防衛省は7月30日、海上自衛隊の潜水艦修理契約に絡む一連の不正行為について、特別防衛監察の最終報告書を公表し、関係した自衛官93人に対する処分を発表した。処分対象には、現職の海上幕僚長である斎藤聡海将も含まれており、「指揮監督義務違反」により減給1か月(俸給の10分の1)の懲戒処分となった。
特別防衛監察の最終報告を公表
問題の発端は、大阪国税局の税務調査により、川崎重工業(KHI)が下請企業との架空取引を通じて裏金をプールし、潜水艦乗組員に対して私物の提供を行っていた実態が明らかになったことによる。防衛省によれば、この不正は40年以上にわたり続いており、2018年度から2023年度までの6年間で少なくとも約17億円の裏金が捻出されていたという。
特別防衛監察の結果、少なくとも13人の潜水艦乗組経験者が、ゲーム機、腕時計、ドライヤー、空気清浄機付き扇風機、キャディーバッグなど、総額約140万円相当の物品を受け取っていたことが確認された。
また、川崎重工に限らず、三菱重工業(MHI)、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、佐世保重工業(SSK)においても同様の不正が確認されており、艦艇修理契約において修理項目の水増しや未実施を通じて費用を捻出し、物品調達に充てる手法が常態化していた。
防衛省は今回、企業に対する指名停止などの厳罰措置は見送ったが、関係企業に対し文書による厳重注意とともに、実態調査および再発防止策の提出を求めた。また、海上自衛隊内部においては、正規の調達・補給手続きでは現場のニーズに迅速に対応できないという構造的課題が存在し、これが長年にわたる不適切な慣行の温床となっていたと指摘した。
処分の内訳としては、斎藤海幕長のほか、監督的立場にあった73人が訓戒処分、潜水艦艦長経験者17人が注意処分となった。物品を私的に受領していた13人については、自衛隊員倫理規程に違反する可能性があるとして、今後懲戒処分の対象とする方針。
防衛省は再発防止策として、調達制度の柔軟化や補給手続きの見直し、コンプライアンス教育の強化、さらに「一人発注・一人検収」といった不正を許す構造の是正を柱とする改革を進めるとしている。海上自衛隊全体の意識改革を急務とし、信頼回復に努める方針を示した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 舞台裏》日本と台湾の53年の禁忌を突破 林佳龍外交部長が東京都を訪問 | 関連記事をもっと読む )
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