度を超えれば2,300万人の命が危機に──台湾が踏み越えてはならない「北京の一線」

2025-07-09 12:29
中華新時代智庫基金会理事長の李大壯氏が『風傳媒』のインタビューに応じ、両岸間の信頼欠如がコミュニケーションの問題解決を妨げ、誤解と距離がますます広がると強調した。(写真/張鈞凱撮影)
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国際情勢の不安定化により、台湾を取り巻く内外の環境が厳しさを増す中、両岸関係もまた緊張の影響を受けている。台湾に婿入りし、中華新時代智庫基金会の理事長を務める李大壮氏は、「風傳媒」のインタビューに応じ、両岸交流の困難さとその打開策について語った。現状維持は米中双方にとって受け入れ可能な選択肢であり、両岸が「誠意ある交流」を行わない限り、平和は維持できないと指摘した。信頼がなければ対話も成立せず、誤解と隔たりが広がるばかりだという。李氏は、話し合いが可能であれば、将来に向けて慎重ながらも楽観的な見方ができると述べた。

交流は一方通行、両岸関係は「各自の立場表明」で停滞

両岸は「交流」を掲げつつも、実態としてはそれぞれが自らの立場を表明するにとどまり、距離は縮まっていない。長年にわたり両岸の若者交流に関わってきた李氏は、「信頼が伴わなければ交流は一方通行に終わる」と指摘。香港の若者が中国本土へ出向き、物価の安さから消費行動は活発になっているが、それが価値観の接近につながっているとは限らないと述べた。

台湾側は中国から利益を得ることを交流の成果と見ているが、中国側はそれに何を見返りとして求めるのかという問題がある。李氏は、両岸の関係が今や「一つの中国とは誰か」ではなく、「一つの中国という概念そのものが争点になっている」とし、1992年のコンセンサス(九二共識)が機能していた時代とは状況が大きく異なっていると説明した。

30年以上にわたるこの膠着状態を打開するには、双方が歩み寄るか、あるいは一方が強硬手段に出るしかないが、現在そのどちらの兆しも見えないという。中国本土は台湾よりはるかに大きな力を持っているが、それでも14億人の幸福や未来を交渉材料にすることはないとの見方を示した。李氏は、中国本土には「人民が受け入れられるかどうか」という明確なボーダーラインが存在し、台湾のどの政党であってもこのラインを正しく見極めなければならないと強調。これこそが台湾にとって最大の課題だと述べた。

中国の政治体制について、李氏は西洋的な民主制度と比較されやすい点に触れつつも、独裁や個人支配と単純に決めつけることには慎重な姿勢を示した。毛沢東の時代から「人民が政府の上にある」という価値観があり、人民の根本的な利益を損なう指導者は排除される可能性もあると述べ、一定の内部統制が機能しているとする理解を示した。

現状維持は米国の利益に適合、両岸三地に努力の余地

また李氏は、中国本土に理想的な部分があるわけではないが、米国にも同様に特筆すべき優位性はないと述べ、中米の実態を対照的に語った。中国共産党の統治下で数億人が貧困から脱し、数十年で生活水準が大きく向上した点については肯定的に評価すべきだとも語った。

両岸問題に関しては、「両岸は国内問題であり外交問題ではない」とし、「中華民族である以上、干渉されてはならない」との立場を強調した。台湾は中国の一部であり、「中華民国」か「中華人民共和国」かを問わず、共通認識や協議による解決がなされるまでは現状維持が最も現実的で有利な選択だと述べた。