2024年の台湾総統選では、野党の国民党(藍)侯友宜氏と民衆党(白)柯文哲氏が分裂して戦い、両陣営の得票合計は与党・民進党(緑)の賴清徳氏を上回った。しかし、三つ巴の構図で賴氏が約4割の得票を確保し、そのまま当選した。7月に実施された全国規模の「726大リコール」は失敗に終わり、国民党にとっては意外な成果となった。この投票結果は、藍白が連携すれば民進党を上回る可能性を示す一方、2026年の地方選挙に向けて両陣営がどのように協力するかが大きな課題となることを浮き彫りにした。
2026年の首長選で藍白が競合する可能性があるのは、宜蘭県、新竹市、嘉義市などだ。特に注目されるのは、リコール運動で存在感を強めた黄国昌氏(民衆党)が、新北市長選に出馬するかどうかである。大リコール後、国民党支持層にも黄氏の人気は広がりつつあり、彼の動向は新北市長選の最大の変数となる。これが国民党主席選びにも影響を与える可能性がある。

黄国昌氏、新北市の最適な選択肢に 侯友宜氏、党内で不安
黄国昌氏は7月27日のネットインタビューで「2026年の新北市長選では、自分が最良の選択肢になる」と語った。一方で、国民党と協力し、候補者調整を通じて新北市を守る意向も示している。リコール後、黄氏と民衆党はさらに勢いを増し、国会運営でも存在感を強めている。現職の新北市長・侯友宜氏は、リコール対象と目された国民党議員・葉元之氏を守りきった実績から、2026年は副市長の劉和然氏を後継候補として全力支援する方針だ。しかし党内には、「民衆党との調整なしでは藍白分裂のリスクが残る」との不安もある。

国民党、新北市で李四川氏に期待 黄国昌氏、リコール後さらに強まる
地元関係者によると、藍白が分裂した場合、国民党候補は強力な支持基盤を固め、白陣営候補の得票を1割以下に抑え、50%前後の得票で民進党の約40%を上回る必要があるという。しかし、リコールを経て藍白の連携は深まり、黄氏の勢いも増しているため、今後の展開は予測が難しい。
リコール期間中、国民党内では李四川氏(台北市副市長)を次期新北市長の有力候補として積極的に推す動きがあった。李氏は都市計画を担当し、大規模開発から道路の陥没対応まで手腕を発揮しており、現場感覚のある実務家として知られる。台北市政の業務により、一部のリコール支援イベントがキャンセルされることもあったが、地元では「李氏が早期に出馬を表明してほしい」との声が強まっている。
リコール中、南港や港湖地区では、国民党の李彥秀議員と廖先翔議員が協力して街頭活動を展開。別日には侯友宜氏と李四川氏も同じエリアを訪問した。市場を回る侯氏が売り手一人ひとりに声をかける姿は好感を持って受け止められたという。李氏の評価は「6割程度」とされ、地元は2026年の農暦前にも出馬を明確にしてほしいとの期待を寄せている。ただし、8月23日のリコール投票や年末の党主席選、さらに台北市議会の予算審議の関係で、正式表明はもう少し先になる見込みだ。
盧秀燕氏は沈黙続く 国民党主席選で本土派が擁立模索
国民党主席選では、現職の朱立倫氏がリコール第2段階後に「円滑なバトンタッチを希望する」と表明した。しかし、有力視される台中市長の盧秀燕氏は未だ動きを見せていない。このため、党内本土派は代理候補の擁立を模索し、人気のある李四川氏に党主席選出馬を打診している。李氏が主席になれば、盧氏の後継として党を守り、2026年に新北市長選へ挑む道も開ける。黄国昌氏が本当に出馬する場合、藍白の党主席が選挙戦を指揮する構図となり、国民党に有利な展開もあり得る。
《風傳媒》の取材に対し、李四川氏は新北市長選への意向や党主席選への勧誘について「黄国昌氏の勢いは非常に強い。藍白の連携が民進党のリコール攻勢を防ぐ鍵になる」と評価した。一方で主席選については否定せず、「自分はもうすぐ退職する身で、党主席の大役を担う力はない」と笑顔で答えた。
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