舞台裏》台湾海峡有事でフィリピンが要衝に 台湾は元空軍「トップガン」を派遣

2025-07-12 20:58
第一列島線を守る上で、フィリピンは重要な国の一つだ。写真は、米軍とフィリピン陸軍の合同演習の様子。(AP通信)
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海洋委員会が主催する「2025年台湾海洋国際フォーラム」が7月2日と3日に台北市で開催された。会場には15か国から官僚、100名以上の海洋政策決定者、シンクタンク研究員、産業界のリーダーらが集結。初日の議題はインド太平洋地域の海域安全保障で、過去に英国海軍に台湾海峡通過を指示したことで知られる元英国防相ギャビン・ウィリアムソン氏も登壇し、高層対話に加わった。

中でも注目されたのは初日の第二セッション。台湾とフィリピンの「第二海軍」を担う重要人物が一つのソファに並んで着席し、そのすぐそばにはフィリピン海軍の少将も登壇するという、極めて珍しい光景が繰り広げられた。

2025年4月21日、フィリピン大統領府は過去35年にわたり続けてきた台湾との交流制限を緩和する行政メモを策定。新方針により、官僚が一般パスポートで肩書きを伏せて台湾を訪問できるようになった。これに対して中国は強く反発し、フィリピン政府に対して「台湾問題で火遊びをやめるように」と厳しい警告を発していた。

それにもかかわらず2か月後、フィリピンの現役高官3人が台北入り。フォーラム出席に加え、その前日には台湾の総統府を訪れて頼清徳総統と会見した。この3人の目的と役割が注目されている。

20250705-総統頼清徳7月1日接見2025台湾海洋国際フォーラムの参加者、フィリピンの3名の重要現役官員も含まれている。(総統府提供)
総清徳総統が7月1日に「2025台湾海洋国際フォーラム」の参加者と面会し、フィリピンの現役高官3名も含まれていた。(総統府提供)

中国の警告を無視 台湾とフィリピン「第二海軍」が同台対話

海洋委員会の発表によると、来台したのは西フィリピン海のフィリピン沿岸警備隊広報官ジェイ・タリエラ氏、同海域のフィリピン海軍広報官ロイ・ヴィンセント・トリニダード少将、フィリピン国家安全保障会議副事務総長ミッシェル・アンドレ・P・デル・ロサリオ氏の3人。それぞれ学者や専門家の肩書きで登壇したが、トリニダード少将は「フィリピン政府は防衛外交において断固たる姿勢で臨んでいる」とし、海洋問題や地域連携への取り組みを強調した。

台湾海洋国際フォーラムは2020年に初めて開催され、2021年は新型コロナの影響で中止、今回が5回目の開催となる。タリエラ氏も今回が初参加ではないが、前回2023年の高雄開催では学者座談会への参加にとどまっていた。今回は特別講演に登壇し、台湾の黄宣凱・海巡署艦隊部長とともに討論に参加した。

なお、台湾の海巡署艦隊部は既に海軍司令部の年次訓練や演習に組み込まれており、「第二海軍」としての位置づけを担っていることが明らかにされた。

20250705-2025台湾海洋国際フォーラム7月2日に台北で開催、フィリピン沿岸警備隊西フィリピン海広報官タリエラ(右)と台湾海洋委員会海巡署艦隊部長黄宣凱(中)が同じソファで交流。(2025台湾海洋国際フォーラムライブより)
フィリピン沿岸警備隊の西フィリピン海広報官タリエラ氏(右)と、台湾海洋委員会海巡署艦隊部長の黄宣凱氏(中央)が同じソファで交流した。(「2025台湾海洋国際フォーラム」のライブ配信より)

中国のグレーゾーン戦術 台湾とフィリピンの苦境

近年、中国による「グレーゾーン」での侵略行動が頻発しており、台湾の「第二海軍」もその最前線に立たされている。このような動きは台湾海峡にとどまらず、南シナ海を含む周辺諸国にも広がっている。フィリピン沿岸警備隊の広報官ジェイ・タリエラ氏は、中国が南シナ海において国際的な規範を顧みず、大規模な拡張を軍事力で推進していると指摘。経済水域(EEZ)への侵入は、国際海事秩序を揺るがし、地域の不安定化を招いていると警鐘を鳴らした。