「支援とはゴールまで運ぶことではない」三重大病院通訳・アラウコ氏が入管庁で提言 「過剰な介入」への懸念と自立の形

東京出入国在留管理局。(写真/黃信維撮影)
東京出入国在留管理局。(写真/黃信維撮影)

出入国在留管理庁は2025年10月29日、多文化共生施策の一環として関係者ヒアリングを実施した。この場で、三重大学医学部附属病院のスペイン語医療通訳士であり、「四日市市外国人防災リーダーズ」の代表も務めるアラウコ・マリア氏が登壇し、外国人当事者および支援者の双方の視点から、医療・防災分野における課題と展望について意見を述べた。

医療通訳は「チーム医療」の一員

ペルー生まれの日系3世であるアラウコ氏は、11歳で来日。日本語が全く話せない状態から日本の公教育に適応した自身の経験を持つ。現在は三重県内唯一の特定機能病院である三重大病院に勤務し、年間4600件以上(令和5年度実績)の外国人患者対応を行っている。

業務は診察室での通訳にとどまらず、手術室や病棟でのインフォームド・コンセント、さらには未収金対策としての支払い相談まで多岐にわたる。アラウコ氏はヒアリングの中で、医療通訳士が単なる「言葉の変換者」ではなく、安全な医療を実現するための「医療チームの一員」であると強調。通訳支援がボランティアではなく、診療報酬などの公的制度として正当に評価される仕組みの必要性を訴えた。

「支援される側」から「守る側」へ

防災分野での取り組みも注目される。アラウコ氏は2022年に「四日市市外国人防災リーダーズ」を立ち上げた。ベトナム、ブラジル、ペルーなど9カ国出身の15名で構成され、「やさしい日本語」を共通言語に地域の防災訓練への参加や多言語情報発信を行っている。2025年にはメンバーが四日市市消防団の「機能別団員(訓練指導班)」として辞令を受けるなど、地域防災の担い手として活動の幅を広げている。

アラウコ氏は、外国人住民がただ支援されるだけの存在ではなく、知識を身につけ「支援する側」に回ることの重要性を説いた。平時から地域住民と顔の見える関係を築くことが、災害時に「誰ひとり取り残さない」対応につながると指摘する。

ゴールまで運ぶのが「支援」ではない

外国人支援のあり方について、アラウコ氏は「過剰な手助けは、かえって本人の自立心を損なう可能性がある」と警鐘を鳴らす。

「支援の目的は、ゴールまで連れて行くことではなく、日本人と同じスタートラインに立てるように補うことだ」。アラウコ氏はそう提言した上で、日本のルールや文化を尊重する「郷に入っては郷に従え」の精神も必要であるとし、支援する側とされる側の双方が歩み寄る「相互尊重」こそが、真の多文化共生社会の鍵であると結んだ。 (関連記事: 【解説】在留外国人395万人突破の裏で進む「厳格化」 人手不足と排外感情の狭間で揺れる日本社会 関連記事をもっと読む

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​​編集:小田菜々香​

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