陸文浩の見解:ロシア「キロ級」潜水艦が東シナ海へ 中露が近・遠海で日本を包囲

2025-08-19 15:33
ロシア軍のキロ級潜水艦は長距離巡航ミサイルを発射する能力を持つ。(AP通信)
ロシア軍のキロ級潜水艦は長距離巡航ミサイルを発射する能力を持つ。(AP通信)

中国北部戦区海軍の052D型駆逐艦「ウルムチ」と援潜救難船「西湖」による潜水艦支援編隊、さらにロシア太平洋艦隊の護衛艦「響亮」と救難曳船による「キロ級」潜水艦支援編隊が、8月13日から15日にかけて対馬海峡を通過し、日本海から東シナ海に入った。いずれも8月1日から5日に日本海で行われた中露合同演習「海上連合-2025」に参加した部隊の一部であり、この時期に東シナ海へ展開することで、日本を取り囲む態勢を形成している。

演習終了後、中国海軍の052D型駆逐艦「紹興」、903型補給艦「千島湖」、ロシア太平洋艦隊のウダロイ級対潜艦「トリブツ提督」は、8月12日にカムチャツカのペトロパブロフスク港へ寄港して補給を行い、14日から第6次合同巡航を開始した。今回の合同巡航は従来より兵力が縮小しており、その背景について様々な推測を呼んでいる。

まず、中露海軍は8月1日から5日にかけてウラジオストク港沖で「海上連合-2025」を実施した。終了後、一部の兵力として、中国東部戦区の052D型駆逐艦「紹興」(134)、903型総合補給艦「千島湖」(886)、ロシア太平洋艦隊のウダロイ級対潜艦「トリブツ提督」(564)が混成編隊を組み、12日にカムチャツカのペトロパブロフスク港に到着。補給を経て14日から第6次合同巡航に入った。

日本防衛省統合幕僚監部は8月14日に、中国海軍の2隻(「ウルムチ」118と「西湖」841)が13日に対馬海峡を通過して東シナ海に入ったと通報した。筆者は以前から、中露の北西太平洋での合同巡航に際して、援潜救難船の動きに注目すべきだと指摘していた。

確認された両艦は「海上連合-2025」に参加したもので、中国北部戦区の第1駆逐艦支隊(青島)所属の「ウルムチ」、同じく青島の援潜救難船「西湖」である。これらは7月24日から25日、東部戦区の基ロ級潜水艦「636M型・371」を護衛して対馬海峡を抜け日本海に入り、7月31日にはウラジオストク港に入港していた。

今回8月13日の動きは、青島基地への帰還とみられる。

ロシアキロ級潜水艦が南下し、中露が近遠海を包囲して日本に注目を集めている。(陸文浩提供)
ロシアのキロ級潜水艦が南下し、中露両軍が近海と遠海から展開することで、日本を包囲するような態勢が注目を集めている。(写真/陸文浩提供)

次に、日本防衛省は8月15日、ロシア太平洋艦隊の改良型「キロ級」潜水艦、ステレグシチ級フリゲート「響亮」(335)、バクラザン級救難曳船などの編隊が、14日から15日にかけて対馬海峡を通過し東シナ海へ入ったと発表した。ロシアが「海上連合-2025」に投入した兵力には、ウダロイ級「トリブツ提督」、ステレグシチ級「響亮」、潜水艦救援艦「イーゴリ・ベロウソフ」、キロ級潜水艦「ヴォルホフ」(B-603)が含まれていた。これらの前後関係から、「響亮」と救難曳船が「ヴォルホフ」を伴い、東シナ海で未知の海域における遠洋訓練を行っていると推測される。

中露海軍の「海上連合-2025」に参加した兵力の一部は、西太平洋北部で合同巡航に従事している。一方で、別の艦艇や潜水艦、支援艦艇が東シナ海に進出しており、結果的に日本を挟み込む形で展開。東北アジアの緊張を高める要因となっている。

最後に、過去の動きを振り返ると、2024年11月から12月にかけてロシア太平洋艦隊の「キロ級」潜水艦「ウファ」と救難曳船「アラトウ」がマレーシアを訪問し、南シナ海で訓練を行った。その後、与那国島と西表島の間を北上し、東シナ海を経由して青島に入港した。またフリゲート「響亮」も同年12月、編隊の一員として青島を訪問している。このため、8月13日に「ウルムチ」と「西湖」が先行して東シナ海に戻ったのは、青島への帰還を意図した動きとみられ、その後ロシアの「キロ級」潜水艦編隊が14日から15日にかけて東シナ海に入り、青島訪問を予定している可能性もある。

筆者が本稿を執筆した2025年8月18日午前9時時点では、日本防衛省統合幕僚監部から後続の通報はなく、今後はロシア太平洋艦隊の潜水艦遠洋訓練編隊が南西諸島周辺を経て西太平洋に入るかどうか、またロシア太平洋艦隊広報部からの発表が注目される。

*筆者は中華戦略学会研究員

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編集:田中佳奈

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