戦後80年──米軍記録映像が語る知られざる「戦争の実像」 映像解析で次世代へ記憶をつなぐ

2025-07-31 18:44
公益財団法人フォーリンプレスセンター(FPCJ)は7月24日、航空戦史研究家・織田祐輔氏を招き、「戦後80年──米軍撮影の映像記録から解き明かす戦争の実像」をテーマにブリーフィングを開催した。(写真/FPCJ提供)
公益財団法人フォーリンプレスセンター(FPCJ)は7月24日、航空戦史研究家・織田祐輔氏を招き、「戦後80年──米軍撮影の映像記録から解き明かす戦争の実像」をテーマにブリーフィングを開催した。(写真/FPCJ提供)
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戦後80年、FPCJブリーフィングで航空戦史研究家・織田祐輔氏が講演

公益財団法人フォーリンプレスセンター(FPCJ)は7月24日、航空戦史研究家の織田祐輔氏を招き、「戦後80年──米軍撮影の映像記録から解き明かす戦争の実像」をテーマにブリーフィングを開催した。

米軍機に搭載されたガンカメラなどの実戦映像を解析することで、従来の史料では見えにくかった戦争の断面を明らかにする取り組みを紹介。あわせて、映像という視覚情報をどのように戦争記憶の継承に生かすかについても語られた。

地元から始まった戦争記録研究

織田氏は冒頭、自身が関わる「豊の国宇佐市塾」の活動を紹介した。

同団体は1987年、大分県の地域活性化事業の一環として設立され、1989年に宇佐市出身の偉人調査、1990年には旧宇佐海軍航空隊の調査を開始。その成果は書籍としても発表され、地域に残る戦争の記憶の掘り起こしに取り組んできた。

米国アーカイブ映像の収集と解析の歩み

本格的な映像記録の収集は2011年、宇佐海軍航空隊への空襲映像が米国の民間サイトで公開されているのを発見したことから始まった。

著作権の制約があったため、自由に使用できる映像を求めて米国国立公文書館(NARA)に直接請求を行い、2012年以降は定期的に映像を収集。これまでに計336本・約54時間分の映像を取得し、11の国・地域、400カ所以上の撮影地を特定した。そのうち日本国内は350カ所以上を占めるという。

映像解析で「戦争の実像」を可視化──5W1Hで読み解く米軍記録

織田祐輔氏は、米軍が撮影した戦争映像の解析手法について説明した。

まず映像に映る地形や建物、航空機などを手がかりに撮影場所や時期を推定。戦時中や終戦直後の航空写真、公文書と突き合わせることで特定を進める。さらに日米双方の戦闘報告書や証言を組み合わせ、最終的に「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように(5W1H)」撮影したのかを明らかにしていくという。

映像が示す資料的価値と歴史修正の力

織田氏は「こうした解析によって、従来は曖昧に使われてきた戦争映像に確かな資料的価値を与えられる」と語る。

たとえば、1945年4月14日に沖縄北東で特攻機が米艦への突入を試み、対空砲火で撃墜された場面を収めた映像を紹介。搭乗員の園部勲氏がパラシュートで脱出し、米軍に救助される一部始終が記録されており、後の尋問記録とも一致する。この映像は、戦時下における「個人の運命」を伝える貴重な一次資料だ。

また、映像は公文書の裏付けにもなる。1945年3月18日、宇佐海軍航空隊空襲時に滑走路を横切る日本兵を米軍が機銃掃射したとする報告書は、映像内に映る小さな人影の動きによって裏付けられた。 (関連記事: 舞台裏》日本と台湾の53年の禁忌を突破 林佳龍外交部長が東京都を訪問 関連記事をもっと読む

一方で、米軍報告書には記載されない「不都合な真実」も映像から浮かび上がる。1945年4月16日、沖縄沖に不時着した日本軍機と搭乗員が米軍機による機銃掃射で殺害された事例は、映像で確認されたが、撮影部隊の報告書には一切記載がなかったという。

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