アメリカのトランプ大統領は7日、日本や韓国など14か国を対象とする新たな関税率を発表し、8月1日から適用するとした。一方で、交渉の余地があることも示唆した。今回の関税対象には、マレーシア、インドネシア、タイ、カンボジアなど多数のアジア諸国が含まれているが、台湾は含まれておらず、各方面で波紋を広げている。アメリカ在住の日本人学者は、トランプ氏の狙いは各国に一層の譲歩を迫ることにあるとの見方を示している。
日韓の譲歩が鍵となるか
上智大学国際教養学部の元学部長で、現在は米ハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究センター(Weatherhead Center for International Affairs)の「米日関係プログラム(Program on US-Japan Relations)」に客員研究員として所属する政治学者の中野晃一氏は、《風傳媒》の取材に対し「トランプ氏は日本と韓国に対して何らかの譲歩を引き出そうとしているのではないか」と語った。
中野氏によれば、現在、台湾を含む類似の立場にある各国は、日本がトランプ氏の関税方針にどう対応するかを注視しているという。そうした文脈において、中野氏は「25%の関税は交渉上のポジションであり、高関税はいずれにせよ米国経済にとって有益ではない」との見解を示した。
韓国に関しては、かつて政治的な混乱が続いていたが、最近になって新大統領の李在明氏が就任し、ようやく政権が安定し始めた段階にあると指摘した。韓国の対応も、日本が米国に対してどのような動きを見せるかを見極めている最中であり、現時点では両国ともにトランプ氏による最新の関税圧力に対し明確な反応を示していないと述べた。特に日本では、今回の25%関税の発表時期が参議院選挙の選挙戦と重なっていたことから、政府が即座に重大な対応策を講じることは難しく、初動は非常に抑制的だったという。

トランプ関税が日本の排外感情を誘発する恐れ
トランプ氏が発表した25%の関税が、日本国内で対米関係の緊張や反米感情の高まりを引き起こし、7月20日に行われる参議院選挙に影響を及ぼすかどうかについて、中野晃一氏は「今回の選挙戦は、すでに排外的な感情の台頭により注目されている」と指摘する。
中野氏は《風傳媒》の取材に対し、21世紀初頭に当時の小泉純一郎首相が徹底的に封じ込めて以来、日本では「反米ナショナリズム」がしばらく沈静化していたと説明する。そのうえで、今回それが同じ形で再燃する可能性は低いとしながらも、「トランプ氏の狭量かつ近視眼的な『アメリカ・ファースト』の姿勢は、日本国内に同様の動きを促している」と述べた。参政党が今回の選挙で一定の支持を集めていることも、そうした流れの一例だという。
さらに中野氏は、トランプ氏の政策によって、一部の日本人が「弱肉強食の世界では、利己的であっても弱者を押しのけることが当然かつ必要で正当だ」と考えるようになる危険性を懸念している。そのような考え方が選挙戦を通じて支持を広げる可能性があると分析する。
今回の参議院選挙の結果次第では、こうした周縁的な政党が一層分裂を深める一方で、自民党をはじめとする既成政党にとっては大きな打撃となる可能性があると中野氏はみている。特に参院選は比例代表制による「パブリック・リレーションズ的性質」が強いため、注目を集めやすい周縁政党が相対的に政治的利益を得やすい構造にあるという。

自民党が敗北した場合の対応はどうなるか
現在の日本の首相である石破茂氏の支持率は極めて低迷しており、与党も衆議院で過半数を確保していない状況にある。このため、今回の選挙で自民党が敗北した場合、石破氏が辞任に追い込まれる可能性があるほか、日本政界が新たな再編局面に突入するとの見方が広がっている。
こうした懸念に対して、中野晃一氏は、自民党と公明党による与党連立が参議院でも過半数を失う場合、石破氏の辞任は避けられず、その後ただちに自民党内で新たなリーダー選出が始まると説明する。同時に、自民党は引き続き政権を維持するために新たな連立パートナーの確保に動くとみられ、最も現実的な選択肢として、国民民主党あるいは日本維新の会の参加が挙げられるという。
今後の日本政局について中野氏は、より若く、改革志向の強い人物が有利になるとの見通しを示す。ただし、いかなる展開になろうとも、「8月1日までに強力な政治的リーダーシップが現れることはあり得ない」と断言している。
編集:柄澤南 (関連記事: 米、新関税リスト公表 ブラジル50%、日韓も対象 22カ国の税率と輸出品まとめ | 関連記事をもっと読む )
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