「防衛費3.5%」を迫るトランプ氏 自衛隊の人手不足深刻化、石破政権は台湾支援に踏み出すか?

2025-07-11 14:52
軍事専門家は、自衛隊の人員不足の問題も改善が必要だと見ている。写真は海上自衛隊の試験艦「あすか」。(海上自衛隊公式サイトより)
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7月10日より、台湾で年に一度実施される定例軍事演習「漢光演習」が始まった。今年は過去最長となる実兵演練に加え、新たな科目も追加されており、例年にも増して注目が集まっている。あわせて、台北政経学院などが主催した「台海防衛推演(シミュレーション)」にはアメリカや日本の退役将校も参加し、台湾軍の防衛能力や、戦争が起きた場合に米軍や日本の自衛隊がどのように対応するかについて議論が行われた。

こうした動きに関連し、日本国内では今後発表される予定の「2025年国防報告書」にも関心が高まっている。これは日本の国防構想を示す年次報告であり、台海平和に対する政府の立場がどのように反映されるか注目されている。

一方で、アメリカのトランプ大統領は日本に対して、国防予算を国内総生産(GDP)の3.5%まで引き上げるよう要求。NATO諸国が国防費をGDP比5%まで拡大する方針を打ち出す中、日本政府は強く反発している。この影響を受け、7月1日に予定されていた日米外交・防衛閣僚協議(いわゆる「2+2」)は中止となった。

さらに、米国からの関税引き上げの可能性も加わり、日米軍事同盟の将来性や、日本の政治的安定が台海およびインド太平洋地域の安全保障に与える影響も懸念されている。また、自衛隊員の待遇改善や社会的地位の向上といった課題についても、日本国内で議論が進んでいる。

2025年6月25日、美國總統川普出席北約峰會。(美聯社)
今年のNATO首脳会議で、参加国は国防予算をGDPの5%に引き上げることで合意した。写真はNATO首脳会議に出席したトランプ米大統領。(AP通信)

日本に軍事予算引き上げを求めるのは現実的ではない

こうした情勢を受けて、国際基督教大学の政治学・国際関係学教授で、ハンガリー国際問題研究所(HIIA)の客員研究員でもあるスティーブン・ナギー氏は、《風傳媒》の取材に対し次のように語った。「どの国でも平時に国防費を増やすのは難しいが、日本の場合は平和憲法、少子高齢化、内向的な国民性などがあり、特に困難です」としたうえで、近年のインフレ圧力も予算拡大を妨げる要因だと指摘している。

ナギー氏によれば、日本が短期間で防衛予算をGDP比3.5%にまで引き上げるのは非現実的だという。現時点でも2022年に策定された国家安全保障戦略の目標である「GDP比2%」さえ達成されていないからだ。仮に会計上の工夫をしたとしても、達成は容易ではないと見ている。

ただし、ナギー氏はこうも述べる。「日本はトランプ政権に対し、5年から10年の期間内にGDP比3.5%を目指すと約束し、見返りとして経済・外交上のインセンティブを提供することで、米側の要求をやわらげる交渉の余地はあるかもしれません」。

2025年6月23日,日本沖繩島糸滿市和平紀念公園舉行沖繩戰役結束80週年的紀念儀式,日本首相石破茂親自出席發表演說。 (美聯社)
石破茂氏は、日本の防衛と自衛隊員の待遇に強い関心を持っている。写真は6月23日、沖縄県糸満市で行われた沖縄戦終結80周年記念式典に石破氏が出席した様子。(AP通信)

日本も「好漢不當兵」か?

台湾の立法院で野党主導により「軍人給与3万元(約15万円)アップ」法案が可決されたことが話題を集めるなか、日本でも自衛隊の待遇改善が課題となっている。石破茂氏が首相に就任して以降、自衛隊員の福利厚生や報酬改善に取り組んでいるが、少子化の影響もあり、人員不足の問題は依然深刻だ。

その一例として、秋に予定されていた「艦艇パレード」が人員不足により中止を検討しているという報道も出ている。こうした背景から、ナギー氏は、《風傳媒》の取材に対し「日本の自衛隊は現在深刻な人材難に直面しており、待遇の抜本的な見直しが不可欠だ」と警告している。