《時事通信社》の報道によれば、中国の軍備拡張や北朝鮮の核・ミサイル開発を背景に、日本の安全保障環境は急速に悪化している。7月20日に投開票が行われる参議院選挙を前に、主要政党はおおむね防衛力の強化を訴えているが、防衛費をさらに拡充すべきかについては、立場に濃淡がある。安定的な財源の確保も、政策実現に向けた大きな課題となっている。
自民党総裁の石破茂首相は、2日に日本記者クラブ主催の党首討論会に出席し、「日本周辺の安全保障環境は、世界で最も厳しい部類に入る」との認識を示した。その上で、中国および北朝鮮による脅威に対応するため、国民の理解を得たうえで防衛予算を引き上げる責任が政府にはあると強調した。
報道によれば、中国は近年、日本周辺海域で軍事的挑発行動を繰り返している。6月には、中国の航空母艦2隻が初めて同時に太平洋に進出し、搭載された殲-15戦闘機が海上自衛隊の哨戒機に異常接近する事案も発生し、関係機関の懸念を呼んだ。北朝鮮も引き続き核兵器とミサイル開発を進めており、地域の緊張は一段と高まっている。
こうした状況を受け、日本政府は2023年度から2027年度までの5年間で約43兆円を投じ、防衛力の抜本的強化を図る方針である。2027年度までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げる目標を掲げており、2025年度時点では既にGDPの1.8%に達している。
与野党各党も選挙公約に防衛力強化を盛り込んでいる。自民党と立憲民主党は共に「防衛力の大幅な強化」を訴えているが、立憲民主党幹事長の小川淳也氏は「金額ありきではなく、実務に即した積み上げが必要だ」と述べ、GDP比での増額には慎重な姿勢を示した。日本維新の会は防衛費をGDP比2%へ引き上げるべきと主張し、国民民主党も「必要な防衛費の増額」を訴えている。一方、日本共産党は政府の計画を「大規模な軍拡」と批判し、れいわ新選組も計画の中止を求めている。
防衛税増設への議論 代替財源は未定
財源の問題について、政府と与党は法人税、所得税、たばこ税の引き上げを通じて1兆円以上を調達すると主張している。法人税とたばこ税は2026年4月から引き上げが予定されているが、所得税についてはまだ結論が出ていない。しかし、立憲民主党は「防衛増税」に明確に反対し、国民民主党も非増税の代替財源を模索することを主張しているが、具体的な対策は公約で示されていない。維新の会は「国民負担を増やすべきではない」として、外為特別会計の活用などを提案している。
現在、5年計画の防衛力整備プランは3年目に入り、政府は次の段階の計画についてさらに議論を進める予定である。2025年度の防衛関連予算は過去最高の8.7兆円に達している。安全保障環境が変化し続ける中、将来の予算が拡大を続ける可能性は高い。アメリカのトランプ政権は、日本を含むアジアの同盟国に対して、防衛支出の割合を北大西洋条約機構(NATO)が定めたGDPの5%に引き上げることを求めることを検討しているとされる。国際的な圧力の下で、日本が安定した財源を確保することは一層の課題となる。一方、自衛官の待遇と労働条件の改善について、自民、立憲、維新、国民民主などの各党も公約に関連強化策を掲げている。
「防衛費は国際情勢と戦争抑止のコストに応じて決定すべき」と専門家
報道によれば、慶應義塾大学の森聰教授(現代国際政治)は、2022年に日本政府が安全保障関連の三文書を発表して以降、国際情勢は大きく変化しており、日本は自らの判断で防衛力強化の必要性とその程度を見極めるべきだと指摘した。森氏は「日本が自国の防衛力を高めると同時に、日米協力や同盟国との連携を推進できるのであれば、防衛費の増額も必要である」と述べた。
また、森氏は防衛力の着実な整備に向けては、安定的な財源確保と税収配分に関する制度設計が重要な課題になると指摘。「ロシア・ウクライナ戦争が示すように、抑止に失敗すれば甚大な人的・財政的コストを伴う」と述べ、この点を今後の議論で重視すべきだと警鐘を鳴らした。
さらに、アメリカで共和党政権が誕生した場合を見据え、日本は中国や北朝鮮への抑止力を強化するための具体的な戦略と知恵を示す必要があるとした。そのうえで、与野党がこの方向性で健全な競争を展開することを期待すると語った。
編集:柄澤南 (関連記事: 「防衛費3.5%」を迫るトランプ氏 自衛隊の人手不足深刻化、石破政権は台湾支援に踏み出すか? | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp