台湾で1年間にわたって展開された大規模なリコール運動の投票結果が、7月26日に明らかになった。結果は、与党・民進党が推進した中国国民党所属の立法委員24名すべてが罷免されず、「25対0」で民進党側の“完敗”に終わった。
この結果について、中国・北京聯合大学台湾研究院の副院長である李振広(り・しんこう)氏は風傳媒の取材に対し、「これは台湾の野党勢力にとっての勝利であり、頼清徳総統および民進党にとっては重大な挫折だ。全体として台湾の民主制度における権力のバランスに資する結果だと評価できる」と語った。
「頼清徳氏は引き下がらない」—体制外の動きも警戒すべきと指摘
リコールが全敗となったことで頼清徳氏の政治戦略に影響が出るとの見方について、李氏は「頼氏はこのまま引き下がるような人物ではない」と強調。今回のように制度内の手続きでは自身の目標が達成できない場合、「非正規な手段に訴える可能性も否定できず、警戒が必要だ」との見解を示した。
また、今後の中台関係については厳しい見方を示し、「頼氏の性格上、今回のリコール結果によって中国との関係改善に向かうとは考えにくい。むしろ姿勢を強硬化させるおそれがある」と述べ、民進党政権のもとでは「対中関係に明るい展望は期待できない」とした。
「民間主導で交流再開の兆しも」—野党・市民にとっての自信に
一方で、今回の投票結果が「野党や一般市民に勇気と自信を与えた」とも李氏は語る。つまり、民進党政権による対中交流の妨げを突破する可能性が広がり、「民間レベルでの交流活性化には前向きな影響がある」と分析した。
「今後はさらなる対台湾優遇政策も」—中国側の見通し
また、上海東亜研究院の研究員・包承柯(ほう・しょうか)氏も風傳媒の取材に応じ、「今回の台湾世論の示し方は、中台関係の安定に資するものであり、今後、中国側からの対台湾優遇策(惠台政策)がさらに打ち出される可能性がある」と述べた。
ただし、包氏は「頼清徳氏は頑固な性格であり、今回のリコール否決を自身の政権基盤に影響するとは見ていない。よって、現段階の対中強硬路線を変更することはないだろう」とも指摘。そのため中国政府は、今後も一方で「台湾住民への経済支援や交流を継続」しつつ、他方で「法制度や軍事手段も含めた対台湾独立勢力への圧力」を強化していく方針を継続するとの見通しを示した。 (関連記事: 台湾「7・26リコール投票」反対多数で否決へ 全選挙区で罷免不成立の見通し、結果一覧はこちら! | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp