ソフトバンクグループ(SoftBank Group)の創業者である孫正義氏は、人工知能(AI)分野への積極的かつ的確な投資によって、同社の株価を歴史的高値へと押し上げた。その結果、自身の資産もこの8月前半のわずか2週間で約90億ドル(約1兆3,200億円)増加し、資産規模の大幅な回復を果たした。
米ブルームバーグの『億万長者指数』によれば、孫氏の純資産は現在313億ドル(約4兆6,000億円)に達し、日本国内ではユニクロを展開するファーストリテイリング創業者の柳井正氏に次ぐ「第2の富豪」となった。孫氏はAI関連だけでなく、半導体製造、ソフトウェア、新興企業にまで広がる多様な投資ポートフォリオを抱え、その影響力をさらに強めている。
In the first two weeks of August alone, Masayoshi Son has added $9 billion to his fortune as SoftBank’s AI bets sent its shares to record highshttps://t.co/s8dwg3kspA
— Bloomberg (@business)August 14, 2025
孫氏は、ソフトバンクの巨大投資ファンド「ビジョンファンド(Vision Fund)」による利益や、一部持株売却から得た資金をもとに、AI関連投資を一段と拡大。3月にはNVIDIAや台湾TSMCの株を購入した。AI分野に「バブル懸念」が指摘される中でも臆せず投資を進め、その後の株価上昇とソフトバンクの利益増大を背景に、日本市場でのAI投資ブームの象徴となった。
さらに、米オハイオ州の鴻海(Foxconn)グループが保有していた電気自動車工場を買収したことも市場にポジティブなシグナルを与え、ソフトバンク株を押し上げた。

もっとも、孫氏の資産の軌跡は順風満帆ではなかった。2000年のインターネットバブル期には一時、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏を上回り「世界一の富豪」と報じられたが、その後の株価暴落で約700億ドル(約7兆円)を失った。その後20年間で、アリババへの初期投資の大成功や、日本市場でのiPhone独占販売権の獲得といった事業展開により資産を持ち直した。
しかし、2020年以降、中国政府による大手テクノロジー企業への規制強化や、2022年の世界的なハイテク株急落により、ソフトバンクのビジョンファンドは巨額の損失を計上。孫氏の資産も再び急落した。直近2年間は短期的な利益を得る局面もあったものの、全体的には資産減少の流れが続いていた。

こうした挫折を受け、一時期は守りの投資戦略に転じたが、約3年後のAIブーム到来を契機に再び攻勢に出た。AI関連ハードウェアや半導体分野への集中的な投資が奏功し、巨額の資産回復を実現。孫氏自身が「AIは人類史を塗り替える」と語るように、強い信念と投資判断が今回の急成長を支えた格好だ。
現在、孫氏は日本第2位の富豪として再浮上したが、それは単なる個人の資産増加にとどまらず、日本市場におけるAI関連投資の加速を象徴する動きとみられている。
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