インタビュー|台湾出身、フリースタイルバスケットボールプレイヤー・彭永彣選手

2025-07-12 20:15
台湾出身のフリースタイルバスケットボール選手、彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学ぶ傍ら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験している。 (写真/黄信維撮影)

台湾出身のフリースタイルバスケットボールプレイヤー・彭永彣(ペン・ヨンウェン)選手は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学ぶために来日した。渡日の主目的はバスケットボールではなく教育だったが、運動に関する身体の理解や子どもとの接し方について深く学べたことは、現在の活動においても大きな財産になっていると語る。

台湾出身のフリースタイルバスケットボールプレイヤー・彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学びながら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験してきた。黃信維
台湾出身のフリースタイルバスケットボール選手、彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学ぶ傍ら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験している。(写真/黄信維)

在学中は、早稲田大学のフリースタイルバスケットボールサークルにも参加。名門大学の自主性の高い学生たちとともに練習するなかで、日本独特の緻密な練習文化を体験したという。とくに印象深かったのは、パフォーマンスでの「揃える美しさ」へのこだわり。手や足の位置まで厳密に合わせる様子に感銘を受けた。

思い出深い体験として挙げたのが、早稲田大学の学園祭でのステージ出演だ。大規模なイベントに立つ機会は、サークルに所属していたからこそ得られたものであり、学生時代のハイライトとなった。

台湾出身のフリースタイルバスケットボールプレイヤー・彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学びながら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験してきた。黃信維
台湾出身のフリースタイルバスケットボール選手、彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学ぶ傍ら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験している。(写真/黄信維)

日本と台湾のバスケットボール環境を比較すると、彭選手は「日本は団結力が強く、文化祭前には全員がスケジュールを調整して毎日練習する。その集中力は台湾にはあまり見られない」と話す。自身は早稲田大学の正規学生ではなかったため、練習時間の調整には苦労したが、周囲の支えによって乗り越えたという。

3年間の日本生活について、彭選手は全体的に満足していると振り返る。ただし、就職活動では理想と現実のギャップもあったという。それでも、日本滞在中に壁画ペイントなど、バスケットボール以外の分野にも挑戦するきっかけを得られたことは、大きな成果だった。

台湾出身のフリースタイルバスケットボールプレイヤー・彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学びながら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験してきた。黃信維
台湾出身のフリースタイルバスケットボール選手、彭永彣(ペン・ヨンウェン)氏は、東京リゾート&スポーツ専門学校で幼児体育を学ぶ傍ら、日本におけるフリースタイルバスケの環境を体験している。(写真/黄信維)

現在は台湾に戻り、幼児体育の指導と並行して、月に1〜2回はフリースタイルバスケのパフォーマンス活動を続けている。小学校で教える場面では、母の日や卒業式に技を披露することもあり、子どもたちにとって良い刺激になっているという。

競技歴は8〜9年に及ぶ。台湾では朝に自主練習、夜に週2回のチーム練習という環境が整っていたが、日本では練習場所の確保が困難だった。とくに公園が砂地であることが多く、苦労したと語る。それでもチームに所属してからは、週2回、2〜3時間の練習を継続できるようになった。

普及活動においては、「まずは表現やバスケットボールに興味を持ってもらうことが大事」とし、パフォーマンス後に教室開催を案内するなど、興味の裾野を広げる工夫を続けている。台湾の若者は実用性や即時的な達成感を重視する傾向が強く、習得に時間のかかるこの競技では途中で諦めてしまう人も少なくないという。そのため、「興味と根気」が鍵になると強調した。

「台湾でもハーレム・グローブトロッターズのような存在を目指すことは可能か」との問いには、「もちろん理想だが、まだ誤解も多い」と答える。かつてこの競技を広めた人物が「法式街頭籃球」と称したことから、ストリートバスケと混同される場面もあるが、近年は徐々に正しい理解が広まりつつあるという。

今後のビジョンについて、彭選手は「日本の教育スタイルを取り入れ、質の高い幼児体育を提供したい」と語る。また、台湾の選手が日本の大会に出場することにより、練習量の違いを実感し、モチベーション向上につながると考えている。「半年しか練習していない日本の選手が、台湾で2〜3年続けている選手を上回ることもある。その違いを体感することは大きな学びになる」とし、日台の架け橋としての役割も意識している。

彭永彣選手の経験は、単なる競技者としてだけでなく、教育、文化、そして自己表現の多面性を持つフリースタイルバスケットボールの可能性を広げる存在として、今後ますます注目を集めそうだ。

​編集:田中佳奈

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