核兵器が再び矛先に?ロシア、INF条約の一方的遵守を停止

2025-08-06 12:15
ロシアのプーチン大統領は西側諸国が提案する和平交渉を度々拒否し、ウクライナに対してクリミア半島と東部4州におけるロシアの主権を認めるよう要求を続けている。(写真/AP通信提供)
ロシアのプーチン大統領は西側諸国が提案する和平交渉を度々拒否し、ウクライナに対してクリミア半島と東部4州におけるロシアの主権を認めるよう要求を続けている。(写真/AP通信提供)
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ロシア外務省は8月3日、公式声明を発表し、2019年以降維持してきた中短距離ミサイル配備の一方的停止方針を終了すると表明した。これにより、世界の核軍備管理体制は一層悪化し、新たな軍拡競争を引き起こす可能性がある。

外務省の声明によれば、モスクワが中短距離ミサイルの一方的な配備停止を続ける前提条件は「もはや存在しない」としている。ロシア側は、米国とそのNATO同盟国がロシア国境周辺およびアジア太平洋地域において、実質的に射程500~5500キロのミサイルシステムを配備していると非難した。これらの行動は、すでに失効した中距離核戦力(INF)条約の精神に反するとモスクワは主張している。

米国の核潜水艦展開に対するロシアの強い反応

今回の発表は、米国のドナルド・トランプ大統領が8月1日、核兵器を搭載した2隻の潜水艦をロシア近海に接近させるよう命じた直後に行われたものである。ロシア安全保障会議副議長で前大統領のドミトリー・メドベージェフ氏は、SNS「X」に投稿し、「これはすべての敵対勢力が直面すべき新たな現実だ」と述べた。

メドベージェフ氏は、この決定を「NATO諸国の反ロシア政策の帰結」と表現し、ロシアが今後さらなる軍事的対抗措置を取る可能性を警告した。クレムリン報道官のドミトリー・ペスコフ氏も、以前の警告を改めて繰り返し、NATOがロシアの設定したレッドラインを越えた場合、相応の軍事行動を取ると述べた。

ロシア外務省は4日に発表した詳細声明で、米国およびNATO諸国による複数の「挑発的なミサイル配備」行動を具体的に非難した。ロシア側は、米国がデンマークにMK70移動式発射機を移転させてNATO演習に参加させたことや、ここ数か月でフィリピンとオーストラリアに「タイフォン(Typhon)」ミサイルシステムを供与したことを指摘した。最も注目されるのは、米陸軍が7月の軍事演習「セイバー・ストライク(Saber Strike)」期間中にオーストラリアで「ダーク・イーグル(Dark Eagle)」極超音速ミサイルを配備したとの指摘である。さらに外務省は、米国製の精密打撃ミサイル(PrSM)がパラオ共和国から試験発射され、HIMARSおよびM270多連装ロケットシステムに統合されており、これらの兵器は現在ウクライナ戦場やドイツ、さらに複数のアジア太平洋同盟国に展開されていると強調した。

INF条約の失効後の軍備管理の空白

ロシア外務省は声明で「米国およびその同盟国のこれらの行動は、ロシア国境周辺に不安定なミサイル攻撃能力を継続的に蓄積させ、地域および世界の戦略的安定に深刻な悪影響を及ぼし、核保有大国間の軍事的緊張を危険なまでに高めている」と指摘した。 (関連記事: プーチン、欧州の裏庭に新たな火種?ロシアの影が再びバルカンに EU「30年に一度の政治危機」と警告 関連記事をもっと読む

中距離核戦力(INF)条約は1987年、米国のロナルド・レーガン大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ書記長によって締結され、射程500~5500キロの地上発射型弾道ミサイルおよび巡航ミサイルの配備を双方に禁止した。冷戦期の軍備管理における重要な成果とされ、欧州における中距離核兵器の脅威を実質的に排除した。

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