インドのナレンドラ・モディ首相は、独立79周年を迎えた式典で103分に及ぶ演説を行い、今後インドは肥料からジェットエンジン、電気自動車用バッテリーに至るまで国産化を推進し、自給自足をさらに強化すると強調した。トランプ米大統領や米国の関税政策には直接言及しなかったが、農民の利益を守る姿勢を鮮明にした。
モディ首相はニューデリーのレッドフォートから全国に向けて演説し、「農民、漁民、牧畜民は私たちの最優先事項です。私は彼らを守る壁となり、利益を脅かす政策から断固として守る」と述べた。自身の与党・インド人民党(BJP)の最大の支持基盤である農民にメッセージを送った格好だ。
Indian Prime Minister Narendra Modi urged the country to move towards more self-reliance, manufacture everything from fertilisers to jet engines and EV batteries, and vowed to protect farmers in the face of a trade conflict with Washingtonhttps://t.co/B6URZ1F0aP
— Reuters (@Reuters)August 15, 2025
一方、米国のトランプ大統領はインドがロシアから原油や軍需品を購入し続けていることに不満を示し、インド製品への関税を50%に引き上げる意向を表明している。しかし、専門家や海外メディアは「ロシア要因は口実にすぎず、真の対立の焦点はインドが米国産農産物や乳製品の大量輸入を拒否している点にある」と指摘する。これらが解禁されれば、インドの農業や畜産業界に深刻な打撃を与え、与党の重要な支持基盤を揺るがしかねないからだ。
モディ首相は演説の中で「スワデシ(国産品)」の推進を呼びかけ、商店や企業に国産品であることを示す表示を掲げるよう訴えた。今年末にはインド製半導体が市場に出る予定であり、政府は重要鉱物の自給体制構築のため1200カ所以上で探査を進めているとも明らかにした。

政府関係者によれば、演説の草稿段階では米国関税問題への直接的な表現もあったが、前夜にスタッフが調整し、可能な限り削除したという。交渉チームは今も解決策を模索しており、インド経済と貿易への影響を最小限に抑える狙いがある。
市場関係者の試算では、もし米国が50%関税を発動すれば、繊維、靴、宝飾品などインドの主要輸出産業が直撃を受け、ニューデリーにとって最大の輸出市場を失う恐れがある。

米国との亀裂は数十年来で最も深刻なものとなり、国内では対米不信感が再燃。モディ首相の一部支持者の間では、マクドナルドやコカ・コーラ、アマゾン、アップルなど米国企業のボイコットを呼びかける動きも出ている。
シンガポール国立大学南アジア研究所のモハン客員教授は「米国からの露骨な圧力により、インドは非常に厳しい立場に置かれている。モディ首相は支持者に屈する姿を見せるわけにはいかない。現実的な手法で米国と妥協し、双方が受け入れ可能な解決策を見出せるかが鍵だ」と分析している。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: トランプ関税がインドの「親ロ」を追撃、世界の石油価格高騰の恐れ! 『エコノミスト』警告:中国が漁夫の利を得る | 関連記事をもっと読む )