特集》台湾・台北の徐巧芯氏、リコール危機を乗り越え蔣万安市長陣営を守る

2025-07-27 13:01
大規模なリコール投票は、国民党立法委員・徐巧芯氏(写真)にとって、従来の質疑応答の枠を超えた衝撃的な経験となった。(写真/顏麟宇撮影)
大規模なリコール投票は、国民党立法委員・徐巧芯氏(写真)にとって、従来の質疑応答の枠を超えた衝撃的な経験となった。(写真/顏麟宇撮影)
目次

台湾の民主政治の歴史のなかで初めて夏季に実施された大規模リコール投票が、灼熱の中で迎えた4日目に幕を閉じた。今回リコールの標的となった国民党の立法委員24人のうち、半数以上は就任から3年未満で、2024年初頭に地方議会や首長職から一気に中央政界に進出した「新任立法委員」だった。台北市南松山・信義選挙区では、この数年で最も物議を醸した国民党の徐巧芯氏が、ネットを通じて街頭にまで拡散した憎悪の渦をくぐり抜け、最終的にリコール危機を突破した。これは彼女にとって政治人生のなかで鮮烈な試練となった。

「私たちは勇士を孤立させてはいけない。松山信義には徐巧芯氏が必要だ。すべての反・与党勢力には徐巧芯氏が必要だ。蔣萬安市長も、そして中華民国も、彼女を必要としている!」
7月13日午前、徐氏が市議として初めて立った台北市議会の地下で「反リコール後援会」結成が発表された際、声援が途切れることはなかった。台北市長の蔣萬安氏が放ったひと言は、徐氏を思わず涙ぐませた。投票前の1週間、蔣氏は少なくとも4度にわたり徐氏の応援に立ち、国民党で最高位の現職公職である立法院長・韓国瑜氏も街頭を駆け巡って支援。陣営が極度の緊張に包まれていたことを物語った。

20250713-台北市長蔣万安(左)13日出席台北市立委徐巧芯(右)反罷免活動。(柯承惠攝)
リコール投票前、台北市長の蔣万安市長(右)は何度も徐巧芯氏を応援に駆けつけた。(写真/柯承惠撮影)

優勢区のはずが揺らぐ 国民党が危機感を露わに

徐氏は2024年、台北市松信選挙区で1万3614票差をつけ、民進党の許淑華氏を破った。前回2020年選挙では国民党の費鴻泰氏が6025票差で同じ相手を下したが、今回はその倍以上の差だった。それでも党の選挙対策陣は今回のリコール戦を、2024年に雲林県海線選挙区で約3000票差で辛勝した民進党の蘇治芬氏、そして同じくリコールの渦中にある国民党の丁学忠氏と並ぶ「危険度」だと評価していた。

松信選挙区は国民党が伝統的に優勢を誇るが、すでに「鉄票の倉庫」とは言えない。2008年には国民党候補が65%を得票したが、近年は45~55%にとどまる。一方、民進党は票を伸ばし、2008年には32%程度だったが、2024年には許氏が45%近い票を獲得した。

20241126-台北市議員許淑華於議場質詢。(蔡親傑攝)
党内では「徐巧芯氏は立委選で許淑華氏(写真)を大差で下したが、松信選区はもはやかつての「鉄票区」ではない」との声がある。(写真/蔡親傑撮影)

徐巧芯氏と費鴻泰氏の確執 「撕芯裂費」と呼ばれた深い溝

国民党の牙城が揺らぐなか、徐氏が党内調整を終えたかどうかには賛否がある。2023年、2022年の市議選でトップ当選を果たした徐氏は、その勢いで立法委員の予備選に挑戦。当時、連続当選を目指したベテランの費鴻泰氏と激しい対立を繰り広げ、握手会では互いを批判し合い、選挙終盤にはバス動員の違反疑惑も報じられた。この確執は現地で「撕芯裂費」──両者の名前をもじり、対立や亀裂を意味する言葉──と呼ばれ、深い溝を残した。

リコール戦前、徐氏は「費氏とは連絡を取り続けているし、会えば話も弾む」と語り、費氏もテレビで「反リコール」を表明し、徐氏を何度も支持する発言をしていた。国民党台北市党部の黄呂錦茹氏も「彼(費氏)は必要な時は必ず出てくる」と語っていた。しかし、7月13日の支援団体発足の場に費氏の姿はなく、その後も共に街頭に立つことはなかった。投票の5日前まで、2人が同じ場に立つ機会はついに訪れなかった。

