親中路線を強めるトランプ氏 頼清徳総統を冷遇か?米中「取引外交」に警鐘

2025-08-01 12:35
トランプ氏は米国大統領として北京を訪問し、習近平氏は紫禁城で宴を開いてもてなした。(AP通信)
トランプ氏は米国大統領として北京を訪問し、習近平氏は紫禁城で宴を開いてもてなした。(AP通信)
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米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係学部のホワイト教授は30日、『ブルームバーグ』への寄稿で、トランプ大統領の対中姿勢に警鐘を鳴らした。ホワイト氏は、米国内では超党派で中国を最も危険な競争相手とする認識が広がっているものの、トランプ氏はその共通理解を崩しかねないと指摘。習近平氏への譲歩と頼清徳総統への冷遇という「取引主義」が、米台関係を明らかに損ねていると述べた。

ホワイト氏は、トランプ氏の初任期の対中政策は、過去25年間の「中国は責任ある利害関係者となり得る」という見方を覆した歴史的成果だったと評価する。しかし、最新のコラムでは、トランプ氏の交渉姿勢が「悪い取引」へと傾き、米国の世界的リーダーシップを弱体化させていると批判した。トランプ氏は共和党内での影響力を利用し、この危険な方針への反対の声を封じ込めているという。

トランプ氏は、かつて中国が「米国の価値観や利益に反する世界を作ろうとしている」と認識していたが、今やその警戒心は後退している。バイデン前政権が打ち出した半導体輸出規制や対台武器供与、Quadの政策基盤は形骸化した。ホワイト氏は、トランプ氏を「習近平氏との良好な関係を追求する矛盾した冷戦主義者」と評し、米国の対中戦略が「大国競争」と「米中取引」の間で揺らいでいると分析する。

トランプ氏、北京寄りに転じる

トランプ氏は、新型コロナウイルスのパンデミック当初には中国と激しく対立し、感染拡大の責任を全面的に北京に押し付けていた。その頃は政権内の対中強硬派も一時的に優勢で、トランプ2.0の始動時にはルビオ氏を国務長官に、ウォルツ氏を国家安全保障顧問に任命し、再び強硬路線が前面に出た。しかし時間が経つにつれ、耳に入るのは不穏なニュースばかりとなった。

今年4月、トランプ氏は「解放日」関税を宣言したが、中国は対抗措置としてレアアースの輸出を禁止し、市場には経済崩壊の恐怖が広がった。政権は次第に強硬姿勢を後退させ、やがてウォルツ氏が退任、ルビオ氏が国務長官と安保顧問を兼務する体制に変わると、政権内の対中タカ派色は急速に薄まった。ルビオ氏は強硬派として知られる一方で、トランプ氏に全面的に忠実であるため、政策決定の柔軟性が増したとみられる。

こうして制約を失ったトランプ氏は、新たな輸出規制やハイテク関連の制限を段階的に撤廃し始めた。7月中旬には、NvidiaのH20チップを中国に輸出することを承認。この譲歩は、中国のAI技術革新や軍事能力強化を助ける可能性が高いとみられ、政権の輸出規制全体が調整されつつあることを示唆する。さらに今後、テクノロジー分野での規制緩和が一層進む可能性もある。

ホワイト氏は、米国の技術力は経済・軍事両面で優位を保つための「王冠の宝石」であると強調し、これすら譲歩する背景には、トランプ氏が北京訪問を実現させ、習近平氏と包括的な貿易協定を結びたい思惑があると指摘する。結果として、頼清徳氏を冷遇する一方で、こうした取引主義が米台関係を揺るがし、米国の利益をむしばみつつある。

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