日本人すら足を運ばない離島に根を下ろす台湾人 地域に溶け込み「対外発信の窓口」に

日本の辺境の離島で、台湾人が地域発展を支える姿がある。写真は長崎県・五島列島。 (写真/Lois提供)
日本の辺境の離島で、台湾人が地域発展を支える姿がある。写真は長崎県・五島列島。 (写真/Lois提供)
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台湾人にとって日本は最も人気のある旅行先だ。東京、大阪、京都といった定番観光地は言うまでもないが、実は「日本の果て」ともいえる離島や僻地にも、台湾からやって来て人生を根付かせる人々がいる。彼らは都市を離れ、海風に吹かれる島で暮らしながら台湾の生活文化を持ち込み、交流を通じて地域に新しい風景を刻み込んでいる。その営みは、公式な日台交流を超えて静かに根を張り、確かな絆を築きつつある。

九州の長崎・五島列島の漁村、新潟・佐渡島の金山の古道、香川・小豆島のオリーブ畑、兵庫・淡路島の農泊集落、さらには北海道・知床半島の荒々しい海岸線まで──近年、こうした辺境に台湾人が移り住み、地域に深く関わる例が増えている。彼らは自らの人生を地域の未来と重ね合わせ、国際的な架け橋となりつつある。

20250912-日本五島列島。(Lois提供)
台湾人が日本の離島に根を下ろし、人生の軌跡を島の未来と結びつけ、地域と世界をつなぐ存在となっている。(写真/Lois提供)

交通難が試す五島列島 台湾出身のLoisが担う国際化の旗手

長崎県西部に位置する五島列島は、ここ数年、台湾からの旅行者にも注目され始めた静かな秘境だ。しかしその美しさは、極端な交通不便によって「閉ざされた楽園」とも言える。福岡からは小型機で福江島に飛ぶことができるが便数は限られ、運賃も高い。島からさらに他の島へ渡るには船を乗り継がねばならず、天候で欠航も多い。長崎市からの高速船やフェリーも同様に海況に左右され、予定通りの到着は難しい。島内には鉄道がなく、バスは本数が少ないため、多くの観光客はレンタカー頼みだ。場所すら正確に知らない日本人も少なくない。

そんな五島で、台湾出身の女性Loisは地域観光と国際交流の要として存在感を放っている。日本人の夫と共に福江島で立ち上げた「五島時光」は、元産婦人科医院を改装した三階建ての複合施設だ。民宿、コワーキングスペース、中国語教室、地域ガイドを組み合わせ、五島を外に発信する拠点となっている。

Loisは新北市新店の出身。夫の親族を訪ね娘とともに五島を訪れた際、家族が子どもを大切に包み込む姿に触れ、「ここで暮らしたい」と思うようになったという。

移住当初は言葉の壁や地域の慣習に悩み、孤独を感じたこともあったが、空き家を改装し「五島時光」を形にした。最初は家族や友人のための宿泊場所にすぎなかったが、やがて若い起業家が集う場へと広がっていった。Loisは「この家は迷宮のように大きいからこそ、多様な人が集まり、つながりが生まれる」と語る。台湾からの旅行者を受け入れることも多く、親子連れの花見や旧友の再訪、バックパッカーとの交流を通じて、文化が交差する温かさを日々感じている。 (関連記事: 調査》台湾庶民が日本で地域に溶け込み グアシャ体験を通じて文化の絆を深める姿に注目 関連記事をもっと読む

Lois在五島列島創辦「五島時光」,成為年輕創業者進駐的共享空間。(Lois提供)
Lois氏が五島列島で立ち上げた「五島時光」は、若手起業家が集うシェアスペースとなっている。(写真/Lois提供)

台湾から来た「ホタル」 五島列島の情報弱者を支援

Loisは宿泊の提供にとどまらず、観光ガイド、レンタカー、旅行パッケージなど幅広いサービスを展開している。交通の便が乏しい五島列島では、自ら車やバイクを購入し、個人旅行者が自由に動ける環境を整えてきた。さらにITF台北国際旅行博にも五島代表として参加し、自治体や企業の台湾向けプロモーションを支援している。彼女は「私は主役ではなく橋でありたい。ホタルのように、五島の魅力を多くの人に照らし出したい」と語る。

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