台湾でSUP事故 水難救助の消防士2人が殉職、仲間の「早く助けて」が引き金か 訓練体制に問題指摘も

2025-07-09 19:27
救助活動中に殉職した消防士、吳恩碩氏と張敬謙氏。(写真/記者爆料網より)

台湾・新北市の新店区にある広興橋付近で7月8日、スタンドアップパドルボード(SUP)を楽しんでいた男性が誤って立入禁止区域で水難事故を起こし、救助に向かった消防士2名が殉職するという痛ましい事故が発生した。

新北市消防局によると、8日午後4時ごろ、広興橋下流の粗坑ダム付近でSUP中の陳姓の男性が溺れ、通報を受けた消防局は警察官と消防士を含む5人を現場に派遣。彼らは救助ボートで水面に出動したが、激しい水流によりボートが転覆し、5人全員が川に投げ出されたという。

この事故で、ウー・エンシュオ(吳恩碩、37歳)消防士が意識を失って水中から引き上げられたが、心肺停止の状態で病院に搬送され、その後死亡が確認された。ウー氏は消防士歴16年のベテランで、安全検査や救急医療などの複数の資格を持ち、消防士の権利向上にも尽力していた。SNSでは「すべての消防士が無事に帰還できますように」と願っていたという。彼は3歳と9ヶ月の子どもを遺している。

さらに、同じく救助活動に参加していたウライ分隊のジャン・ジンチェン(張敬謙)隊員も一時心拍を回復したものの、自力呼吸が困難で体外式膜型人工肺(ECMO)による治療が施されたが、9日午後0時22分、死亡が確認された。

現地メディアの報道によれば、立入禁止区域で溺れた男性の仲間たちが「早く助けて」と強く救助を促したことで、状況を十分に確認せず出動した可能性があるという。現場指揮官が制止しなかったことも悲劇の一因とされている。

また、消防内部からは、今回のような「ローリング水流(翻滾流)」への対応が訓練不足であり、本来であれば2隻体制での救助が必要だったと指摘されている。

この事故は、消防訓練体制や緊急出動時の指揮命令の在り方に改めて課題を突きつけるものとなった。

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