スイスは近く、経済と外交の双方で衝撃に見舞われた。米国のドナルド・トランプ大統領が、事前の予告もなくこの富裕な中立国に対し、輸入関税39%という高率措置を発表したのである。これによりスイスの株式市場は急落し、国内メディアは現職の輪番制大統領カリン・ケラー=ズッター氏に矛先を向けた。トランプ氏との電話会談における対応の不手際が、最終的な交渉決裂を招いたのではないかとの疑念が広がっている。
英紙『ガーディアン』によると、スイスは高級腕時計や宝飾品、チョコレート、精密機械、医薬品などで知られ、これらは同国の主要輸出品でもある。三か月に及ぶマラソン交渉を経て、スイス政府はワシントンとの協議がまとまり、最低水準の10%関税を勝ち取ったと考えていた。これにより、4月に発表された31%関税への不安から解放されるはずだった。ところが、ホワイトハウスの最新発表は政界も国民も愕然とさせた。関税率は下がるどころか引き上げられ、各国の中でも屈指の高水準となったのである。
Trump slaps 39% tariff on Switzerland after alleged 'disastrous' phone call with Swiss presidenthttps://t.co/RTRyTlSeWZpic.twitter.com/TxoEK2cdDm
— Mothership (@MothershipSG)August 5, 2025
では、この結果の責任は誰が負うべきなのか。スイスの全メディアは一斉に現職大統領カリン・ケラー=ズッター氏に視線を向けた。今年元日の就任以来、同国を率いる女性政治家である。現地報道によれば、政府関係者の話として、ホワイトハウスの発表前にケラー=ズッター氏はトランプ氏に電話をかけ、30分に及ぶ通話を行ったという。内部の証言では、このやり取りは「感情的」「悲惨」「判断ミス」と評され、彼女の対応がトランプ氏を怒らせ、スイスに大きな変化をもたらした可能性が指摘されている。
他のメディアも容赦がない。タブロイド紙『ブリック』は一面で「トランプを前に、ケラー=ズッター氏はあまりに無邪気すぎた!」と断じた。地方紙『24 heures』も「この通話は本来、ケラー=ズッター氏の政治人生を彩る代表作となるはずだったが、結果は彼女にとって最悪の失敗となった」と辛辣に報じている。

しかし、メディアからの集中砲火に対し、スイス連邦政府は強く否定した。今回の通話が直接トランプ氏の態度を硬化させたわけではないとし、「双方の会話は芳しい結果を生まなかった」とだけ認めた。また、政府関係者は、トランプ氏とそのチームは当初から10%の関税では不十分であるとの姿勢を示していたと明かしている。スイス内閣は緊急会議を開いた後、声明を発表し、より魅力的な提案を準備し、貿易摩擦の緩和を図る方針を示した。
スイス大統領とはそんな人物か?
他の民主国家とは異なり、スイスは「輪番制大統領制」を採用している。スイス連邦評議会の7人の評議員の中から毎年1人が選出され、任期は1年で再任は不可である。大統領は会議の議長を務める立場にあるが、権限は他の評議員より上位ではない。
現職のカリン・ケラー=ズッター大統領は61歳で、出身はザンクト・ガレン州。チューリッヒ通訳学院(Dolmetscherschule Zürich)の通訳ディプロマ、フリブール大学の教育学修士号を持ち、政治家になる前は長年にわたり語学教師として勤務していた。1992年に地方市議会から政治活動を始め、州議会を経てキャリアを積み上げ、2019年に連邦評議会入り。2024年には副大統領を務め、翌2025年に輪番制大統領に就任した。
Begegnungen mit Prinz William, Prinzessin Charlotte, Prinzessin Leonor, Infantin Sofía und ein packendes Spiel zum Schluss. Die @WEURO25 war ein perfektes Fest. Danke! And remember: In Switzerland, even if you lose, you win! 🇨🇭pic.twitter.com/PAWNJFLhOn
— Karin Keller-Sutter (@keller_sutter)July 27, 2025