米中貿易戦争が一時的な休戦を迎えたのも束の間、米欧間で新たな関税戦争の懸念が高まっている。トランプ米大統領によるデンマーク領グリーンランド購入計画への執着が、同盟国である欧州諸国への関税圧力へと発展しているためだ。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は18日、欧州連合(EU)が米国に対し、930億ユーロ(約14兆円)規模の報復関税や、米国企業のEU市場へのアクセス制限を検討していると報じた。これは、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国に対するトランプ氏の脅威への対抗措置であり、大西洋横断関係は過去数十年で最も深刻な危機に直面している。
デンマークへの圧力と米国の関税予告
トランプ大統領は17日夜、デンマークが米国のグリーンランド買収案を拒否していることへの報復として、2月1日よりデンマーク、英国、ノルウェーを含む欧州8カ国からの輸入品に対し10%の追加関税を課すと宣言した。さらに、デンマークが買収に同意しない場合、6月1日には関税率を25%へ引き上げる構えも見せている。
トランプ氏の強硬姿勢の背景には、対象となる8カ国が先週、グリーンランドへ部隊を派遣し軍事演習を行ったことがあるとされ、これを同氏は「容認できない」と判断した模様だ。
EUの対抗策:930億ユーロの関税と「反威圧手段」
FT紙が引用した欧州当局者の話によると、EU側が検討している対抗措置は現在議論の段階にある。今週スイスで開催されるダボス会議(世界経済フォーラム)にて、欧州首脳陣がトランプ氏と対峙する際の交渉材料とする狙いがある。
しかし、欧州各国はNATO内部に決定的な亀裂が生じることを懸念しており、欧州の安全保障や存立そのものを脅かさないような妥協案も模索されている。多くの加盟国は、直接的な報復措置に出る前に、まずは米政府との対話を通じて事態の沈静化を図るべきだと主張している。
同紙によれば、EUの対米関税リストは昨年すでに策定されていたが、全面的な貿易戦争を回避するため、実施は2月6日まで保留されていた。18日に行われたEU27カ国大使級会合では、この関税リストの再開に加え、「反威圧手段(Anti-Coercion Instrument, ACI)」の発動も議論された。これは米国企業によるEU域内市場への参入を制限する強力な措置である。
ある欧州外交官は、「事態が悪化し続ければ、我々には明確な対抗手段がある」と述べつつ、トランプ氏の手法を「マフィアのようなやり方」と批判した。一方で、「我々は冷静さを保ち、彼に引き下がる機会を与えることも呼びかけている」とし、いわゆる「飴と鞭」の姿勢で臨む方針を示唆した。
仏独の連携とダボス会議での攻防
フランス政府は、2023年に採択されたものの未だ使用されていないACIの活用を強く求めている。このメカニズムには投資制限条項が含まれており、米国の巨大テック企業によるEU内でのサービス提供を制限することが可能だ。仏政府関係者によると、フランスとドイツは対応策の調整を進めており、両国の財務相は19日にベルリンで会談後、ブリュッセルでの欧州財務相会議に出席する予定である。
また、19日午後には西側諸国の国家安全保障担当補佐官らがダボスで会合を開く。当初はウクライナ情勢や和平交渉が焦点となる予定だったが、急遽グリーンランドを巡る危機への対応に時間を割くことになりそうだ。
トランプ氏は21日、22日にダボス会議に出席する予定で、ウクライナ支援に関する議論に加え、フォン・デア・ライエン欧州委員長を含む欧州首脳との個別会談も予定されている。
デンマークのフレデリクセン首相は、「我々は協力を望んでおり、対立を求めているわけではない」と述べ、事態の収拾を呼びかけている。
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編集:柄澤南
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