「軍なきNATO加盟国」アイスランドに転機 ロシアの脅威とトランプ氏の圧力で防衛見直しへ

2025-07-15 13:57
2020年10月26日。アメリカ空軍第493遠征戦闘機中隊のF-15C/Dイーグル戦闘機がアイスランドのケプラヴィーク空軍基地で定例任務を実施している。(画像提供:US Air Force)
2020年10月26日。アメリカ空軍第493遠征戦闘機中隊のF-15C/Dイーグル戦闘機がアイスランドのケプラヴィーク空軍基地で定例任務を実施している。(画像提供:US Air Force)

北米および欧州のプレート境界に位置するアイスランドは、NATOの創立メンバーでありながら常備軍を持たない唯一の国である。この島国の人口は40万人にも満たず、長らく米国に防衛を依存してきた。しかし、ロシアの潜水艦が接近し、米国のトランプ大統領がグリーンランドに狙いを定める中、アイスランドは防衛問題の再検討を余儀なくされている。現在、軍事支出の増加、情報機関の設立、さらにはEU加盟交渉の再開までを模索している。

過去数十年、アイスランドの人々は穏やかな生活を送っていた。「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、冷戦中にアイスランドがNATOのソ連海軍監視基地としての役割を担っていたものの、戦争の脅威に対してあまり懸念を持っていなかったと指摘している。しかし、今日アイスランドが直面するリスクは増大しており、気候変動が北極海路を通行可能にする中、軍事活動が頻繁化。さらに、トランプ政権と欧州間の対立の高まりも、アイスランドにとっての圧力となっている。

米国は、アイスランドとグリーンランドを国家安全保障の重要拠点と見なしている。グリーンランドは、ロシアが米国を攻撃する際に通過する可能性のある航路に位置し、ミサイル警戒および防衛システムの一環を成している。一方、ロシアの潜水艦が大西洋に進入する際に通過する「GIUKギャップ」(グリーンランド、アイスランド、英国間の海域)を監視するために、アイスランドは大西洋中脊の高地に位置しており、潜水艦の浮上した際に容易に検出することが可能である。

2020年10月20日。第493遠征戦闘機飛行隊所属のF-15C/Dイーグル戦闘機が、アイスランドのケフラヴィーク空軍基地で例行の航空任務を実施し、NATOの航空警戒活動を支援。(画像:米空軍)
2020年10月20日。第493遠征戦闘機飛行隊所属のF-15C/Dイーグル戦闘機が、アイスランドのケフラヴィーク空軍基地で例行の航空任務を実施し、NATOの航空警戒活動を支援。(画像/米空軍)

防衛の「外注」

アイスランドは人口約40万人だが、地理的に重要な位置にあるため、米軍はこの島をロシア潜水艦の動向を監視するために利用してきた。「エコノミスト」は、このためアイスランドが防衛を「外注」できたと指摘している。しかし、欧州が再武装を始め、米国が「便乗者」国に圧力をかける中、アイスランドもまた圧力を感じている。外相グンナースドッティルは「彼らは確かに我々に圧力をかけている」と述べた。アイスランドの国防支出は近年、GDPの0.2%に過ぎない。

米国とアイスランドの軍事関係は第二次世界大戦にまで遡る。当時、米軍はナチス・ドイツからの占領を防ぐために駐留し、ソ連への物資輸送のための基地として利用していた。NATOが1949年に設立された際、米国はアイスランドが海上交通路を保護する位置にあると認識し、加盟を促した。1951年以降、米国とアイスランドは防衛協定を結び、米軍は2006年まで駐留していたが、テロとの戦争に注力するため撤退した。 (関連記事: 習近平が台湾侵攻なら「NATO諸国はロシアと戦う羽目に」 NATO事務総長が最悪シナリオを想定 関連記事をもっと読む

冷戦後、アイスランドはNATO内での戦略的役割を維持し、旧ユーゴスラビアのNATOミッションに医療スタッフを派遣し、アフガニスタンの主要な民間空港の運営を担当していた。国内では、簡易爆発装置(IED)を対象とした年次訓練演習などのNATO演習を定期的に開催している。これらのIEDは、イラクやアフガニスタンの戦場で米軍や同盟軍にとって重大な脅威であったと、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は伝えている。元NATO高官のシェイは「アイスランド人は常に自分たちが『便乗者』ではないことを証明しようとしてきた」と話す。

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