ビジョンを策定する最高機関。
マルコ・ルビオ(米国務長官) スティーブ・ウィトコフ(トランプ氏の中東特使) ジャレッド・クシュナー(トランプ氏の娘婿) トニー・ブレア(元英首相) マーク・ローワン(米億万長者・投資家) アジェイ・バンガ(世界銀行総裁) ロバート・ガブリエル(ホワイトハウス国家安全保障副補佐官)
【第2層:ミドル】上級代表事務所 ブルガリアの元外相ニコライ・ムラデノフ氏が率い、ハマスの統治からパレスチナ自治政府(PA)出身者による「パレスチナ技術官僚(テクノクラート)政府」への移行を監督する実務レベル。
【第3層:ボトム】ガザ行政管理国家委員会(NCAG) 「パレスチナ技術官僚政府」によって構成され、上層部の命令を執行し、日常の行政事務を処理する。
米国のトランプ大統領の長女、イヴァンカ・トランプ氏(左)と夫のジャレッド・クシュナー氏が、ベゾス氏の結婚式に招待された。(写真/AP通信提供) カタールの衛星放送局『アルジャジーラ』は、この「創設執行委員会」のメンバー構成について、億万長者、不動産王、そして親イスラエルのタカ派で埋め尽くされており、パレスチナ人が意思決定の中枢から完全に排除されていると指摘している。
ガザの政治アナリスト、イヤド・アル=カラ氏は、これは平和計画などではなく、ガザに対する「企業の合併・買収(M&A)」に過ぎないと批判する。 「トランプ氏はガザを『故郷』としてではなく、新しい取締役会を必要としている『倒産した会社』として見ている。彼は戦略的な決定権を投資家や外国の政治家に委ね、国家主権をビジネスベンチャーに変えてしまった」
米国のドナルド・トランプ大統領氏とマルコ・ルビオ国務長官氏。(写真/AP通信提供)
トランプ氏が「永久議長」?露骨な「会員権ビジネス」モデル トランプ氏の「平和委員会」からは、濃厚な「課金ゲーム(Pay-to-Win)」の臭いが漂う。一般加盟国の任期はわずか3年で、契約更新はトランプ氏の意向次第。その運営モデルは国連とは似ても似つかず、トランプ氏が絶対的な株式を保有する「私企業」のそれに近い。
これに対し、米ホワイトハウスは「ブルームバーグ」の報道を「誤解を招くもの」と反論。平和理事会への参加に最低出資額の規定はないとしている。ホワイトハウスはX(旧Twitter)上で、「平和、安全、繁榮に対し高いコミットメントを示したパートナー国にのみ、永久会員資格を提供する」と釈明した。
2026年1月14日、米国のドナルド・トランプ大統領氏がホワイトハウスの大統領執務室(オーバルオフィス)で発言した。(写真/AP通信提供)
「独裁者と同盟国の闇鍋」 招待された国々は? 『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、「平和委員会」への招待状は1月16日から順次発送されているが、その顔ぶれは「独裁者と同盟国のごった煮」の様相を呈している。英・仏・カナダ・サウジアラビアといった米国の長年の同盟国に加え、ロシア、ベラルーシなど、伝統的に西側陣営ではない国々も名を連ねている。
現在までに招待を受け取ったとされる国は以下の通りである。 ロシア、ベラルーシ、ベトナム、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、カザフスタン、キプロス、エジプト、ハンガリー、インド、イタリア、ヨルダン、ウズベキスタン、パキスタン、パラグアイ、ルーマニア、トルコ、サウジアラビア、ギリシャ、モロッコ、スロベニア、ポーランド、イスラエルなど。
同紙が組織規定を検証したところ、トランプ氏は「平和委員会」をガザに限らず、世界各地の紛争に介入させる意図を持っているようだ。批判的な専門家たちは、トランプ政権が、彼が常々「リベラル偏重で無駄が多い」と非難してきた国連に対抗し、米国主導の代替組織を構築しようとしていると見ている。
2025年9月23日、米国のドナルド・トランプ大統領氏が、国連本部で開催された第80回国連総会で演説した。(写真/AP通信提供)
