東京大学東洋文化研究所の特任研究員、林泉忠氏は『風傳媒』の取材に対し、台湾人が日本各地で進める地方交流の動きを分析し、文化面・外交面の双方で極めて重要だと指摘した。

まず林氏は、近年、日本の離島や地方都市へ移住する台湾人が増えていると紹介。彼らはカフェや民宿を営みつつ、来訪者に台湾文化を伝える活動を展開しているという。五島列島に移住した台湾人が現地の“観光大使”的な役割を担い、日本各地の観光見本市にも参加するなど、地域と台湾をつなぐ事例も挙げた。

さらに、刮痧(かっさ)を通じて台湾文化を紹介する人々や、北海道・栃木・青森などで自治体の観光PRを担う台湾人にも言及。こうした動きが民間レベルの交流を一段と深め、地域間の相互理解と協力を築くうえで大きな意義があると評価した。

文化研究の専門家である林氏は、戦後台湾の文化変遷を概観。1980年代以前は国民党政権の下、「新中国文化」の移植が推進され、土着文化が抑圧されてきたと指摘する。その後、民主化の進展に伴い本土文化の再評価が進み、台湾文化の多様性が可視化されたという。
1990年代以降は日本文化への関心と評価が高まり、テレビドラマや音楽をはじめとする影響が顕著に表れた。林氏は、民主化後の自由な言論環境が、日本の大衆文化を受容する基盤になったとの見方を示した。
また、2011年の東日本大震災では台湾から巨額の義援金が寄せられ、日本社会に深い感動を与えたと指摘。こうした記憶が各地に根づき、「地方のラーメン店で台湾人観光客に無料サービスが提供されることもある」と述べ、日台の民間交流が社会の隅々に浸透している実情を強調した。
さらに林氏は、台湾の地方政府と日本の自治体による交流が、謝長廷・駐日代表の在任8年間で大きく前進したと評価。姉妹都市や友好協定の締結が地方レベルで活発化し、日台関係が大都市圏から地域へと拡張していると述べた。
最後に林氏は、こうした草の根交流が台湾の国際的な存在感や安全保障にも好影響を及ぼしているとし、「日台関係の成熟と深化は、他国では容易に到達し得ない水準にある」と強調。日本の高校の修学旅行先として台湾が選ばれる例が増えている点に触れ、「国交がないにもかかわらず、安全で魅力的な渡航先として評価されているのは画期的だ」と述べ、今後の市民交流の一層の深化に期待を示した。
台灣人が東京を選ぶ理由
東京のプロジェクトマネジメント会社で働く台湾出身の采(Shin)さんは、『風傳媒』の取材に、東京を選んだ理由を次のように語った。「東京は大都市で、仕事柄、欧米企業との連携や会議が多い。中には東京に本社を置く海外企業もあり、都市部にいることが不可欠です。クライアント対応で出張も頻繁で、欧米への渡航でも東京は交通の利便性が高い。そのため、自然と東京が拠点となり、キャリア志向の選択でもあります」。
東京でBIMエンジニアとして活動するShinさんも、「業務の性質上、東京のような大都市はリソースが豊富で、案件の種類も機会も多い。建築展などのイベントにアクセスしやすく、人脈も東京に集まる」と説明。すでに8年の就業経験があるShinさんは、「受注案件は、大都市では商業施設、博物館、学校、病院、ホテルなど幅広いが、地方は住宅が中心になり、どうしても制約が多くなる」と具体例を挙げた。

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