米国のトランプ政権は次々と新たな関税リストを発表しているが、現時点で公表された2つのリストには台湾が含まれていない。この状況は様々な憶測を呼び、台湾政府は現在も米国との交渉を進めていると表明し、次回の具体的な会談が計画されているという。だが、それを楽観的に見るべきか、それとも慎重に見守るべきか、台湾社会には「ミステリーボックスを開封するような心境」が広がっている。
「非常口」はあるのか?交渉の焦点が定まらぬ台湾
90日間の関税猶予期間が迫る中、『ブルームバーグ』は、台湾が初回の関税合意の対象リストで最上位に挙げられていたと報じた。しかし実際には、台湾の命運は依然としてトランプ政権の手中にある。頼清徳政権は夜間に行われたオンライン会議の様子を写真で公開し、出席したのは国家安全保障関係の高官が中心で、経済部の担当者は確認できなかった。国家安全局の蔡明彦局長が米国に滞在していることも明らかになっており、台湾と米国の交渉の全容は依然として謎に包まれている。
米国が掲げる「対等」関税は、実質的には日本や韓国に25%の税率を課す「懲罰的」な性質を帯びている。しかし、米国との貿易黒字がさらに大きい台湾が未だ対象となっていないのは不自然とも言える。仮に今回の通知が台湾に届いたとして、それが利益であっても損失であっても、台湾にとって「良い知らせ」とは限らない。これが交渉の結果であるならば、それは期待外れと言わざるを得ない。

過度な先行投資は自らを縛る?台湾の戦略にほころび
ある著名な経済学者は「台湾に米国と対立する余地はない」と指摘しており、この言葉は台湾がすでに身動きできない立場にあることを示唆している。4月2日、トランプ氏が「解放の日」と称して発表した内容により、関税が実は煙幕であり、他国からより多くの利益を引き出す手段であることが明らかになった。「対等関税」の導入が幾度も延期されている点からも、それが単なる戦術的カードであることは明白だ。
頼清徳政権は、トランプ政権が選挙中から繰り出してきた強硬策を本気の要求だと誤解し、結果的に大きな譲歩をしてしまった。台湾の戦略は、最初から誤った前提に基づいていた。暴力的な兄貴分の前で、いじめられた子分が必死に耐えていれば、いずれ慰めや賞賛が得られるというような姿勢は、台湾の外交スタンスを示している。

ミステリーボックスの中身は果たして「幸運」か
現在の交渉は、台湾が「ミステリーボックス」の中身をいつ公表するかを巡る駆け引きになっている可能性がある。民進党が進める「大規模リコール」への影響を最小限に抑える意図もあるのではないか。もし台湾が「関税ボックス」の中身を受け取ることになれば、それがたとえ表向きに有利な税率であっても、背後にさらなる譲歩が隠されている可能性は高い。
例えば、米国債の購入や追加投資、防衛装備の調達、米国産豚肉や牛肉のラベル緩和、さらには米国製品の市場アクセス拡大などが含まれているとみられる。これにより、表面上の「好条件」と引き換えに、台湾が多くの対価を支払う構図となる。
頼政権が公開した7日夜の会議写真は、国民の安心感を与えるどころか、米国が提示した「未達成条件」が果たして何であるのか、さらなる疑念を生む結果となっている。台湾は、トランプ政権の予測不可能な圧力に晒され続けながら、「台米友好」の象徴を守るために、大きな代償を支払う決意を固めているようにも見える。
政治的利益よりも、産業と国民生活を優先する姿勢が必要とされる中で、今の台湾は一方的な期待にすがるあまり、透明性のないプロセスと誤った戦略に頼ってしまっているようにも見える。関税ボックスの中に「アメリカはあなたを決して失望させない」と記された紙があったとしても、それがかえって台湾の不安を煽る可能性もある。
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