アメリカとの対等関税交渉の期限が8月1日に迫る中、米ブルームバーグは関係者の話として、トランプ政権が台湾に「最良の関税率」を提示していると報じた。台湾の官員は、日本に適用された15%の税率が参考になるとの見方を示している。元立法委員の邱毅氏は30日、フェイスブックで米貿易交渉を分析し、トランプ氏は「唯一避けたい国は中国」であり、10月の訪中を控え、米中関係改善の意思がにじむと指摘した。
邱氏によると、日本との交渉では石破茂首相が表向きは強硬姿勢を取ったものの、実際には交渉力に乏しかった。そのためトランプ氏はホワイトハウスで直接交渉を行い、石破氏の選挙敗北後の立場の弱さを利用して迅速に合意を成立させたという。関税は表面上15%に下げられたが、アメリカへの投資額は5500億ドル(約88兆円)に達し、利益の大半は米国側に渡る。さらに、自動車や米、農産物市場の開放も求められ、日本にとっては大きな負担となった。
欧州連合(EU)との交渉では、トランプ氏はさらに強硬な戦術を採ったと邱氏は分析する。フォン・デア・ライエン欧州委員長の対米恐怖心を巧みに利用し、ゴルフ場での非公式交渉で欧州の譲歩を引き出した。結果として関税は15%に下げられたものの、6000億ドル(約97兆円)の対米投資と7500億ドル(約121兆円)の市場開放が求められ、日本以上の損失を被った。フォン・デア・ライエン氏は欧州各国から強い批判を浴びている。
中国との交渉は慎重に進められており、トランプ氏自身は前面に立たず、ムニューシン財務長官がスウェーデンのストックホルムで対応。中国は時間・場所・代表者の三要素で優位に立ち、最終的に合意には至らなかった。ただし、双方は「協力理念」に基づき交渉を継続することで一致し、貿易休戦期間は8月12日から11月12日まで延長された。8月初めには北京で交渉が予定され、基準の10%関税に加え、フェンタニル問題に関連した20%関税も議題となる。邱氏は、この追加関税は次回交渉で撤廃される可能性が高いと予測した。
邱氏は最後に、トランプ氏の戦略を「まず中国を脇に置き、他国を圧倒し、包囲し、孤立させ、最後に全力で中国を攻める」という段階的アプローチだと総括している。
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