台湾総統の頼清徳氏は7日深夜、米国で対米経済・貿易交渉を進めている台湾代表団のメンバーとオンライン会議を開催した。この会議において、現地の台湾当局関係者が国家安全局長・蔡明彦氏の姿を目にし、波紋を呼んだ。
学者が《風傳媒》に語ったところによれば、蔡氏が対米交渉の場に姿を見せるのは極めて異例であり、今回の協議内容が単なる経済・貿易問題にとどまらず、対台湾の武器売却や台湾の国防予算増額といった安全保障分野にも及んでいることを示しているという。
こうした状況を踏まえ、いま問われるべきは、米国側の要求に対して台湾がどこまで応じる覚悟があるのか、という点である。
国民党所属の立法委員である葛如鈞氏は《風傳媒》の取材に対し、共産党スパイ疑惑が浮上した補佐官を抱える国家安全会議の呉釗燮秘書長でさえ、初期段階の一部交渉に関与していたと指摘した。その上で、今回の交渉団は「ちぐはぐな顔ぶれ」と評せざるを得ないと述べた。
頼清徳氏がオンライン会議 蔡明彦氏の米国滞在が判明
総統の頼清徳氏は7日深夜、米国で関税問題を含む対米経済・貿易交渉を進めている交渉チームとオンライン会議を開いた。会議には、行政院副院長の鄭麗君氏、駐米代表の俞大㵢氏、国家安全局長の蔡明彦氏、総交渉代表の楊珍妮氏らが米国から出席した。
このうち、とりわけ注目を集めたのは蔡明彦氏の姿である。蔡氏が交渉団の一員として加わっていた一方、関税交渉の中心的役割を担うはずの経済部長・郭智輝氏の姿が見られなかったことから、台湾国内では疑問の声が上がっている。
淡江大学国際事務・戦略研究所の馬準威助理教授は、《風傳媒》の取材に対し、「この3カ月間、民進党政権は米国との関税問題に極めて慎重に対応してきたはずだ」と語る。馬氏は、関税問題が経済に甚大な影響を及ぼす可能性があるのみならず、安全保障においても台湾は米国に大きく依存していることを指摘。「トランプ政権と良好な関係を築けなければ、安全保障面にも深刻な影響が及ぶ」と述べ、台湾政府が総統府から各部会に至るまで、あらゆるレベルで米国とのパイプ構築に奔走している実情を説明した。
また、馬氏は「蔡明彦氏が交渉に加わっているという事実は、対米経済・貿易問題に関与するすべての官僚が何らかの役割を果たしていることを意味している」と分析する。加えて、国家安全局の業務には本来から多岐にわたる対米政策も含まれており、今回の交渉が経済のみならず、米国からの対台軍事支援や台湾の国防予算の増額といった安全保障の問題とも密接に結びついている点を強調。「蔡氏はまさにその分野のキーパーソンであり、今回の派遣には明確な政治的意図がある」との見方を示した。 (関連記事: 台湾の関税は25%に?元立法委員「交渉前にTSMCを差し出したのが最大の失策」 | 関連記事をもっと読む )
蔡明彦氏の異例の役割 対台湾武器売却は経済交渉と一体か
淡江大学の馬準威助理教授は、国家安全局長・蔡明彦氏の登場について、「彼の役割は経済・貿易だけにとどまらないはずだ」と指摘した。蔡氏が交渉に関わるということは、他の分野でも米側との調整にあたっているとみるべきであり、そこには安全保障面での意図が透けて見えるとする。