台湾の秘密核計画を暴いた男 亡命科学者・元CIAスパイ張憲義氏の告白

2025-08-12 17:01
張憲義と中研院副研究員陳儀深による口述訪談『核弾! スパイ? CIA:張憲義訪問記録』。
張憲義と中研院副研究員陳儀深による口述訪談『核弾! スパイ? CIA:張憲義訪問記録』。

1988年1月、台湾総統・蔣経国が亡くなる前日、一人の科学者が家族と共に米国へ亡命した。張憲義氏──かつて中科院第一所(現・原能会核能研究所)の副所長を務めた核エンジニアであり、米中央情報局(CIA)に台湾の核兵器開発計画の全貌を提供した人物だ。
張氏の行動により、台湾は「核保有」という国家方針を実現できなかった。ブルームバーグが8日に公開した長編インタビューでは、多くの台湾人が彼を「裏切者」と見なす一方、「過小評価された英雄」として、世界を核災害の危機から救ったと評価する声もあると報じた。

当時の国際環境や両岸関係は現在とは大きく異なっていたが、広島・長崎への原爆投下から数十年を経て、世界は再び危険で予測困難な核時代に入っている。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルと米国によるイラン攻撃、そしてドナルド・トランプ米大統領の信頼性への疑念が、「誰が核兵器を持つべきか」という国際的共通認識を揺さぶっている。

中国は急速に核戦力を拡大しており、日本や韓国でも核兵器保有の是非を巡る議論が強まっている。さらに、米露間の「新戦略兵器削減条約(New START)」は来年失効予定であり、延長されなければ両国の核兵器数は制御不能となる恐れがある。
米ワシントンのカーネギー国際平和財団で核政策を研究するアンクィット・パンダ上級研究員は、「状況は改善する前に悪化し、冷戦後初めて本格的な軍拡競争が始まるだろう」と警告している。

張憲義1988年叛逃到美国,告知美国台湾发展核武的计划。(BBC中文网)
1988年、張憲義氏は米国に亡命し、台湾の核兵器開発計画を米側に伝えた(写真/Xより)

ブルームバーグによると、張憲義氏はテネシー大学で核工学博士号を取得し、台湾の秘密兵器計画において最も経験豊かな核エンジニアの一人だった。米国は台湾防衛を約束し、核の傘の下に置いていたが、台湾の指導部は「自前の核兵器こそ最良の防御」と信じていた。

CIAは核拡散を阻止するため、張氏に接触し、彼の提供する情報をもとに台湾政府へ圧力をかけ、核兵器開発計画の放棄を迫った。

張氏はインタビューで、自らの行動は純粋にイデオロギーに基づくものであり、映画のような現金の詰まったスーツケースや脅迫で動いたわけではないと語った。米国に亡命して数十年が経つが、台湾情勢は大きく改善していないとしながらも、「台湾と中国が共存できることを示せたことが、自らの行動の正しさを証明している」と述べた。 (関連記事: 風傳媒世論調査》台湾で脱原発に逆風?「核三」再稼働に58.7%が賛成 住民投票の行方は 関連記事をもっと読む

東風-41諸元。(取自網路)
「東風-41」の諸元・

台湾の核兵器開発計画は1964年、中国がタクラマカン砂漠で原爆実験を成功させ「核クラブ」入りしたことに端を発する。この事態は台湾と米国に不安を与え、米国は台湾に核兵器を配備した。
しかし蒋介石総統は「新竹計画」を指示し、原子力発電開発を装って秘密裏に核兵器開発を推進した。この構図は、現在の西側諸国がイランの核開発を批判する状況に酷似している。
当初、台湾は米国政府に計画を隠していたが、1968年に張氏が秘密兵器計画に参加。1969年にはテネシー州に派遣され、この頃からCIAが彼に関心を寄せ始めた。当時の張氏は台湾に核兵器が必要だと強く信じ、米側の接触を断っていた。「台湾も原子爆弾を持つべきだ」というのが当時の信念だった。

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