インド・モディ首相、農民保護と国内生産を強調 米国関税に対抗姿勢

2025-08-17 10:23
インドのモディ首相が独立記念式典で演説した。(AP通信)
インドのモディ首相が独立記念式典で演説した。(AP通信)

インドのナレンドラ・モディ首相は、独立79周年を迎えた式典で103分に及ぶ演説を行い、今後インドは肥料からジェットエンジン、電気自動車用バッテリーに至るまで国産化を推進し、自給自足をさらに強化すると強調した。トランプ米大統領や米国の関税政策には直接言及しなかったが、農民の利益を守る姿勢を鮮明にした。

モディ首相はニューデリーのレッドフォートから全国に向けて演説し、「農民、漁民、牧畜民は私たちの最優先事項です。私は彼らを守る壁となり、利益を脅かす政策から断固として守る」と述べた。自身の与党・インド人民党(BJP)の最大の支持基盤である農民にメッセージを送った格好だ。

一方、米国のトランプ大統領はインドがロシアから原油や軍需品を購入し続けていることに不満を示し、インド製品への関税を50%に引き上げる意向を表明している。しかし、専門家や海外メディアは「ロシア要因は口実にすぎず、真の対立の焦点はインドが米国産農産物や乳製品の大量輸入を拒否している点にある」と指摘する。これらが解禁されれば、インドの農業や畜産業界に深刻な打撃を与え、与党の重要な支持基盤を揺るがしかねないからだ。

モディ首相は演説の中で「スワデシ(国産品)」の推進を呼びかけ、商店や企業に国産品であることを示す表示を掲げるよう訴えた。今年末にはインド製半導体が市場に出る予定であり、政府は重要鉱物の自給体制構築のため1200カ所以上で探査を進めているとも明らかにした。

インド独立79周年を祝う会場外で、喜んで国旗を振る小学生。(AP通信)
独立79周年を祝う会場周辺で、国旗を振って喜ぶ小学生。(AP通信)

政府関係者によれば、演説の草稿段階では米国関税問題への直接的な表現もあったが、前夜にスタッフが調整し、可能な限り削除したという。交渉チームは今も解決策を模索しており、インド経済と貿易への影響を最小限に抑える狙いがある。

市場関係者の試算では、もし米国が50%関税を発動すれば、繊維、靴、宝飾品などインドの主要輸出産業が直撃を受け、ニューデリーにとって最大の輸出市場を失う恐れがある。

インド独立79周年を祝う会場外では、軍隊が武装警備を行っている。(AP通信)
インド独立79周年の式典会場周辺では、軍隊による厳重な警備が敷かれた。(AP通信)

米国との亀裂は数十年来で最も深刻なものとなり、国内では対米不信感が再燃。モディ首相の一部支持者の間では、マクドナルドやコカ・コーラ、アマゾン、アップルなど米国企業のボイコットを呼びかける動きも出ている。

シンガポール国立大学南アジア研究所のモハン客員教授は「米国からの露骨な圧力により、インドは非常に厳しい立場に置かれている。モディ首相は支持者に屈する姿を見せるわけにはいかない。現実的な手法で米国と妥協し、双方が受け入れ可能な解決策を見出せるかが鍵だ」と分析している。

