張鈞凱コラム:「米中首脳会談」は台湾に触れなかったのか

2025-11-03 16:05
米側の発言に耳を傾け、ほほ笑む習近平氏。(写真/米ホワイトハウス公式サイト)
米側の発言に耳を傾け、ほほ笑む習近平氏。(写真/米ホワイトハウス公式サイト)
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6年ぶりにトランプ氏と習近平氏が10月30日、韓国・釜山で会談した。中国のネットで「川宝」と呼ばれるトランプ氏は帰途、成果を即公表。中国側は対米レアアース輸出規制の1年延長、米側は対中制裁関税の1年間の一時停止、さらに来年(2026年)の相互訪問の可能性に言及した。最後に付け加えたのが「台湾問題には触れなかった」という一文だ。

会談で台湾に言及あったか 頼政権に緊張走る

この“追伸”は民進党にとって朗報に映るかもしれない。総統府は「米中の対話を歓迎」と強調し、与党は「疑米棄台論は成り立たない」と喧伝するだろう。だが、それは自己安慰にも見える。「心配ない、大丈夫」と。むしろ台湾側は自問すべきだ――会談で台湾に触れたか否かにかかわらず、私たちはどれほどそれを恐れているのか、と。綱渡りの上に立っているのは誰か。

米中博弈を長年追う同業の友人は「台湾に言及しないはずがない。トランプ氏が『話していない』と言うのは、むしろ何かを伏せる意図だろう」と指摘した。その見立ては、政権の公式判断より説得力がある。実際、今年(2025年)9月19日の米中電話会談の公表文にも台湾の文言はなかった。そこから見えるのは、台湾の重要度が下がったのではなく、どちらかが高い要求を掲げる局面で、合意成立を容易にする“障害除去”の交渉カードになり得るという現実だ。

首脳会談の前後には双方の高官が各地で接触し、10月30日の「100分」を積み上げてきた。合意の骨子はクアラルンプールでの米中経済・通商協議で詰められ、首脳は最終確認をしたにすぎない――だからこそ会談は外部予想の3~4時間ではなく、1時間40分で終わった。クアラルンプールの結果自体も、複数回の高官協議を前提としている。

この論理で振り返ると、5月のスイスでの関税協議後にトランプ氏が「これは両国にとって良いことで、統一(unification)と平和(peace)にも非常に有利だ」と高く評価した発言が引っかかる。これは経済に限らず、台湾をめぐる含意が大きいのではないか。会談前夜にトランプ氏が「台湾は台湾だ」と述べたとき、彼の頭の中で描かれた“台湾”は、台北より北京に近いのか。少なくとも、前者より後者に傾く公算が高い――そう見ておく方が現実的だ。 (関連記事: 習近平氏「台湾」言及なし トランプ氏「米中関係は良くなる」と明言、台湾海峡リスクは低下するか? 関連記事をもっと読む

ワシントンの風向きは変わったのか 「反中コンセンサス」の終わりを示す兆し

突き詰めれば、米中の関税・供給網をめぐる攻防は「攻守交代」に近づき、米国が中国に“首根っこを押さえられる”局面が増え、トランプ氏の「最大限の圧力」も発動しにくくなっている。少なくとも、米中三共同コミュニケによる「一つの中国」の枠組みを壊さない限り、北京と全面対立には踏み込まない。頼清徳総統は友好国歴訪でも米本土経由が難しく、トランプ氏は今夏、台湾向け4億ドル超の対外軍事融資を拒否。「台湾独立を支持しない」から「台湾独立に反対する」へ――そうした姿勢の変化もうかがえる。加えて、米政治学界・メディアからは民進党政権に厳しい提言が続き、これらは空中戦ではなく、風向きの変化を示す具体的なシグナルだ。

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