8月15日、終戦から80年を迎え、日本政府主催の「全国戦没者追悼式」が東京都千代田区の日本武道館で開かれた。第二次世界大戦で犠牲となった約310万人を追悼し、平和への決意を新たにした。
厚生労働省によると、今年事前に出席を表明した戦没者遺族は約3,400人で、このうち戦後生まれの割合が初めて半数(53%)を超えた。戦争体験世代の減少に伴い、記憶の継承が課題となっている。出席者の最年長は98歳の北海道在住・長屋昭次さん(兄が戦没)、最年少は3歳の片山純矢さん(戦没者・伊藤正夫さんのひ孫)だった。
式典開始前、石破茂首相は午前11時過ぎに千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、身元不明の戦没者遺骨に花を供え、深く一礼して冥福を祈った。この墓苑には、海外戦地などで亡くなり、氏名が判明せず遺族に戻せなかった遺骨が納められている。
追悼式は午前11時51分に始まり、国歌斉唱と石破首相の式辞の後、正午の時報に合わせて1分間の黙祷を実施。続いて天皇陛下がお言葉を述べられた。

就任後初めて追悼式に臨んだ石破首相は、天皇皇后両陛下や遺族、各界代表を前に「戦争で300万人を超える同胞が命を落とし、広島・長崎の原爆や各地の空襲、沖縄戦などで多くの民間人も犠牲となった。今日の平和と繁栄は、尊い命と苦難の歴史の上に築かれており、国民は決して忘れない」と述べ、深い敬意と感謝を示した。

また、いまだ多くの戦没者遺骨が帰還していない現状に触れ、「政府は決して忘れず、一日も早く遺骨を故郷に戻す」と強調。戦争から80年を経て、国民の大半が戦争を知らない世代となった今こそ、「過ちを繰り返さず、反省と教訓を心に刻むべきだ」と訴えた。さらに、日本はこの80年間平和国家として歩み、世界の平和と繁栄に貢献してきたと述べ、「時が経っても、戦争の記憶と不義に立ち向かう誓いを次世代に伝え、恒久平和の実現に向け行動を続ける」と表明。分断を排し、寛容を促し、未来世代により良い世界を残す決意を示した。
天皇陛下は「追悼戦没者並びに平和祈念の日」にあたり、「戦争で命を失った方々とご遺族を追悼し、深い悲しみを新たにする」と述べられた。戦後80年間、国民のたゆまぬ努力により平和と繁栄が築かれたことに触れ、「戦中・戦後の苦難の道のりを語り継ぎ、国民が心を一つに平和と人類の幸福を追求することが大切」と強調。「深い反省」に立ち、戦争の惨禍が再び繰り返されぬよう願いを込め、戦没者に追悼の意を表し、世界平和と日本の一層の発展を祈られた。
また、戦中や戦後の艱難の記憶を語り継ぎ、国民が心を一つにして平和と人類の幸福を長く追求する必要性を強調。「深い反省」に立ち、戦争の惨禍を二度と繰り返さないことを切に願うと表明し、国民と共に戦場や戦禍で亡くなった人々に心から哀悼の意を表するとともに、世界の平和と日本の一層の発展を祈念した。
午前8時前には、農林水産大臣の小泉進次郎氏が東京・靖国神社を参拝し、石破内閣の閣僚として初の参拝となった。石破首相は参拝せず、自民党総裁名義で私費による玉串料を奉納する予定。前経済安全保障担当大臣で衆議院議員の小林鷹之氏も午前中に参拝し、私費で玉串料を納めた。小林氏は参拝後の取材に対し、「祖父は中国で戦死した。遺族として参拝し、平和を断固として守るため全力を尽くす決意を改めて強くした」と語った。
このほか、安倍派の元幹部で前文部科学大臣の萩生田光一氏も参拝した。野党では、日本保守党の百田尚樹代表が既に参拝しており、参政党は神谷宗幣代表が議員団を率いて参拝する予定だ。
厚生労働省によると、参列する遺族の高齢化が進んでおり、戦没者の配偶者は4年ぶりにゼロとなった。一方で、甥や姪、孫など戦後生まれの割合は年々増加しており、今回は約53%と過去最高を記録。戦没者の父母は2011年以降、追悼式に出席していないという。
編集:梅木奈実 (関連記事: 北京観察》終戦記念日前夜、靖国参拝が外交問題に 日中関係に再び亀裂か | 関連記事をもっと読む )
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