ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が釜山で会談した後、各国のメディアや専門家は、この「休戦協定なき貿易休戦」がどちらの勝利に終わったのか分析を進めている。だが、ピュリツァー賞を2度受賞した『ニューヨーク・タイムズ』のコラムニスト、ニコラス・クリストフ氏は、会談前日の時点で「トランプ氏は中国との貿易戦争に敗北した」(Trump Lost the Trade War to China)と断言していた。その理由は、中国が米国に対する支配的な経済レバレッジを完全に掌握しており、トランプ氏が結果的に米国の国際的影響力をさらに弱めたからだという。クリストフ氏は、「この戦争はワシントンが自ら火をつけたものだが、最終的に焼かれるのはアメリカ自身の覇権構造だ」と指摘する。
「トランプの貿易戦争は、米国が一方的に負けている」
クリストフ氏は、「今日、最も重要な二国間関係は米中関係だが、トランプ氏はそれを台無しにした」と断じる。トランプ氏が仕掛けた貿易戦争は、米国が一貫して負け続ける戦いだった。仮に「米中首脳会談」で一時的な休戦に至ったとしても、結末は「中国が主導権を握り、米国の影響力がさらに削がれる」形になると予測する。トランプ氏が自らの交渉力を誇示し、側近たちが「ノーベル平和賞に値する」と持ち上げようとも、クリストフ氏は冷笑するだけだ「そんな話には、白い目を向けるべきだ」と。
「解放日」関税は誤算の始まり
すべての転機は今年4月に始まった。クリストフ氏によると、トランプ氏は「解放日」(Liberation Day)と称して新関税を発動し、中国経済は脆弱であると誤って判断した。米国への輸出が圧倒的に多い中国は、貿易戦争では不利に立たされる――そう信じ込んでいたのだ。しかし、現実は逆だった。
中国が米国から輸入していた大豆などは他国からも容易に調達できるが、米国が必要とするレアアース(希土類)には代替供給源が存在しない。レアアースがなければ、米国の一部工場は操業停止に追い込まれ、軍需サプライチェーンにも壊滅的な打撃が及ぶ。
「レアアースは中国のOPEC」――アメリカの喉元を握る北京
レアアースおよびレアアース磁石は現代産業の根幹を支える資源であり、ドローン、電子機器、自動車、航空機、さらには軍事装備の生産に欠かせない。潜水艦1隻の製造にはおよそ4トンのレアアースが必要とされる。現在の中国はまさにレアアース分野の「OPEC」であり、世界の約9割の産出を支配。6種類の重希土類鉱物では唯一の供給国であり、磁石生産でも圧倒的優位を保つ。
2010年、中国は尖閣諸島(中国名:釣魚台)の領有権問題をめぐり、日本へのレアアース禁輸措置を実施し、日本産業界に深刻な衝撃を与えた。その構図が再び再現されたに過ぎない。今回は相手が米国に変わっただけだ。
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トランプ氏が「解放日」関税を発動したわずか2日後、中国は特定のレアアース製品の輸出規制を発表。今年10月には対象範囲をさらに拡大した。クリストフ氏は、「習近平氏は米国の喉元を正確に掴んだ」と指摘する。米国の経済は中国のレアアースに依存しており、その依存度は中国の大豆依存をはるかに上回っている。

















































