「自衛隊の介入はさせない」中国軍・台湾包囲演習の真の標的は日米同盟だった ハイマース売却が招いた「A2/AD」の現実

淡江大学戦略研究所の馬準威助理教授は、風傳媒の番組『下班国際線』にて、中国が2025年末に実施した軍事演習に言及した。馬氏は、演習の目的が台湾側の反応や周辺データの収集だけでなく、中国が台湾を封鎖し、外部の米軍や日本軍の介入を阻止できるというメッセージを伝える狙いがあったと述べた。(写真/陳品佑撮影)
淡江大学戦略研究所の馬準威助理教授は、風傳媒の番組『下班国際線』にて、中国が2025年末に実施した軍事演習に言及した。馬氏は、演習の目的が台湾側の反応や周辺データの収集だけでなく、中国が台湾を封鎖し、外部の米軍や日本軍の介入を阻止できるというメッセージを伝える狙いがあったと述べた。(写真/陳品佑撮影)

2025年末、台湾周辺で実施された中国人民解放軍による大規模演習。その背景には、トランプ米政権による巨額の武器売却と、日米同盟の介入を阻止しようとする中国の焦りがあった。淡江大学戦略研究所の馬準威・助理教授が、その戦略的意図を読み解く。

異例の規模で行われた対台湾軍事演習

中国共産党(以下、中国)は2025年12月29日より、台湾周辺の複数の海空域において大規模な合同軍事演習を実施した。わずか3日間で軍用機200機以上、艦艇および海警船約30隻を投入。さらに台湾の南北沖合へ向けロケット弾計27発を発射するなど、地域情勢に深刻な衝撃を与え、国際社会の注目を集めた。

この演習の背景と意図について、淡江大学国際事務・戦略研究所の馬準威(マ・ジュンウェイ)助理教授は、台湾メディア風傳媒(Storm Media)』の番組「下班国際線」に出演し、演習の深層を分析した。馬氏は、今回の演習には台湾の反応や周辺データの収集だけでなく、「中国軍は台湾を封鎖できるだけでなく、外部からの米軍や自衛隊の介入も遮断できる」という強力なメッセージが込められていると指摘する。

米国にとっての「台湾カード」と戦略的価値

馬氏は、中国が米国の台湾問題介入を極度に嫌う一方で、米国にとって台湾は対中交渉における極めて有効な「カード」であると分析する。中国が台湾問題を最重要視していることを米国は理解しており、交渉の際には度々「台湾カード」を切ることで有利な立場を作ろうとする。

さらに、現在の米国の政治エリートやトランプ大統領の幕僚たちは、「西太平洋における米国の覇権維持には、台湾という地政学的要衝が不可欠である」との認識を強めているという。

防御兵器「ハイマース」になぜ中国は激怒したのか

馬氏は、2025年の米国家安全保障戦略報告書の発表以降、米国が台湾をインド太平洋のハブ(結節点)と位置づけ、その軍事能力向上による対中抑止を目指していると指摘する。トランプ政権はこの方針に基づき、昨年12月に大規模な対台湾武器売却を行った。

今回注目されたのは高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」だ。射程約300キロのハイマースは、アモイ、福州、漳州といった中国沿岸都市をカバーできる。しかし、これらの都市は中国にとって軍事的最重要拠点ではないため、ハイマースはあくまで「専守防衛(守勢)」の兵器である。

それにもかかわらず、なぜ中国はこれほど激しく反応したのか。馬氏はその理由を「売却額の規模」にあると見る。

2026年1月13日、アメリカのドナルド・トランプ大統領
馬準威氏は、ドナルド・トランプ大統領(写真)の第2期政権における初回の武器売却額が114億ドルに達し、すでに第1期政権の記録に迫る勢いであると指摘した。(写真/AP通信提供)

馬氏のデータによれば、トランプ政権第1期(4年間)の対台湾武器売却総額は過去最高の143億ドルに達した。対して、台湾支持を鮮明にしていたバイデン政権下での売却額は20億~30億ドル程度にとどまっていた。しかし、トランプ政権第2期の初回売却だけで114億ドルに達し、第1期の4年分に匹敵する勢いを見せたのだ。 (関連記事: 李逸洋・駐日代表、中国軍の大規模演習に言及 大晦日に「台湾の強靭化と世界平和」を祈念 関連記事をもっと読む

中国側の試算では、今後の売却総額はさらに増加すると見られる。防御用兵器であっても、台湾の防衛力強化は、将来的な中国による台湾統一(武力侵攻)のコストを劇的に高めることになる。「統一は達成可能な目標である」「台湾問題はコントロール可能である」という中国国内向けのナラティブ維持が困難になるため、中国当局は強硬な反応を示さざるを得なかったのである。

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