「都合のいい情報しか聞かない」トランプ氏、米情報機関を政治利用 元CIA長官らが警告

2025-07-10 06:25
2025年7月4日、アメリカ合衆国大統領トランプがホワイトハウスで「大きく美しい法案」に署名する。(AP通信)
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ことわざに「忠言は耳に逆らう」とあるが、米国のトランプ大統領は、まるでロバの耳を持つ王のように、自らに都合の良い言葉しか耳を貸さず、情報機関を軽視・抑圧してきた。その結果、アメリカは権威主義国家の行き止まりへと突き進んでいる。米中央情報局(CIA)および国家安全保障局(NSA)の元長官マイケル・ヘイデン氏と、英ロンドン国王学院で「情報と国際安全保障」を専門とするデイヴィッド・ジョイ教授は、2日付の『フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)』誌上で寄稿し、トランプ氏の偏った姿勢が情報システムの独立性と専門性を損ない、国際的信頼を崩壊させ、次なる情報災害および国家安全保障上の危機を招きかねないと警告した。

リーダーが真実に耳を貸さないと、権威主義国家の情報災害を招く

「はっきり言え!」——2022年、ロシアのプーチン大統領は国家安全保障会議の場で、テレビカメラの前に立ち、対外情報庁長官セルゲイ・ナリシュキン氏に対して怒鳴りつけ、ウクライナ東部のルハンシクとドネツクが「ウクライナから独立している」と明言させた。

ナリシュキン氏はひどく緊張し、口ごもりながら言葉を発した。その直後、プーチン大統領から「座れ」と一言を浴びせられる様子は、まるで口頭試問で失敗した学生のようだった。ナリシュキン氏が躊躇したのは、ロシアの「特別軍事作戦」(すなわちウクライナ侵攻)が、キエフをロシアの支配下に戻すという目的を達成できるという確かな情報を欠いていたからである。それでも彼は疑念を口にするのではなく、迎合と服従を選んだ。情報が不確かであったとしても、プーチン氏に逆らうことの危険性は極めて明白だった。

ヘイデン氏とジョイ氏は、プーチン氏がウクライナの早期降伏を確信していたことが、自身の25年に及ぶ政権の中で最悪の情報判断ミスとなったと指摘する。戦況が膠着する中で、プーチン氏は激怒し、複数の高官を逮捕するに至った。しかし、それは彼自身が築いた罠でもあった。耳障りな意見を拒み、内向きな体制を固めた結果、独裁者にありがちな「聞きたいことだけを聞く環境」が完成されたのである。

本来あるべき情報体制とは、指導者に正しい問いを投げかけ、その仮定に異議を唱え、誤りの可能性を検討する仕組みである。確かに、情報機関は政権の利益や外交政策、報告様式に適応する責務を負っている。だが、情報機関が指導者に提供できる最大の貢献は、指導者が信じて疑わない誤った思い込みを捨てさせることである。 (関連記事: トランプ氏発言一転「台湾を攻撃すれば北京を火の海にする」 米学者「最悪のシナリオに備えよ」 関連記事をもっと読む

トランプ大統領は専門家を軽視し、忠誠のみを求めた

アメリカは本来、世界に誇る情報体制を有していたはずだが、トランプ政権下では、まるで権威主義国家のような問題が顕在化した。トランプ氏は専門性よりも忠誠心を重視し、そのポピュリズムかつ個人主義的な統治スタイルにより、情報機関を軽視し、時に乱用してきた。独裁国家でよく見られる情報の歪みや機能不全が、アメリカでも現実のものとなり、かつての堅牢な情報システムは脆弱性を露呈している。