習近平だけでなく、プーチンも招待 「平和委員会」の計画下では、米露関係にも奇妙な熱気が生じている。ロシア大統領府(クレムリン)は19日、プーチン大統領がトランプ氏からの招待を受け取ったことを確認した。ペスコフ大統領報道官は、モスクワは「提案のあらゆる詳細を研究中」であり、米政府との更なる協議を望んでいると述べた。
『フィナンシャル・タイムズ』紙は、この招待状が意味するものは大きいと分析する。ロシア・ウクライナ戦争が膠着して4年が経過し、モスクワが米国主導の和平案に強硬な抵抗姿勢を示しているにもかかわらず、トランプ氏は依然としてプーチン氏との友好関係維持を熱望していることを示唆しているからだ。一方、プーチン氏側も呼応しているようだ。トランプ氏がベネズエラのマドゥロ大統領逮捕やイランの反政府デモ支持など、ロシアの友好国に対し強硬な外交カードを切っているにもかかわらず、クレムリンは米国への批判を抑制しており、プーチン氏もまたトランプ氏との関係維持を模索していることがうかがえる。
さらに、物議を醸しているトランプ氏の「グリーンランド購入・併合計画」について、ペスコフ報道官は異例の高評価を与えた。「国際的な専門家の中には、グリーンランド問題の解決はトランプ氏を歴史——米国史だけでなく世界史——に刻むことになると考える者もいる」とし、「良し悪しは別として、そうした専門家の見解に異を唱えるのは難しい」と付け加えた。この発言は、プーチン氏からトランプ氏へ差し出された「オリーブの枝(和解の印)」と見なされている。
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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領氏が、外国首脳に電話で挨拶した。(写真/AP通信提供)
欧州・カナダ・イスラエルからの猛反発 トランプ氏は広範囲に招待状をばら撒いたものの、一部の同盟国からは疑念の声が噴出している。フランスや隣国カナダは、国連を迂回し、かつ商業色の強いこの組織に対し、強い留保を示している。欧州諸国は資金がトランプ氏一人に管理されるモデルを「到底受け入れられない」としており、パートナー国と共に法的枠組みを精査し、集団ボイコットも辞さない構えだ。
情報筋によると、フランスは招待に応じない方針だという。マクロン大統領に近い関係者は、同理事会の規定が「ガザ再建という単一の枠組みを超越」し、他の地政学的問題に介入しようとしていると指摘。フランス外務省も声明を発表し、国連へのコミットメントを再確認するとともに、国連こそが多国間主義の礎石であると強調した。フランスは、トランプ氏の新組織が国際法や主権平等の原則を脅かし、「強権政治と恣意的な行動」を招きかねないと警告している。
2025年9月24日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領氏が、ニューヨークで開かれたグローバル・シチズン賞の授賞式で演説した。(写真/AP通信提供) フランスの強硬な拒絶に対し、カナダは「参加はするが、金は出さない」という戦略をとった。規定にある「10億ドルの寄付で永久会員権」という条項について、カナダ政府筋はAFP通信に対し「カナダは理事会の席を買うつもりはないし、現時点でそのような要求も受けていない」と明言した。しかし、課金システムへの懸念はあるものの、マーク・カーニー首相は招待を受け入れる意向を示している。消息筋によれば、カーニー首相は「プロセスを内部から誘導するためには、交渉のテーブルに席を持つことが不可欠」と考えているという。ただし、規定には明確化すべき条項が多々あるとも強調している。
最も意外な抵抗勢力となったのは、中東におけるトランプ氏の最大の盟友、イスラエルだ。ネタニヤフ首相官邸は17日、「平和理事会傘下のガザ執行委員会におけるメンバー構成の発表は、イスラエル側と調整されたものではなく、我々の方針に反する」との声明を発表し、不快感を露わにした。
2025年11月10日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相氏が、エルサレムにあるイスラエル国会(クネセト)で議員らに向けて演説した。(写真/AP通信提供)