防衛省は7月28日、宇宙空間での防衛体制を強化するため、初となる「宇宙領域防衛指針」を策定・公表した。中国やロシアが他国の人工衛星を無力化する「キラー衛星」の開発を進めている現状を踏まえ、宇宙を「新たな戦闘領域」と明確に位置づけ、日本の人工衛星を物理的に防護する体制の構築を本格化させる。
指針では、宇宙空間の利用が通信、気象観測、測位など国民生活や防衛活動に不可欠なインフラであると強調。今後、衛星通信の安定確保や人工衛星の防護能力の向上に重点的に取り組むとした。
また、通信妨害(ジャミング)に耐性を持つ衛星通信ネットワークの整備や、同盟国・同志国との衛星通信における相互運用性の向上も推進すると明記。あわせて、「衛星防護に関する検討を深化させる」との文言も盛り込まれた。
防衛省は2030年度ごろを目標に、敵のキラー衛星による脅威から自国の衛星を守る「ボディーガード衛星」の開発・実証に着手する方針で、民間技術の導入も視野に入れている。
この日、山口県の航空自衛隊・防府北基地を視察した中谷元防衛相は、記者団の取材に対し「急速に進化する民間宇宙技術をどう防衛に取り入れるかがカギになる。防衛省としても取り組みを加速していく」と語った。
さらに、今回の指針には、敵の射程圏外からの攻撃能力(スタンド・オフ防衛能力)強化に宇宙空間を活用していく方針も盛り込まれており、日本の宇宙防衛戦略が新たな段階へと進んだことを象徴する内容となっている。
編集:梅木奈実 (関連記事: トランプ氏が日本に不信感?専門家が警鐘「日米同盟に前例なき不安」 マッカーサーの遺産が揺らぐ今 | 関連記事をもっと読む )
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