インタビュー》福島伸享氏「トランプ変動に備え日台韓経済圏を」 日米関税交渉は波乱も信頼関係は堅持

2025-08-20 16:28
福島伸享衆議院議員が2月下旬、国会で質疑に立った。(写真/衆議院ウェブサイトより)
福島伸享衆議院議員が2月下旬、国会で質疑に立った。(写真/衆議院ウェブサイトより)
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日米の関税交渉は難航を極め、日本側首席交渉官の赤澤亮正経済再生担当相が複数回渡米し、最終的に「15%」で妥結したものの、当初の説明とは異なる形で混乱を招いた。この過程は日米間の信頼に影響したのか――。衆議院議員の福島伸享氏は《風傳媒》のインタビューで「信頼の基盤は揺らいでいない。日本社会は『まず自分を省みる』傾向が強く、同盟国を責める空気ではない」と語った。

一方で、トランプ米大統領の予測不能な政策スタイルを前提に、日本は韓国・台湾・東南アジア諸国と連携し、対米依存を減らした「アジア自立の経済・安全保障圏」を築くべきだと提言した。

トランプ「一声で決定」の関税 日米交渉担当者は動けず

石破茂首相は今年2月に訪米し、総額5500億ドル規模の投資を約束したものの、米トランプ大統領が仕掛ける関税戦争から逃れることはできなかった。しかも日米関税交渉は、米国の同盟国の中でも最も紆余曲折を経験したケースの一つとなった。

4月に始まった日米関税協議は、トランプ氏の「一声で決定する」スタイルに大きく縛られ、7月には最大35%まで関税を引き上げると脅す場面もあった。その後、自民党の参院選での敗北を受け、7月22日になってようやく15%に抑えられた。

ところが8月6日に米政府が発表した「連邦公報」では、日本関連の輸入品について「既存の関税率に一律15%を上乗せする」と明記され、翌7日に正式発効。日本政府が説明していた「一律15%」とは大きな食い違いが生じた。

交渉を担った赤澤亮正経済再生相は、ネット上で「無能大臣」「役立たず大臣」と酷評され、一時窮地に追い込まれた。それでも9回にわたる訪米交渉の末、ようやく日米双方は「最終的に15%」という合意にこぎつけ、関税交渉の混乱は収束した。

2025年4月16日、日本経済再生大臣赤澤亮正とアメリカ大統領トランプがホワイトハウスで面会。(日本内閣官房サイト)
2025年4月16日、日本の赤澤亮正経済再生担当相がホワイトハウスでトランプ米大統領と会談した。(写真/日本内閣官房サイト)

この点について衆議院議員の福島伸享氏は、経産官僚の粘り強さを評価した上でこう語る。

「米側の交渉担当者も似たような見方をしていると聞いている。ただ、最終的にはトランプ氏自身がすべてを決める。現場レベルの交渉は簡単に覆されてしまうのが実情だ」。

朝日新聞が8月中旬に実施した世論調査では、交渉をめぐる石破政権への怒りはやや和らぎ、石破首相の辞任に「反対」と答えた人が54%に上った。内閣支持率も36%に回復している。

たとえトランプ退任後も保護主義は続く

将来の展開がどうなろうとも、日本の産業界はすでに米国関税の打撃に直面している。日経アジアの試算によれば、2025年度(2026年3月期)には主要製造業42社の営業利益が約3.5兆円減少し、年間予測利益の3割近くが失われる見通しだ。

特に打撃が大きいのは自動車産業である。関税率は27.5%から15%に下がったとはいえ、従来の2.5%と比べれば依然として高水準だ。トヨタを含む主要7社が2025年度に被る損失規模は2.7兆円に達すると見込まれている。 (関連記事: 日米関税合意が暗礁に 「戦国時代」突入の日本政治に波紋 関連記事をもっと読む

2025年3月、新モデルのトヨタ車がカリフォルニア州ロングビーチ港のトヨタ物流サービスセンターに格納されている。ここはトヨタにとって北米で最も重要な自動車輸入加工工場である。(美聯社)
2025年3月、カリフォルニア州ロングビーチ港のトヨタ物流サービスセンターに並ぶ新型トヨタ車。同センターはトヨタにとって北米で最重要の自動車輸入拠点となっている。(AP通信)

それでも福島氏は「悲観一色ではない」と語る。

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