最新ニュース
特集》台湾・桃園で民進党チーム苦戦 リコール失敗、鄭文燦氏の地盤取り戻せず
特集人物》「他人は私を狂人と笑う」――台湾・柯建銘氏、仕掛けた大規模リコールは大失敗
特集》台湾・新竹リコール戦 野党連携で逆風を跳ね返し、藍白陣営が議席を死守
「おいしい掛け算」で朝の新習慣──WHGホテルズ全国28施設で「ハイブリッド朝食フェア」開催
三重県が東京で観光PRイベント開催 相川七瀬さんが伊勢神宮の魅力を語る
松阪牛も伊勢茶も忍者体験も!東京で「三重の魅力」大集合
台湾新幹線ホームに現れた謎の目盛り?その正体と乗客への影響を専門家が解説
大規模リコールはなぜ失敗したのか 民進党の多正面作戦を医師が分析し浮かぶ10の敗因
独占》朱立倫が党首退任決意 リコール反対運動後の焦点は盧秀燕へ
特集》王鴻薇氏試練を乗り越え 頼清徳氏が意外な後押し
2025桃園駅グルメおすすめ》小吃激戦区で食べ歩き!通が選ぶ名店15軒
WHGホテルズが全国28ホテルで「印度カリー子と味わう!辛麗なるカレー祭り」開催へ
台湾リコール「25対0」で民進党大敗 中国研究者「頼清徳氏は決して諦めない、対中関係に光明は見えず」
台湾リコール否決、賴清德総統「これは勝ち負けではない」民主の力を強調
特集》台湾・花蓮市の「地元の王」傅崐萁氏 反対勢力まとまらずリコールを回避
台湾「7・26リコール投票」反対多数で否決へ 全選挙区で罷免不成立の見通し、結果一覧はこちら!
特集》台湾・台中市長 盧秀燕氏が支えた若手3人 リコールの荒波を乗り越え大統領選への布石に
特集》UMC創業者・曹興誠氏が率いた大規模リコール運動、失敗に終わる 民進党は利用するだけなのか?
特集》葉元之氏、まさかのリコール回避 「全党で一人を救う」も、なお漂う暗雲
フジロック2025初日、落日飛車×HYUKOHが共演 アジアをつなぐ音楽の熱狂
インタビュー》東京媽祖廟、創建の舞台裏に迫る 詹徳薫氏が語る日台交流への願い
戦争に発展する恐れも!タイ・カンボジア衝突が2日目に突入 「砲撃が止まらず」16人死亡、10万人避難
客家文化を体感!台湾・桃園「義勇季」、7月27日開幕 親子イベントや小旅行で「義勇」の心を身近に
BOOKOFF主催「Reclothes Cup」に612作品 若手クリエイターの夢舞台、10月福岡でファイナルへ
2025年台中駅グルメおすすめ》老舗激戦区の16軒 庶民派小吃と小点心が6元から
大阪アジアン映画祭2025、オープニング作品に『万博追跡』(2Kレストア版)を世界初上映へ
昼は縁日、夜はDJ!エキュート上野・日暮里で彩り豊かな夏を楽しむ「いろめく夏を あつめて夜」フェア開催
池袋で「アニメ東京ステーションの夏まつり」開催決定 子ども向けアニメ制作ワークショップも実施へ
大阪アジアン映画祭 オープニング作品にジュディ・オング主演『万博追跡』決定
金になるなら手段を選ばず!《FT》:米国禁令は全く無効、10億ドル相当のNVIDIAチップが中国に流入
トランプ氏、関税戦争は終息へ?「15%優遇税率」の条件とは──台湾財経評論家が指摘、今後は半導体・医薬品に焦点か
大谷翔平×鬼滅の刃!MLB公式コラボTシャツ、7月25日から受注開始
フジロック2025前夜祭が開幕!盆踊り・花火・深夜ライブに歓声沸く
独占》台湾の関税は20%未満に? 開放の裏に潜む代償
台湾最大の脅威は武力侵攻か?垂秀夫元大使「エネルギー問題は軍事危機より深刻」
舞台裏》米台が宇宙港協力を協議中 「台北~ヒューストン2時間半」の未来構想とは?
夏珍コラム:24時間後 私たちはまだ「台湾人」と呼べるのか
台米関税交渉》米専門家が警告:注目すべきは税率より台湾経済の「3つの時限爆弾」
「TSMCの米国投資は“タダ同然”」 台湾・郭正亮氏が頼政権の対米交渉を痛烈批判
評論:米国は台湾の「大リコール」をどう見るのか──沈黙するワシントンの真意
フン・セン上院議長、「中国逃亡」報道を否定 カンボジア・タイ国境衝突で反撃指揮を主張
ユニバーシアードで台湾代表が快挙 テコンドーで7メダル 中国関係者による祝電妨害・国旗撤去要求も
「私は聞いていない」発言に矛盾 トランプ氏、エプスタイン名簿巡り疑惑深まる 5月時点で司法長官が直接通知か
トランプ氏、「日本は5,500億ドル投資で関税引き下げ合意」 他国にも「資金で関税緩和」容認の意向
天気予報》台風7・8号が接近 藤原効果で台湾、週末にかけ大雨・強風のおそれ
前線で自由のために奮戦、大統領は後方で異分子を排除? ゼレンスキー氏が反汚職機関「敵に浸透」と指摘、キエフで戦後最大抗議