中国語関連記事

編集:田中佳奈

最新ニュース
トランプ氏の関税戦争は成功か 台湾の元立法委員・蔡正元氏が警告『米国に2つの深刻な結果、世界は備えを』
自民・河野太郎氏、参院選敗北は「有権者に届かなかったメッセージ」と指摘 党執行部の刷新求めFCCJで講演
【独占インタビュー】一青妙|10年かけて完成した長編小説『青色之花』 家族と記憶が交錯する真実を描く
<独占インタビュー> 台湾インディーズバンド浅堤ボーカル・依玲さん、初のエッセイ集を刊行
台湾・台中市が「鳥取しゃんしゃん祭」に参加 日台の観光・文化交流を深化
台湾・頼清徳総統が「終戦」を強調 医師で評論家の沈政男氏「親日的な台湾独立の歴史観」
2週間で資産が90億ドル増加?ソフトバンク孫正義氏、AI熱で日本長者番付2位に浮上
北京観察》終戦80年を外交舞台に 台湾問題を持ち出した対日批判は異例
TICAD9開幕目前に東大教授の遠藤貢氏が講演 アフリカの現状と国際関係、日本の関与のあり方を分析
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)、8月20日から横浜で開催 日ア共創の新時代へ
ゲッティイメージズ、「サステナビリティは企業が主導すべき」と日本人の8割が回答 ビジュアル表現のポイントを提示
日本の歴史学者:日本政府が第二次世界大戦の戦争犯罪に責任を負いたがらない
オーストラリアで中国系「慰安婦」銅像除幕 戦争の記憶継承
台北観光スポット》台北101の魅力再発見 高さごとに変わる絶景の表情
参政党・神谷代表が靖国参拝 終戦80年の日に「日本軍の中国侵略は虚構」発言も再浮上
大阪「We TAIWAN」終盤戦、台湾発「魔法のテント」大阪に上陸 残り5日でほぼ満席、没入型物語体験が話題
終戦80年 全国戦没者追悼式 石破首相「反省」強調、天皇陛下は恒久平和呼びかけ
陸文浩の視点:米露首脳がアラスカで対峙、中露海軍の合同巡航が直撃
中国有力学者「武力統一ならTSMCは国有化」 一国二制度は適用せず
夏一新の視点:台湾・頼清徳総統、米国の20%関税、台湾に衝撃 頼政権の後手対応に批判噴出
風評:頼政権の「二国論」憲法解釈、矛先は中国出身配偶者に 職解任も
舞台裏》台湾・国民党主席選、台中市長が不出馬 反朱立倫派は対抗馬擁立へ
驚愕!エアアジア航空便が仁川ではなく金浦に着陸、乗客と乗務員も驚く
天気予報》再び台風発生か 専門家「ダブル台風」形成の恐れ 週末は猛暑の可能性
H20輸出許可の裏で米中駆け引き激化 NVIDIAに中国使用制限の打撃
トランプ・プーチン会談、アラスカで15日開催 トランプ氏「数分で交渉の見通し判断」
トランプ政権、親中批判から一転 インテル出資を極秘協議 TSMC誘致に続く半導体戦略か
神社の踏切で台湾人女性死亡 観光撮影中に列車と衝突か
親台派日本紙が賴清德氏を批判 大規模リコール「与党掌握」の予測外れる
北京観察》終戦記念日前夜、靖国参拝が外交問題に 日中関係に再び亀裂か
台湾・柯文哲氏の拘置所生活 獄中で軍事要人の著書を精読 書き込みが示す次の一手
「領土割譲和平」は誰の発案か 『エコノミスト』が暴く米特使の失策と交渉悪化の経緯
長崎原爆式典、台湾代表席めぐり波紋 「NGO区」報道に市が反論
トランプ氏、プーチン氏に停戦迫る構え 米露会談はアラスカ軍事拠点で 領土交渉権はゼレンスキー氏に
中露の極秘軍事協定が流出 プーチン氏、中国の台湾侵攻演習支援か 8年越し計画の存在明らかに
台湾外交部長・林佳龍氏が高市早苗氏と会談 日本政権交代を見据えた賭け 中国反発で外交リスクも
トランプ氏、ノーベル平和賞受賞の可能性?元側近が明かす国務省のプレッシャーと各国の強力な推薦
FPCJが50周年記念ロゴ公募開始 年齢・国籍不問、締切は2025年9月16日
米露首脳会談が世界情勢に影響か!退役将軍が台湾に言及 米台貿易「前向きシグナル」:合意達成のタイミング
国際ニュース特集》北京、企業にNvidiaチップ購入の自粛要請。70万個の大型注文取消しか―なぜ中国はNvidiaにひかれつつも恐れるのか?
関西万博が陸の孤島化 地下鉄全線ストップで帰れず 来場者が会場内で一夜 猛暑で熱中症相次ぎ33人搬送
天気予報》台風11号去って猛暑到来 台湾南部は36℃超え、午後は中南部で雷雨・大雨、熱中症警戒
トランプ氏、ワシントン警察を電撃接管し州兵800人派遣 大統領に権限はあるのか問う声
台湾・内政部長の「二国論」発言火消しか?頼清徳氏による両岸関係の微調整に兆し
中国の「レアアースの都」に潜入:世界を脅かす武器を握る中国、その対価とは?