台湾の頼清徳政権は、世論の高まりと社会的信頼の失墜を受け、ついに記者会見を開き「付加関税」が台湾経済に与える影響を認めた。ただし、農民や労働者、中小企業など、譲ることのできない利益について具体的な保障は依然として示されていない。政府が適切な説明を行い、企業が状況を把握し対応策を立てられれば、国民の信頼回復にもつながるはずだ。市民が知りたいのは、米大統領の要求を受け入れる中で、台湾がなおどの程度の損失を負うのかという点である。
出遅れた交渉、成果は見えず
行政院副院長の鄭麗君氏は早々にワシントン入りし、交渉を開始してからすでに4か月。しかし、関連法案や産業界に関わる交渉の詳細は一切明らかにされず、ホワイトハウスの公式発表によって初めて「税率20%」が判明した。鄭氏は「密室交渉ではない」と繰り返すが、その戦略ビジョンは「台米AIセンター」という抽象的な言葉にとどまり、米国との具体的な交渉経路も不透明なまま。産業界や国民の疑問に応える説明は見られない。
鄭氏は「税率を32%から20%に下げる交渉は困難だった」と繰り返す。しかし、その20%が「付加関税」であることは、政権が大規模なリコール運動を乗り越えた後に明らかになった。経済貿易代表の楊珍妮氏は台湾の高関税がもたらす直接的影響には触れず、他国の対応策に話題をそらした。一方、政務委員の龔明鑫氏は農漁業の蘭やキハダマグロ、製造業の工作機械などが甚大な打撃を受けていることを公表。トランプ氏の「関税の斧」で混乱する中、日韓の競合企業は台湾産業に対して一気に優位性を獲得した。地元の工作機械業者からは「注文を取れば死ぬ、取らなくても死ぬ」と悲痛な声が上がり、総工会も「40年来で最悪の状況」と政府に訴えている。
アジアの孤児、風の中で泣く
米国向け輸出の柱である工作機械、繊維、プラスチック、自転車、ボルト産業は、台湾ドルの12%高によって既に深刻な打撃を受けている。ここに20%の「付加関税」が加われば、まさに追い討ちだ。関税が利益率を上回れば市場から締め出され、生き残る余地はない。民進党は「付加関税がないのは欧州連合だけ」と主張するが、実際には日本、英国、イスラエル、トルコも対象外だ。米国とFTAを結ぶシンガポールや韓国に比べ、台湾製品は競争力で劣り、高関税が発動される日は、工場閉鎖と失業の波が押し寄せる日となる。

政府には国民に十分な情報を開示する責任があるが、現状では不透明なまま、企業や市民は先行きへの不安に包まれている。頼政権の急務は「一時関税」の説明や通知時期の議論ではなく、交渉チームの再編だ。米国と改めて協議し、より低い水準での「付加なき関税」を勝ち取り、「232調査」に基づく技術関連の関税を撤廃させることが必要である。国内では、十分な情報提供と支援によって、企業がこの難局を乗り越えられる環境を整えるべきだ。 (関連記事: 評論:台湾政府、無能から無頼へ 関税交渉でまさかの完敗 | 関連記事をもっと読む )
頼政権の対米交渉は、内政と外交の両面で国民の支持を背にする必要がある。しかし、その説明と訴えは、かつて馬英九政権が《両岸経済枠組み協定》(ECFA)交渉で行った農業・労働・中小企業保護の公約や国会・社会への説明には遠く及ばない。当時は、譲れない利益を明確にし、それが国民の信頼を支える後ろ盾となった。